研究課題/領域番号 |
22K15032
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2023) 国立研究開発法人理化学研究所 (2022) |
研究代表者 |
田邉 彰 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (30749023)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | エピゲノム / NGS解析 / ゲノム編集マウス / 発生致死 / 遺伝子治療 / 遺伝子機能回復 / 代替遺伝子活性化 / エンハンサーノックイン / ゲノム編集 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子機能欠損の遺伝子治療には変異遺伝子の機能回復が一般に必要と考えられているが、大規模変異の修復は技術的に困難である。申請者はこれまでに、目的遺伝子周辺の非コード領域にエンハンサーをノックイン(KI)することで、人工的に異所的な発現を起こすことに成功した。コード領域を対象とする遺伝子修復は修復の成功率が低くミスセンス変異の危険性があるが、非コード領域を対象とするエンハンサーKIの手法はKIの成功率が高く変異に対してロバストなためより安全に目的組織で発現を誘導できる。本研究計画では、この新手法を用いて代替遺伝子活性化による機能回復法の基礎技術を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究は、「エンハンサーノックイン(KI)を用いて代替遺伝子活性化による機能回復法の基礎技術の確立」を目的として、3年間の研究計画で進めている。
初年度は技術的な検討として、予備実験で進めていたDlx5第一咽頭弓エンハンサーのKIによる頭顔面形態異常のレスキュー実験を行い良好な結果が得られた。 2年度目は当初から計画していた代替遺伝子のBmal2とUtrnを対象に実験を行うため、遺伝子周辺のエピゲノム環境を解析した。その結果、これらの遺伝子はトポロジカルドメインが不明瞭でエンハンサーKIに適さないことが判明した。そこで別の代替遺伝子について文献調査を行い、新たに35個の代替遺伝子のエピゲノム環境を検討した。 妊娠高血圧腎症は胎盤機能不全に関連して胎児発育不全を引き起こす周産期疾患の一つであり、その発症には遺伝的要因が関係していると考えられている。過去の研究から妊娠高血圧腎症の患者の胎盤ではDlx3遺伝子発現の低下と関連があり、Dlx3ノックアウトマウスの胎盤は妊娠高血圧腎症と共通した表現型を示す。ヒト胎盤ではDLX3のパラログ遺伝子であるDLX5もまた胎盤発達に関連しており、DLX5は転写因子としてDLX3の機能を代替できる可能性がある。そこで本研究ではマウスDlx3ノックアウトマウスの胎盤機能をレスキューするため、Dlx5遺伝子にエンハンサーKIを行う。ATAC-seq、ChIP-seqなどのエピゲノムデータ解析からDlx3遺伝子の胎盤エンハンサー候補を選出し、レポーターアッセイにより2つの胎盤エンハンサーを特定した。この胎盤エンハンサーをゲノム編集により欠損させた結果、それぞれ単独の欠損では胎盤Dlx3発現がやや減少し、両方を欠損させると胎盤Dlx3発現がほぼ完全に失われた。従って、これら2つのエンハンサーが胎盤Dlx3発現に重要な転写調節因子であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は技術的検討を優先し、本年度に対象とする遺伝子を変更する必要が生じたため、進捗状況はやや遅れている。現在、KIするエンハンサーが決まりパラログ活性化による治療の実証実験を行う目途が立っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特定した胎盤エンハンサーを用いてレスキュー実験を行う。以前に我々が解析したDlx5遺伝子のトポロジカルドメイン(隅山&田邉, Dev Growth Differ . 2020)を考慮し、マウス受精卵で胎盤エンハンサーをDlx5発現調節領域の近傍にKIする。胎盤でのDlx5発現誘導をAccu-cis法で解析し、RNA-seqによりその他遺伝子の発現状態を網羅的に解析する。さらに、エンハンサーKI マウスにおいてTriple CRISPRによりDlx3遺伝子をノックアウトし、胎盤機能のレスキューを検討する。
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