研究課題/領域番号 |
22K14992
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
伊藤 晴倫 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (70827526)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / 多分化能 / アルデヒド脱水素酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
間葉系幹細胞の多分化能を維持することは重要であるが、その維持機構は明らかになっていない。本研究はこの課題を、「アルデヒド脱水素酵素 (ALDH) 活性が高いMSCは高い多分化能を有する」という知見をもとに解決する。具体的には、ALDHアイソザイムのいずれが多分化能の維持に寄与するかを同定し、ALDH活性の差がMSCの代謝プロファイルに及ぼす影響を明らかにし、多分化能維持機構の一端を解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、間葉系幹細胞 (Mesenchymal stem cell: MSC) の多分化能維持機構にアルデヒド脱水素酵素 (Aldehyde dehydrogenase: ALDH) 活性が与える影響を解明することを目的としている。本年度は、ALDH活性阻害薬として報告されているDyclonineをマウスMSC由来細胞株であるKUM10とC3H10T1/2に処置し、ALDH活性測定と骨分化能について検討した。いずれの細胞株においてもDyclonine処置濃度依存的にALDH活性の低下が認められたほか、Dyclonine処置による骨分化能の低下が認められた。一方で、KUM10とC3H10T1/2はいずれも継代を重ねるとALDH活性が失われていく傾向が認められた。しかしながら同一の条件下におけるDyclonineによる骨分化能の抑制効果には影響は認められなかった。そこで、複数のイヌ乳腺腫瘍由来細胞株に対してDyclonineを処置し、ALDH活性を含めた性状の変化に与える影響について解析した。ALDH活性はがん幹細胞を含めた幹細胞マーカーとして知られており、研究代表者らによる過去の研究などにより、イヌの腫瘍由来細胞株においてもALDH活性が認められることに加え、ALDH活性陽性細胞はがん幹細胞の形質を有していることが示されている。結果として、イヌ乳腺腫瘍由来細胞株にDyclonineの処置を行うと、ALDH活性の顕著な抑制が認められた。一方で、ALDH活性抑制レベルでのDyclonine濃度では細胞増殖率や抗がん剤、酸化ストレス耐性などに対する影響は認められなかった。しかしながら、コロニー形成能の顕著な低下が認められたことから、ALDH活性はイヌ乳腺腫瘍由来細胞株における細胞接着に重要な役割を有している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス由来MSC細胞株におけるALDH活性は培養条件に依存しており、一定ではない可能性が示唆された。研究代表者らによる結果では、同一条件におけるマウス脂肪由来初代培養MSCにおいては少なくとも4継代まではALDH活性を維持していたが、長期継代におけるALDH活性の推移に関しては検討しておらず、株化細胞における培養条件の変化に伴うALDH活性の低下機構については今後の検討課題である。一方で、Dyclonineが細胞株の性状に与える影響について検討するために、研究代表者らなどによってALDH活性が認められることが明らかになっているイヌ乳腺腫瘍由来細胞株を用いて解析を行なった。イヌ腫瘍由来細胞株においてDyclonineによってALDH活性が抑制されるという結果は初めてであり、新たな知見を得ることができた。一方で、MSCの骨分化誘導時におけるALDH活性の変動を明らかにするためにRT-PCRによってALDHの発現を検討する予定であったが、本研究室で所有している機器に故障が認められたことで、進行が滞っている。
|
今後の研究の推進方策 |
ALDH活性がMSCの接着に与える影響について解析する。すでに入手済みである複数のALDH活性阻害薬について比較検討し、細胞接着に最も影響しているALDHアイソザイムを絞り込む予定である。さらに、ALDH活性が骨分化能へ与える影響についても検討予定である。現在用いているALDH活性測定系はフローサイトメトリー法を用いた測定系であり、骨分化誘導時のALDH活性の変化の測定は困難である。そこで、阻害薬によりALDHアイソザイムを絞り込むことができた場合には、RT-PCR法やウエスタンブロッティング法による検討を行う予定である。
|