研究課題/領域番号 |
22K15026
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小林 良祐 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (30802855)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 子宮内膜がん / マウスモデル / エピゲノム / エンハンサー / ホメオスタシス |
研究開始時の研究の概要 |
子宮内膜がん(子宮体がん)は本邦における婦人科領域悪性腫瘍の罹患数第一位を占める。我々はこれまでにヒストンメチル化酵素KMT2遺伝子変異がヒト子宮内膜がん症例の約3割で認められること、さらに子宮特異的Kmt2欠損マウスモデルによりKmt2欠損が子宮内膜がん発症を加速させることを発見した。エンハンサー障害による子宮内膜の恒常性維持機構の破綻がKMT2変異がんの発症原因ではないかと考え、本研究ではマウス子宮内膜でのエンハンサーによる遺伝子発現制御の実態を明らかにすると共に、KMT2変異による“がん抑制エンハンサー”の障害が発がんの原因となることの直接証明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではエンハンサー障害による子宮内膜の恒常性維持機構の破綻がKMT2変異がんの発症機序ではないか?という仮説のもと、CRISPR-Cas9やCUT&Tagなどの最新技術を駆使することにより、マウス子宮内膜でのエンハンサーによる遺伝子発現制御の実態を生体レベルで明らかにすることを目指す。 我々は昨年度までにPten/Kmt2ダブル欠損マウスを新たに樹立し、このマウスが生後1ヶ月で子宮内膜がんを発症し、生後3ヶ月までに死亡することを見出した。コントロールマウス、Pten欠損マウス、Pten/Kmt2ダブル欠損マウスの子宮から単離した上皮細胞(およびがん細胞)でRNA-seqやCUT&Tagを実施し、本年度はその詳細な解析を行った。Pten欠損と比較し、Pten/Kmt2ダブル欠損子宮上皮細胞では細胞遊走や炎症応答に関する遺伝子が発現上昇していることがわかった。一方、DNA修復や細胞老化に関わる遺伝子発現は減少していた。CUT&Tagによって、エンハンサーマーカーであるH3K4me1ピークを解析したところ、Pten/Kmt2ダブル欠損ではむしろピーク数が増加しているという予想外の結果を得た。Kmt2ファミリ―遺伝子には複数のホモログが存在しているため、ノックアウトしたKmt2遺伝子と異なるメンバーが代償作用した結果、H3K4me1ピークの増加が生じたのではないかと推測している。 また本研究を通じて、子宮特異的Kmt2欠損マウスは着床不全により不妊の表現型を呈することも明らかとなった。このことは子宮内膜における特定のエンハンサー制御が、子宮組織の恒常性維持(がん抑制)だけでなく、子宮機能にも必要不可欠であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エンハンサーの指標となるH3K4me1ピーク数は、Kmt2欠損子宮でむしろ上昇しており、これは当初予想していた結果と異なるものだったが、他のメチル化酵素による代償作用が働いているという新たな病理機序が示唆された。 加えて、子宮ではKMT2が胚着床にも重要であることが明らかとなったことから、当初想定していなかった研究展開が可能となり、令和5年度の先進ゲノム支援による解析支援に採択されるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
他のメチル化酵素による代償的遺伝子発現上昇がKmt2欠損マウスにおける子宮がん悪性化病理機序ではないかという仮説のもと、遺伝子発現上昇とエンハンサー獲得の相関をRNA-seqとCUT&Tagの統合解析より明らかにする。加えて、Pten/Kmt2欠損マウスで発現上昇が認められた遺伝子をノックアウトしたモデルを作出し、Pten/Kmt2欠損マウスの腫瘍を低減できるか検討する。 また、先進ゲノム支援による解析支援に採択され、正常マウスおよびKmt2欠損マウスの着床期子宮内膜におけるエンハンサー活性をCUT&Tagにて解析中であり、これによりマウス胚着床に必須のエンハンサー活性が明らかにできると期待される。
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