研究課題/領域番号 |
22K14946
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部) |
研究代表者 |
大福 高史 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (10838395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 昆虫飼料 / アメリカミズアブ / マダイ / エドワジエラ症 / 抗菌物質 / 低魚粉飼料 / 魚類免疫 / 生理活性物質 |
研究開始時の研究の概要 |
水産養殖業では、供給が逼迫する魚粉に代わるタンパク質源の確保が喫緊の課題であり、新たなタンパク質源として昆虫、特にアメリカミズアブが期待されている。近年、目レベルで異なる昆虫種の給餌で、魚類の免疫応答の向上が報告されていることから、昆虫の摂食が魚類広汎に存在する免疫の強化を引き起こすことが期待されるが、そのメカニズムは不明である。そこで、主要な養殖魚種であるマダイの免疫応答の変化と、アメリカミズアブ由来の抗菌物質を解析することで、アメリカミズアブの摂食による魚病耐性の獲得メカニズムを明らかにする。本研究は、魚粉や薬剤への依存度を低減した次世代の水産養殖技術の基盤構築に資するものである。
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研究実績の概要 |
アメリカミズアブ等の昆虫摂食が様々な魚類に魚病耐性を付与することが見いだされつつある。本研究では、アメリカミズアブを摂食したマダイの免疫応答の変化と、アメリカミズアブ由来の抗菌物質を解析することで、エドワジエラ属細菌によって引き起こされる魚病への耐性獲得メカニズムを明らかにすることを目的としている。 2年目となる本年度は、前年度の予備実験を踏まえ課題1『マダイへのエドワジエラ属細菌の感染実験』と、課題2『マダイの腸内細菌叢の解明』に取り組んだ。 課題1については、アメリカミズアブを含む飼料(魚粉の25%、50%、100%代替の3種類)をマダイ稚魚に約40日間給餌した。魚粉飼料を給餌した対照区と比較して、マダイの成長や健康に悪影響は認められなかった。また、血清を分析したところ、リゾチーム等の免疫指標やスーパーオキシドジスムターゼ等の抗酸化指標に差は認められなかった。給餌試験の後、腹腔内注射法及び浸漬法でマダイにエドワジエラ属細菌を感染させ、経過観察を行ったが、本実験において生存率の向上等の魚病耐性は確認できなかった。 課題2については、給餌試験後にマダイの糞からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子のV3-V4領域をターゲットとしたアンプリコン解析を行い、マダイの腸内細菌叢を推定した。給餌飼料の種類にかかわらず、ファーミキューテス門に属する細菌が優占していた。その一方で、アメリカミズアブを給餌したマダイにおいて、バチルス属やパエニバチルス属等の細菌の存在比が上昇した。先行研究では、腸内のバチルス属やパエニバチルス属細菌によって魚類の免疫が向上することが報告されていることから、アメリカミズアブによって腸内細菌叢が変化し、魚類の魚病耐性に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、アメリカミズアブの給餌によって、エドワジエラ属細菌に対する魚病耐性が向上することは確認できなかったものの、腸内細菌叢の変化等を解明し、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカミズアブを給餌したマダイの生理状態の変化を詳細に解析する。これまでの研究では、血清分析で顕著な変化が認められなかったものの、腸内細菌叢の変動が認められたことから、より微細な生理状態の変化を解析するため、免疫のおいて重要な働きをする肝臓や腸管のトランスクリプトームを行い、免疫関連遺伝子の転写動態解析等を実施する。 さらに、腸内細菌叢の変動には、アメリカミズアブが有する抗菌物質が寄与している可能性が考えられることから、液体クロマトグラフィー等により、精製・物質同定に向けた実験を進める。
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