研究課題
若手研究
本研究の目的は、就農支援施策および支援主体を対象に、生産品目や経営組織の違いに着目した事例調査をもとに「次世代型就農支援モデル」の条件を提示することである。地域農業の課題である「担い手問題」は深刻度を増している。その人材確保と育成は、農家子弟だけではなく、農外からの新規参入等に支援施策として展開されているが、高い成果が得られているとは言い難い。既存研究においても各種就農支援施策の調査研究が行われているが、生産品目の違いや経営組織の違いに着目した検討は現状ではほとんどみられていない。そこで本研究では、多様な支援制度の比較分析を通じて「次世代型新規就農支援」の基礎となるモデルの構築を試みる。
今年度は、日本全国の市町村が実施する新規就農支援施策について、全国新規就農相談センターが作成した『令和3年度自治体等による新規就農者支援情報』をもとに、その実態分析を行った。分析にあたっては、支援情報を数値化し、同データを単純集計するとともに、新規就農支援の地域的特徴を明らかにするために、コレスポンデンス分析を採用した。その結果、下記の3つの状況が分かってきた。第1に「就農相談」は東海の市町村と「農地取得支援」は関東甲信の市町村との関連が強いことが分かった。第2に「研修制度」「営農費用助成」「住宅取得支援」は近畿、九州、中四国、沖縄との関連が強く表れていることが判明した。第3に北海道は「その他」項目との関連性が強い。新規就農支援が早期から行われてきたために多様な事業展開が見られること、また具体的な事業の内容を見ると、大型特殊、けん引、フォークリフトの免許費用助成など特殊な地域農業の事情を反映したものであることが分かった。全国市町村の新規就農支援の内容を分析した結果、地域的差異が生じている実態を明らかにできた。以上の内容は、2023年7月8日の第22回日本地域政策学会大会(東京大会)で、 片岡美喜・高津英俊「市町村における就農支援政策-支援対象および支援内容に着目して-」として発表している。以前に同じ日本地域政策学会で発表した内容とともに、現在も国-都道府県-市町村を一体的に分析した論文の作成を始めている。
3: やや遅れている
個人的事由により、期待したよりも進展が遅くなった。
今後の研究の推進方策については畜産・果樹に限定して、就農支援制度の事例調査を行い、現在の就農支援制度の実態解明を実施する。その際、各実践事例の支援事業立案者及び実践を行う経営者に対する調査を実施し、就農支援モデルに関する設計志向や将来ビジョンをどのように考えているかを調査する。今年度は2022年度から進めてきた果樹分野の第三者継承支援の取り組みについて更なる知見を蓄積していく。成樹化までに年月を要する果樹分野で就農トレーニングと第三者経営継承をミックスして実施する事例からその特徴と経営初期の課題特性を解明する。具体的には就農支援実績の豊富な事例として長野県の取り組みや、就農支援の革新的事例として和歌山県の取り組みについて現地調査を実施する。また畜産分野としては、キャトルステーションで和牛生産の担い手を育成する岐阜県の取り組みについて調査を実施して、従来行ってきた酪農分野にとどまらない知見を獲得していく。以上のような綿密な現地調査の積み重ねにより、既往の知見をリニューアルするとともに、次世代就農支援モデル構築のための基礎を検討する。
すべて 2023 2022
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中酪情報
巻: 3月号 ページ: 2-3
畜産の情報
巻: 11月号 ページ: 65-71
秋田県立大学学生自主研究成果
巻: 令和3年度 ページ: 1-4