研究課題/領域番号 |
22K14963
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41020:農業社会構造関連
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研究機関 | 宇都宮大学 (2023) 一般財団法人農政調査委員会 (2022) |
研究代表者 |
小川 真如 宇都宮大学, 農学部, 助教 (60815554)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 米生産調整 / 農業再生協議会 / 情報処理手法 / 水田活用の直接支払交付金 / 戦略作物助成 / 産地交付金 / 水田収益力強化ビジョン / 5年水張りルール / 水田農業政策 / 水田経営 / 転作補助金 / 新規需要米 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の米生産調整は、産地・生産者による主体的な米生産調整へと変化し、各都道府県、各地域の農業者団体や行政などが構成する農業再生協議会が推進している。主食用米、業務用米、新規需要米の需給見通しなどを整理し、主食用米生産の目安の決定や需給マッチングを支援する農業再生協議会のあり方は、円滑な米生産調整の実現のみならず、個別の農業経営体の制度的環境や、米産地の維持・発展、水田利用再編など地域営農に強く影響を与えるが、その実態は解明されていない。そこで、米生産調整の推進における情報処理手法について統計分析・実態分析から地域間比較を行い、農業再生協議会による主体的な情報処理の意義と限界、解決策を解明する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、①前年度行った農業再生協議会に対する全国悉皆調査の整理、②農業再生協議会に対する追加の全国悉皆調査の実施、を中心に行いながら、現調査及び学会・研究会等での研究結果の報告を行った。 理論研究では、水田収益力強化ビジョンのような理念の策定に関して、農業経済学における研究蓄積が薄いことを指摘し、柏祐賢著『農学原論』を取り上げて、理論的な問題点を指摘した。ここでいう課題とは、柏祐賢著『農学原論』の理論的な課題のみならず、日本農学は、既存の研究を学術的な批判をもって乗り越えるのではなく、批判ではなく無視する形で乗り越えてきたのではないかという問題提起であった。 こうした実態は、理念法である食料・農業・農村基本法の改正をめぐる議論に象徴して確認することもできた。 このほか、東北地方のA市にて経営所得安定対策等の実施状況の詳細な調査分析や、市内農家の悉皆調査を行い、制度上の課題が営農に与える影響について分析した。この分析結果については2024年度に追加調査を行う予定である。 そのほかの研究実績を含めて、本研究の前半(2022~2023年度)に行った研究より、統計分析・理論分析が進んだ。これにより、本研究の後半(2024~2025年度)で集中して行う実態分析への準備が整った。 なお、研究成果は、学会報告や招待講演、学術論文のほか、学術書として『農業再生協議会の現状』(刊行済み)、『農業再生協議会論序説』(刊行決定済み)として発表した。また、研究代表が主催する研究会「農業再生協議会に関する研究会」を新たに設置し、調査研究の成果を一般向けに公開するとともに、農業再生協議会に関する情報交換の場を運営してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水田収益力強化ビジョンのような理念の策定、あるいは、米生産調整にかかる目安の配分、「水田活用の直接支払交付金」の制度内容などについては、従来、関心がある者は、同制度を担当する実務者などに限られていた。 ところが、食料・農業・農村基本法改正の議論が進んだことや、地域計画の策定、「5年水張りルール」など「水田活用の直接支払交付金」の制度変更の周知が進んだことなどにより、2023年は日増しに社会的関心が高まっている状況を感じ取れる状況にあったため、調査が行いやすい環境となり、調査研究が計画以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で記したように、社会情勢の変化に伴い、調査研究が進めやすくなり、調査対象としては従来設定が困難であった調査対象にも調査が可能な状況となりつつある。 たとえば、日本を代表する主要な農業関連団体のうち複数団体は、米生産調整や農業再生協議会、「5年水張りルール」などについて、自分たちは関係ないとして2021年度時点では調査協力を断られた経緯がある。しかし、2022年度以降の情勢変化を踏まえて、関心が高まっており、調査協力が得られる事例が増えてきた。このような現象は、団体にとって水田農業政策が「他人事」から「自分事」へと変化した過程であるとも考えられ、そこには意識変化に伴う情報処理があったと推察される。
本研究の後半(2024~2025年度)で集中して行う実態分析では、社会情勢の変化に伴う情報の伝達・意識の変化にも留意し、農業再生協議会の多様性に着目しながら、米生産調整の推進における情報処理手法の地域比較をさらに進めていく。
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