研究課題/領域番号 |
22K15049
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
鎌田 祥太郎 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (10823932)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | PPAR / X線結晶構造解析 / NASH |
研究開始時の研究の概要 |
PPARはA/D/Gの3サブタイプから成り、それぞれが代謝全般を多彩に統括制御する。PPAR dual/panアゴニストが非アルコール性脂肪性肝疾患治療薬として開発され各国で治験中である。本研究ではPPAR dual/panアゴニストをはじめとする多数リガンドとの複合体構造を明らかにすることを目指す。さらに、受容体活性化に関わるCoactivatorとの会合能、転写活性化能、熱安定性変化の3指標を各PPARサブタイプ-各種PPARリガンドの評価に用い、動物実験における代謝性疾患治療効果の検証と併せ包括的に考察して、治療効果を最大限に高めつつ副作用を低減させたPPAR標的新薬の開発に貢献する。
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研究実績の概要 |
様々なPPARアゴニストとPPARα/δ/γとの結晶構造取得を目指した。PPARδ-LBD/PPARγ-LBDタンパク質の発現と精製はPPARα-LBDとほぼ同じように行い、高純度に精製タンパク質を得ることができた。まず、Fibrate系薬のうち、Bezafibrate, Fenofibric acid, PemafibrateのPPAR3サブタイプとの活性測定・結晶構造取得を行った。うちPPARαとの複合体は既に成功し、報告している。それぞれのPPAR3サブタイプへの活性測定をPPARα/δ/γ転写活性化能、Coactivator結合能、熱安定性測定でそれぞれ行った結果、BezafibrateはPPAR panアゴニスト, Fenofibric acidはα/γ dualアゴニスト, Pemafibrateは非常に強いPPARα活性を持つが高濃度ではδ/γも活性化した。この結果を踏まえて複合体結晶を作成したところ、BezafibrateとPemafibtateはPPAR3サブタイプとの複合体、Fenofibric acidはPPARα/γ との複合体を得た。これらの結果を纏め、論文発表した。 また、NASH治験薬のLanifibranor, Elafibranor, Seladelparについても活性測定と結晶作成を行っている。Lanifibranor はNASHに対する第3相試験中だが、Elafibranor, Seladelpar はNASHに対する試験は中止となっている。LanifibranorとSeladelparはPPAR3サブタイプとの複合体、ElafibranorはPPARaのみ複合体構造を得ている。 今後は結晶構造取得に加えて、NASHの治療効果にも注目して実験を行っていく予定であり、現在はNASHモデルマウスを作成し、NASHの評価方法の確立を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
様々なPPARアゴニストとPPARα/δ/γとの結晶構造取得は順調に進行し、Fibrate系薬のBezafibrate, Fenofibric acid, Pemafibrateと、NASH治験薬のLanifibranor, Elafibranor, SeladelparのPPAR3サブタイプとの複合体構造のうち多くを得ることができた。Lanifibranor とPPARγとの複合体構造は既に報告があったが、その構造とは異なる場所にLanifibranorが結合していた。ElafibranorはPPARδ/γを活性化するにも関わらず複合体構造が得られていないため今後検討する。また、PPARγアゴニストであるPioglitazoneやRosiglitazoneはPPARα/δ活性がなく、複合体構造を得られていない。また、活性測定ではPPAR pan アゴニストLanifibranorは、確かにPPAR pan アゴニストであったが、測定法によっては強めのPPARγ活性があった。SeladelparはPPARδアゴニストであるが、高濃度ではPPARα/γ活性が見られた。また、ElafibranorはPPARα/δ dual アゴニストであるが、PPARγ活性もあり、実際にはPPAR pan アゴニストであった。 このように様々なPPARアゴニストとPPARα/δ/γとの結晶構造取得・3種活性測定は順調にデータを得て、まとめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
まずLanifibranor, Elafibranor, SeladelparのPPAR3サブタイプへの活性と構造を論文に纏める。これまでに得られていない複合体構造は何らかの工夫が必要であり、タンパク質の脱脂・refoldingをして得られるかなどを確認する。 また、PPARアゴニストにより選択的な遺伝子誘導があるかについて注目しており、Coactivator結合能測定ではPGC1αと SRC1を使用しているが、Coactivatorは複数あることから他のCoactivatorも用いて活性を測定する。また、ヒト由来の細胞であるHepG2などを用いてCoactivatorの発現量を確認する。 マウス個体での遺伝子発現変化とNASH治療効果の比較のため、野生型C57BL/6JマウスにNASH誘導餌を投与し、さらにPPARアゴニストを投与して、サブタイプの組み合わせと結合部位について、どれが最も治療効果があるのか確認する。またその時の遺伝子発現の違いを考察する。現在はNASHモデルマウスを作成し、NASHの評価方法の確立を行なっている。これまでに得られたPPAR活性の結果から、PPAR panアゴニストであるBezafibrateに特に注目しており、他のFibrate系薬のFenofibrateなどと比較を行うことを検討している。ヒトとマウスではPPAR活性が異なることが知られており、ヒト肝細胞を用いて同様の結果が得られるか確認を行う必要があると考えている。
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