研究課題/領域番号 |
22K14971
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 良奈 九州大学, 農学研究院, 助教 (80817263)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 青果物 / X線CT / シミュレーション / ガス拡散 / 物性値分布 / 非破壊計測 |
研究開始時の研究の概要 |
分解能の異なる2種類のX線CT装置を用いて、青果物の細胞組織および果実全体スケールで連続スライス画像を取得し、部位ごと、貯蔵期間ごとの構造特性を明らかにするとともに、3次元立体構造モデルを再構築し、実形状に基づく数値シミュレーションを行うことで、実験的に計測することが難しい微小領域での局所的な物性値を推算し、これをノーマル分解能X線CT装置の解析部に組み込むことより、諸物性値分布の3次元リアルタイム可視化を可能とする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、品質劣化の過程で“青果物内部で何が起こっているのか?”を細胞組織レベルで解析・可視化するとともに、青果物内部の諸物性値分布を非破壊的に直接計測可能とすることである。分解能の異なる2つのX線CT装置を用い、微細スケールCT画像より諸物性値の分布や経時変化を明らかにするとともに、これらの諸物性値とCT画像情報を関連付け、個体レベルで画像情報に反映する。すなわち、ノーマル分解能X線CT画像から空隙率や水分、熱伝導率、ガス拡散係数といった諸物性値を個体レベルで、リアルタイムに同時推定できるようにする。そのためのマルチスケール解析フレームワーク作りを行っている。 本研究は、(1)マルチスケールX線CT観察画像の取得および3次元微細構造モデル再構築、(2)微細構造モデルシミュレーションによる局所物性値の推算とCT値との関連付け、(3)青果物内部の物性値分布の可視化の3つの中課題で構成される。これらの課題のうち、(1)において、カキ細胞組織の連続CT画像に対して細胞部分と空隙部分を区別し、個々の細胞を分離、楕円近似とエッジ検出により細胞の形状を検出、細胞壁に厚みを与え、ジオメトリ化した。その後(2)において、解析条件を与え、ソルバー(COMSOL Multiphysics 5.3)を用いて細胞壁・細胞膜を考慮したガス移動解析を行った。細胞組織は不均質な構造を持つため、計算領域を均質と仮定した材料についても解析を行い、不均質材料で得た計算結果と比較し、微小領域平均の物性値として求め、空隙率とガス拡散係数との関係を定量した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)マルチスケールX線CT観察画像の取得および3次元微細構造モデル再構築、(2)微細構造モデルシミュレーションによる局所物性値の推算とCT値との関連付け、(3)青果物内部の物性値分布の可視化の3つの中課題で構成される。 これらの課題の内、(1)マルチスケールX線CT観察画像の取得および3次元微細構造モデル再構築、(2)微細構造モデルシミュレーションによる局所物性値の推算とCT値との関連付けを行った。(1)では、カキ細胞組織の連続CT画像に対して細胞部分と空隙部分を区別する二値化処理を行った。細胞部分にはwatershed処理を行い、個々の細胞に分離した。細胞の形を楕円形に近づけるため個々の細胞に対して楕円近似を行い、エッジ検出により細胞の形状を検出、細胞壁に厚みを与え、ジオメトリ化した。その後、解析条件を与え、ソルバー(COMSOL Multiphysics 5.3)を用いてガス移動解析を行った。細胞壁・細胞膜の影響を考慮したガス移動解析を行い、酸素の拡散に与える影響を明らかにした。さらに、対象領域の大きさがガス拡散に与える影響を確認するため、ジオメトリの大きさや空隙率を変えてガス移動解析を行った。細胞組織は不均質な構造を持つため、計算領域を均質と仮定した材料についても解析を行い、不均質材料で得た計算結果と比較し、微小領域平均の物性値として求め、空隙率などの構造的特徴量と各物性値との関係を明らかにするとともに、CT値と空隙率、空隙率とガス拡散係数との関係を定量した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は引き続き中課題(1)、(2)に取り組む。これまでの解析では、青果物の細胞壁や細胞膜の考慮に加え、細胞部分も無限に酸素が流れると仮定してガス移動解析を行ってきた。しかし、実際に細胞は水と似た物性であるため酸素の溶存量に限界があり、酸素拡散係数は現在推算されているものよりも小さいと考えられる。よって、細胞部分に流入する酸素濃度に制限を設け、ガス移動解析を行う。 2024年度は引き続き(1)および(2)の研究を遂行しつつ、(3)青果物内部の物性値分布の可視化について研究を開始する。青果物内部の物性値分布の可視化では、異なる分解能を持つX線CT装置で撮影したCT画像が相互利用可能である必要がある。これを保障するためには、各々の装置で計測されたCT値の両者間でのキャリブレーションが不可欠である。CT値間のキャリブレーションには数種の標準物質を用いて両者を比較するとともに、ターゲットから放射されるX 線スペクトルを近似的に推定する計算式 (Tucker et al.、Med. Phys.、1991など) を元に特性パラメータをまとめるとともに、X線スペクトル解析によってX線源の経時劣化による強度特性変化にも耐え得る演算法を提案する。これをノーマル分解能X線CT装置の解析部に組み込むことより、諸物性値分布の3次元リアルタイム可視化を可能とする。
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