研究課題
若手研究
トキソプラズマ症は妊娠期の感染により流・死産や先天異常などを引き起こすが、その病態機序は解明されていない。コレステロールは胎児の脳発生およびトキソプラズマの増殖に不可欠である。本研究では、「トキソプラズマ由来の伝播分子が胎盤のコレステロール移行機能を調節し、それにより胎児の脳発生に影響を及ぼす」という仮説をもとに、マウスの垂直感染モデルや絨毛細胞の培養系を用い、母体と胎仔における血清リポ蛋白の変化、絨毛細胞における脂質代謝関連分子の発現解析、遺伝子編集技術を用いた伝播分子の同定を行い、トキソプラズマによる脂質代謝を調節する機構を明らかにする。また、病理学的に胎仔の脳発生への影響を明らかにする。
トキソプラズマ症は妊娠期の感染により流・死産や先天的異常などの多様な病態を引き起こすが、その病態メカニズムは解明されていない。コレステロールは胎児の脳発生にとって不可欠であるが、トキソプラズマの増殖においても重要である。本研究は、トキソプラズマ由来の伝播分子が胎盤のコレステロール移行機能を調節し、それにより胎児の脳発生に影響を及ぼすという仮説を立てた、先天性トキソプラズマ症や異常産の病態メカニズムを解明することを目的とする。昨年度は感染モデルの母子の血清リポ蛋白が変化することを明らかにした。羊水中の細胞外小胞は、胎盤や胎児肺から放出され母子連絡を担うことから、胎児発育不全や妊娠高血糖などの妊娠期の異常の早期診断マーカーとして近年注目されている。このことから、本年度は昨年度認められた血清リポ蛋白の変化が羊水中の細胞外小胞によって母から胎児へ伝達されている可能性を検討するため、胎盤の組織学的検討と羊水中細胞外小胞のトランスクリプトーム解析を行った。胎盤の組織検索では迷路層の血管内皮における脂肪滴沈着が感染によって有意に増加し、一部では酸化コレステロールの沈着も認められた。当研究班の先の研究において、胎盤の血管内皮におけるカスパーぜ3陽性像を認めたことを考慮すると、脂肪滴沈着およびそれの酸化がアポトーシスに関与する可能性が示唆された。さらに羊水中の細胞外小胞のトランスクリプトーム解析で発現変動遺伝子を検索したところ、インターフェロン依存的な抗トキソプラズマ免疫応答に関連する分子や、酸化脂質の代謝に関連する分子の発現が増加することが明らかになった。
3: やや遅れている
2022年度末に出産し、2023年度7月中旬まで育休を取得していた。また、保育園入園後2,3ヶ月は子が体調を崩し、仕事を休まざるを得なかった。一方で、2023年度後半は精力的に研究を実施し、昨年度の遅れは少し解消された。
次年度は、羊水中細胞外小胞のトランスクリプトーム解析で明らかになった分子群が、胎盤の病変形成にどのように関与しているかを免疫組織学的に検討する。さらに、原虫由来分子の免疫染色および293T細胞を用いたスクリーニングを行い、宿主の資質代謝を変動させる原虫由来分子の同定を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
Vaccine
巻: 42(9) 号: 9 ページ: 2299-2309
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