研究課題/領域番号 |
22K14983
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 (2023) 広島大学 (2022) |
研究代表者 |
津上 優作 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (10911563)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 乳腺 / タイトジャンクション / 黄色ブドウ球菌 / 短鎖脂肪酸 / 乳房炎 / 抗菌因子 / 乳腺上皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
乳房炎原因菌に対する乳腺の感染防御機構としてタイトジャンクションバリアと抗菌因子産生が存在する。短鎖脂肪酸は腸管の抗菌因子産生などを増強するが、乳腺での効果は不明である。申請者はウシ乳腺上皮細胞を用い、頂端部細胞膜と側底部細胞膜にそれぞれ特異的な膜タンパク質が局在した生体同様の乳分泌モデルの確立に成功した。そこで、本研究では新たな乳房炎対策に資する学術的知見を得ることを目的とし、どの短鎖脂肪酸が何にどのように作用し、乳腺の感染防御機構を調節するかを明らかにする。本提案は申請者の確立した乳分泌モデルにより可能となり、その成果は抗菌剤に依存しない新たな乳房炎対策の開発に向けた基盤となる。
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研究実績の概要 |
乳腺には内部へ侵入した病原体に対する感染防御機構として、細胞間タイトジャンクション(TJ)形成による物理的バリアと抗菌因子産生による化学的バリアが存在する。当該年度では、短鎖脂肪酸の刺激方向がTJバリア機能に及ぼす影響を調べた。 泌乳期トカラヤギ乳房から単離した乳腺上皮細胞を泌乳ホルモン存在下で培養後、インサート上層もしくは下層の培地に5 mM酢酸ナトリウムもしくは酪酸ナトリウムを添加した。TJバリア機能は経上皮電気抵抗値やFITC透過性の測定により評価し、TJ構成タンパク質の発現量と局在をウェスタンブロッティングと免疫染色により調べた。 酪酸処理群では、下層添加により経上皮電気抵抗値が低下し、FITC透過性が増加した。また、上層添加でも、FITC透過性が増加していた。さらに、酪酸下層添加はクローディン-3量およびクローディン-4量の顕著な増加が確認された。一方で、酢酸処理群では、添加方向に関わらず、TJへの顕著な影響は確認されなかった。TJタンパク質の局在は、コントロール群では泌乳期乳腺で主要な役割を果たすクローディン-3がTJ領域マーカーであるオクルディンと共局在している様子が観察された。一方、酪酸下層添加ではクローディン-3とオクルディンの局在が断続的になっている部分が存在していた。さらに、短鎖脂肪酸輸送体の阻害剤で前処理した乳腺上皮細胞では、酪酸下層添加によるTJバリア機能への影響が抑制されてた。 また、病原体侵入の抵抗性に及ぼす影響を検証するため、黄色ブドウ球菌を用いたウシ乳腺上皮細胞への付着・侵入モデルの作製を試みた。農研機構で所有するウシ乳腺上皮細胞を泌乳ホルモン存在下で培養し、乳房炎由来株 (BM1006株)を添加した。侵入モデルではリゾスタフィンにより溶菌処理を行った。結果として、添加菌数に伴い付着・侵入した菌数が増加する付着・侵入モデルを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤギ乳腺上皮細胞において、酪酸の刺激方向によりTJバリア機能への影響が異なることおよび短鎖脂肪酸輸送体が関与していることが明らかになったため。また、ウシ乳腺上皮細胞を用いて黄色ブドウ球菌や大腸菌の付着・侵入モデルを確立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は血中および乳中の短鎖脂肪酸組成と乳腺TJバリア機能および乳中抗菌因子濃度の相関関係を検証するとともに研究をまとめる予定である。
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