研究課題/領域番号 |
22K14997
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
川田 逸人 北里大学, 医学部, 助教 (80899295)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | フタトゲチマダニ / 唾液腺 / 抗炎症性唾液物質 / 病原体伝播幇助 / AlphaFold2 / タンパク質-タンパク質ドッキングシミュレーション / マダニ / RNAi / マダニ吸血生理 / マダニ媒介感染症 / 感染免疫 / SAT |
研究開始時の研究の概要 |
吸血性節足動物であるマダニは様々な感染症を媒介するベクターである。近年、マダニが吸血時に分泌する抗炎症性唾液物質に病原体の伝播を促進する働きがある可能性が報告され、マダニ媒介感染症予防薬の標的として注目されているが、その分子メカニズムは明らかになっていない。申請者は先行研究にて、フタトゲチマダニの唾液腺にて発現している遺伝子HlSG-g22をノックダウンするとマダニの吸血が阻害され、飽血に至らないことを明らかにした。そこで、本研究ではHlSG-g22の機能を明らかにすることで、マダニ抗炎症性唾液物質が有する病原体伝播促進機能ついて評価考察を行う。
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研究実績の概要 |
吸血を介して様々な病原体を媒介するマダニが吸血時に分泌する唾液には生化学的多様性に富んだ生理活性物質、すなわち唾液物質が含まれており、一部の抗炎症性物質がマダニ媒介感染症(tick-borne disease: TBD)の病原体媒介効率を促進させているという知見が報告され[Manning and Cantaert, 2019]、TBD予防医学における新たな創薬標的として注目されている。先行研究では当研究室が有する単為生殖系フタトゲチマダニ岡山株の唾液腺にて発現しているmRNAのEST databaseを対象とした抗炎症性物質探索を実施しており、当該研究において多種マダニの抗炎症性物質を検索配列としたBLASTn解析においてHlSG-g22様遺伝子を同定し、逆遺伝学的解析の結果、1)当該遺伝子をノックダウン(knockdown: KD)するとフタトゲチマダニの吸血が進行しないこと、2)当該遺伝子KDマダニ吸血部位では血管内皮細胞のVE-cadherinが濃染させること、3)対照群と比較して実験群では吸血部位に集積したT細胞数が優位に多いことを明らかにしている。加えて当該遺伝子ORFアミノ酸配列を用いてSWISS-MODELを用いた立体構造類似性検索を実施したところ多種マダニより報告されたケモカイン結合タンパク質であるEvasin-3と部分的に高次構造上確度の高い分子モデルが予測された。そこでAlphaFold2にて予測された当該遺伝子の立体構造に対し、Evasin-3にて結合性が報告されているCXCL1に対するタンパク質ータンパク質ドッキングシミュレーションを実施した。するとCXCL1の受容体結合部位に対して結合するドッキングポーズをトップヒットとした。今後、予測された結果をもとにin vitroにおける解析を実施することで当該遺伝子が有するケモカイン結合性を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は段階的に研究が遂行され、HLSG-g22様分子のマダニ刺咬部位での役割が明かになりつつある。特に当該遺伝子と高次構造上の類似性を有するタンパク質が有するケモカインに対して計算化学的手法を用いて分子特性を解析したところ同様の機能を有する可能性が示唆された。今後計算化学的手法を用いて当該遺伝子の更なる分子特性を解析するとともにin vitroにおける解析を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
HlSG-g22様分子が有するであろう抗炎症性作用を評価するために下記の研究を予定している。なお、進行状況に応じて前後する可能性もある。 1)計算化学的手法を用いたHlSG-g22様分子の機能予測:先述のAlphaFold2にて予測された立体構造情報を用いて分子特性を解析するとともに、計算された当該遺伝子とCXCL1間の分子間相互作用を明らかにすることで両分子間の結合特性を評価したい。また、ヒトおよびマウスにおける各種ケモカインの立体構造情報を取得し、立体構造情報データベースを構築することで多種ケモカインに対する結合性も評価したい。 2)培養細胞を用いたケモカイン阻害作用の評価:先述の血管内皮細胞におけるVE-cadherin発現抑制調節およびT細胞遊走抑制機能について、培養細胞を用いた分子生物学的機序の解析を行う。具体的にはHlSG-g22様分子の組み換えタンパク質を作製し、血管内皮細胞およびT細胞の培養細胞に対し、ケモカイン単独刺激群・HlSG-g22様分子共刺激群を作製し、VE-cadherin発現量もしくはT細胞の走化性を評価し、比較解析を実施する予定である。
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