研究課題/領域番号 |
22K14949
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田口 瑞姫 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 助教 (20880462)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マナマコ / 棘皮動物 / 微小環境 / 幹細胞ニッチ / 体腔細胞 / 凝集塊 / 棘皮動物マナマコ / 組織修復・再生 / 免疫細胞 / 腸排出 |
研究開始時の研究の概要 |
棘皮動物マナマコの免疫細胞である体腔細胞は、組織損傷時に凝集塊を形成して創傷を被覆する。この凝集塊は哺乳類の組織幹細胞ニッチと類似する特徴を示すことから、マナマコ免疫細胞の凝集塊が組織修復・再生を促す微小環境として機能しているのではないかという仮説を立てた。本研究では、腸を被覆した凝集塊における各種体腔細胞の分布および凝集塊特異的な遺伝子の発現パターンから損傷組織を被覆した凝集塊が組織再生を促すニッチとして機能しうる特性を備えているかを検証する。
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研究実績の概要 |
棘皮動物マナマコの体腔細胞は凝集能に優れており、何らかの刺激を受けるとすみやかに凝集して巨大な凝集塊を形成する。申請者の先行研究により、凝集塊は腸排出したマナマコの体内に残存した腸切断面を被覆すること、また、凝集塊の内部構造は、組織幹細胞の維持・分化を制御する幹細胞微小環境(ニッチ)の構造と非常に類似した網目状のネットワーク構造を示すことが明らかになった。本研究は、損傷組織を被覆した凝集塊における各種体腔細胞の分布および凝集塊特異的な遺伝子発現パターンを調べ、凝集塊が組織幹細胞ニッチ様の特徴を示すのかを明らかにすることを目的としている。 研究室にはマナマコを年間通して維持できる環境が整っていないため、今年度は、まずマナマコの飼育環境を整備した。新たに水槽設備(飼育水槽、ポンプ、濾過槽、クーラー等)を購入し、マナマコを常に維持できる環境を用意した。 次に、体腔細胞の凝集塊および幹細胞様の特徴を示す未分化様細胞のトランスクリプトーム解析を行うため、細胞群の単離を試みた。まず、マナマコ体腔液をシリンジで採取し、細胞凝集を防ぐためEDTAを添加した。体腔液を目視したところ、多くの寄生虫が見つかり、巨大な凝集塊も観察された。顕微鏡下で体腔細胞数を計測した結果、通常と比較して非常に多くの体腔細胞が含まれていることがわかった。寄生虫の存在により免疫応答が惹起され、体腔細胞数の増加および凝集塊形成が促進されたことが予想される。正常時の遺伝子発現パターンが得られないと判断し、トランスクリプトーム解析用のサンプリングは中断した。マナマコの体内に寄生する生物についての報告は少なく、寄生虫に対する生体防御機構はよくわかっていない。今回の寄生虫感染個体は宿主免疫応答を調べる良いサンプルになりうるため、体腔細胞および各組織は4%PFA固定し、4℃で保存した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
購入したマナマコの体内に寄生虫が確認されたため、トランスクリプトーム解析用のサンプル調整に難航していることによる。同時に仕入れた個体の多くに寄生虫が確認されており、飼育水槽のリセット、新たにマナマコを購入し直す必要がある。寄生虫対策として、既知の寄生虫駆除薬を飼育海水に添加することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
体腔細胞の凝集塊および幹細胞様の特徴を示す未分化様細胞のトランスクリプトーム解析を行うため、新たにマナマコを購入し、細胞群の単離およびRNA抽出を行う。RNAシーケンスは外注し、マッピング以降の解析は申請者が行う予定である。RNA-seqデータ取得後は、1)体腔細胞および凝集塊形成体腔細胞、2)未分化様細胞および凝集塊含有の未分化様細胞、を比較する2つの解析を行う。凝集塊または各細胞群特異的に発現変動する遺伝子を抽出し、機能アノテーションを探索する。またタンパク質-タンパク質間相互作用ネットワークを探索し、ネットワークのハブタンパク質を抽出する。以上の解析から凝集塊および未分化様細胞を特徴づける候補分子を得る予定である。 候補分子が得られたら、その結果を元に体腔細胞のマーカー分子を探索する。凝集塊を用いた解析では、サイトカインを中心とした免疫関連因子や細胞外マトリクスや細胞骨格、細胞接着因子など、未分化様細胞を用いた解析では細胞分化に関連する転写因子や細胞の多能性維持に関わる分子、またエピジェネティクスに関連する遺伝子等をターゲットとする予定である。
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