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ワムシの基質特異的な脂肪酸生合成機構の解明:オーダーメイドな海産仔魚用餌料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K14951
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分40040:水圏生命科学関連
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

松井 英明  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (80909226)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
キーワードシオミズツボワムシ / 栄養強化 / 長鎖多価不飽和脂肪酸 / 脂肪酸生合成酵素 / 微細藻類 / ワムシ / 長鎖不飽和脂肪酸
研究開始時の研究の概要

水産養殖向け人工飼料は栄養成分が徹底的に管理されており、特に海産魚の必須脂肪酸であるEPAとDHAについて、魚種ごとに最適なバランスで配合されている。しかし、仔魚期専用の活き餌「ワムシ」は、そのEPA・DHA組成を任意にデザインできる系統や培養方法が全く確立されていない。一方、これまでの研究により、ワムシは自身の生合成酵素の働きによって体内の脂肪酸組成をアレンジしているのではないかと推察された。本研究では、体内のEPA・DHAのバランスを魚種ごとに特化させた仔魚用餌料の生産を目指し、ワムシの基質特異的な脂肪酸合成機構を解明する。

研究実績の概要

本研究は、シオミズツボワムシ(以下ワムシ)の体内でのエイコサペンタエン酸(EPA)またはドコサヘキサエン酸(DHA)の量的調節に関わる生合成機構の解明を目指す。2022年度において、ワムシはEPAを含む餌を摂取すると、その鎖長の延長された産物と考えられるドコサヘキサエン酸(DPA)を新規に有することがわかった。そこで、2023年度では、EPA供給時におけるワムシ体内のDPAの挙動について詳細に評価することを中心に研究を遂行した。
EPAを特異的に多く有する微細藻ナンノクロロプシスを餌料種として、その給餌時間を長時間に設定し(<60時間)、EPAを供給し続けた際のワムシ体内の脂肪酸の挙動を解析した。その結果、DPAは給餌後まもなく検出された。さらに、その検出量は、EPAの蓄積量が飽和点を迎える24時間目以降も増加し続けていることが判明した。そのため、EPAを基質とするワムシのDPAの生合成系を抑制できれば、餌由来のEPAを効率的にワムシ体内に蓄積できるという、本研究遂行において重要な可能性が見いだされた。
つぎに、ワムシへ給餌するナンノクロロプシスの量(制限量・通常量・過剰量)およびその給餌中の培養水温(15℃、20℃、25℃)を変えた際のDPAの検出量を評価した。DPAの検出量は興味深いことに、給餌量の違いでは変化しないものの、低水温(15℃)よりも高水温(20℃、25℃)の際に顕著に高かった。これらの結果は、ワムシのDPA生合成系を制御する際に、その基質の外部供給(ハード面)よりも体内での代謝活性自体(ソフト面)の方が重要な視点であることが強く支持された。
本課題の関連業績として、論文掲載1報、学会発表2件を行った。また、本課題を含む自身の研究が評価され、日本水産学会より令和5年度水産学奨励賞を受賞した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ワムシが餌から多量のEPAまたはDHAを供給されたときに発現させる長鎖多価不飽和脂肪酸の生合成機構の解明に向けて、現在までにin vivo評価系での実験を中心に進めている。EPA含有餌料を摂餌したワムシの体内にはDPAが新規に検出され、さらにその量はEPA含量とともに増え続けていたことから、余剰のEPAを基質とした鎖長延長機構が働いている可能性がある。これは、ワムシのEPA強化法の高度化につながる重大な基盤情報となり得る。また、ワムシの培養実験を充実させたことで、これまでみえなかったワムシのDPA生合成の条件が浮き彫りにでき、今後おこなう予定の当該生合成関連遺伝子の解析につなげやすくなった。
ワムシのDPA生合成に関連する候補遺伝子として、複数種の脂肪酸鎖長延長酵素の機能解析が必要である。2024年度におこなう予定だった上記のワムシの培養実験を2023年度に行ったため、本遺伝子解析が遅れている。当初の計画より実験の遂行する順番が逆転しているが、そのおかげで、遺伝子の解析対象、およびその解析のためのワムシの実験条件が定まった。以上より、今後は遺伝子解析にスムーズに移行できると考え、「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

これまでの研究により調査を続けているワムシのDPAの生合成系について、その主要な因子を探る。EPAをDPAに鎖長延長する酵素遺伝子(最大10種)を対象に、まずはその発現量の違いを基に候補を絞り込む。その際は、前年度までの研究により判明した条件(餌料種、ナンノクロロプシス;水温、高温)にワムシを晒し、ワムシに内在するDPAの生合成機構を強制的に発現させる。その発現量を基に絞られた候補遺伝子に対して、酵母発現系による脂肪酸代謝機能の解析を行い、EPAをDPAに変換する主要遺伝子を特定する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Assessment of microalga Tisochrysis lutea in the deceleration growth phase as a n-3 HUFA source for Brachionus plicatilis rotifers in Japanese flounder larviculture2024

    • 著者名/発表者名
      Matsui Hideaki、Kono Satoshi、Ishibashi Kakeru、Ishikawa Manabu、Kotani Tomonari
    • 雑誌名

      Aquaculture International

      巻: - 号: 5 ページ: 6665-6687

    • DOI

      10.1007/s10499-024-01483-7

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 微細藻類を起点とした仔魚への効果的なω3脂肪酸供給システムの構築に関する研究2024

    • 著者名/発表者名
      松井英明
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] シオミズツボワムシBrachionus plicatilisの運動性とDHA蓄積性の関係2023

    • 著者名/発表者名
      松井英明、北原海音
    • 学会等名
      令和5年度日本水産学会秋季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] シゾキトリウム給餌による油脂強化の時間がワムシの遊泳力に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      松井英明、北原海音
    • 学会等名
      令和5年度日本水産学会春季大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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