研究課題/領域番号 |
22K15042
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
石橋 幸大 京都産業大学, 生命科学部, 研究員 (30880968)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 初期発生 / 酸化ストレス / RNA / 胚発生 |
研究開始時の研究の概要 |
活性酸素によるRNAの酸化損傷は、転写から翻訳までの遺伝子発現制御を介して、正常な生体機能の実現に密接に関与することが示唆されている。一方で、多細胞生物における酸化損傷RNAの動態、すなわちいつ・どのようなRNAに酸化損傷が生じて、それが個体形成の実現にどのように貢献するかは未知である。本研究では、ゼブラフィッシュの初期発生をモデルに、酸化損傷が生じるRNAを発生段階ごとに網羅的に同定する。また、それらRNAの翻訳や遺伝子発現制御を含めた細胞の応答を評価する。これにより、酸化損傷RNAの動態が介入する発生メカニズムを時空間的に明らかにし、細胞・生体の恒常性を担保するしくみに迫る。
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研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの初期発生過程において、活性酸素の一種である過酸化水素の細胞内におけるレベルと分布は発生段階や細胞群ごとにダイナミックに変化しており、これによって生じるRNAの酸化とトランスクリプトームの変化が密接にリンクしていると考えられる。酸化損傷の生じたRNAを網羅的に同定するために、ゼブラフィッシュ胚からRNAを抽出、リボソームRNAを除去したうえで、抗8-oxoG抗体を用いたRNA免疫沈降によって酸化損傷RNAを精製した。このRNAをライブラリ調整に用いて、次世代シークエンスによってリードデータを取得した。得られたシークエンスデータを解析した結果、様々なmRNAが同定され、mRNAの酸化損傷が広範にわたって生じていることが明らかとなった。一方で、酸化損傷が生じているmRNAについて、トランスクリプトーム中における量と酸化損傷の程度は必ずしも相関していないことを見出した。このことから、mRNAの酸化損傷が細胞種によって異なっていること、また酸化損傷が特異的なmRNAに生じていることが示唆される。 次世代シークエンスによって同定した内在のmRNAについて、いくつかについてはレポーターを用いた評価をおこなった。タグを付加したレポーターmRNAにゼブラフィッシュ胚に注入した。このmRNAに酸化損傷を導入した場合、完全長のタンパク質の合成量が減少したことから、酸化損傷によってそのmRNAの翻訳が抑制されることが示唆された。このとき、翻訳開始因子eIF2alphaのリン酸化やMAPキナーゼp38のリン酸化が亢進することから、種々のストレス応答が惹起されることが判明した。加えて、酸化損傷を導入したmRNAは、酸化損傷のないmRNAに比べてゼブラフィッシュ胚における安定性が低いことがわかった。このことから、酸化損傷が生じたmRNAは細胞の品質管理機構によって分解されていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の次世代シークエンスによる解析に遅れが生じていたため、当初の予定と比べて遅れが生じている。しかし今年度は、シークエンスデータの解析によって酸化損傷が生じているmRNAを同定したことに加え、それら内在のmRNAのレポーターを用いた評価まで着手しており、時期の遅れはありながらも研究計画の内容については遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シークエンスによって同定した内在のmRNAを用いたレポーターによる評価で、酸化損傷による翻訳の低下やストレス応答の誘導が観察された。リボソームの翻訳伸長の停滞によって、ストレス応答が誘導されるという近年の知見を踏まえて、酸化損傷mRNAによって誘導されるストレス応答が、その翻訳に関連したものかどうかを調べていく。具体的には、ゼブラフィッシュ胚にレポーターmRNAを注入する際、そのmRNAの翻訳を特異的に抑制するモルフォリノアンチセンスオリゴと共に加えることで、翻訳依存的かどうかを解析する。また、酸化損傷によってmRNAの品質管理がはたらくことが示唆されたため、品質管理機構を欠損したゼブラフィッシュ変異体を用いて、酸化損傷とmRNAの分解について解析する。 次世代シークエンスによって同定したmRNAについて、細胞の分化に必須なmRNA(転写因子をコードするmRNAなど)について、その酸化損傷の有無によって生じる発生プロセスへの変化を解析していく。酸化損傷の原因である過酸化水素の生成を抑えたときに、mRNAの酸化損傷が抑えられるか、またその時の発生への影響を観察する。
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