研究課題/領域番号 |
22K15066
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小山 亮祐 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (70880681)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 糖鎖 / 代謝 / 出芽酵母 / マンノシダーゼ / 遊離糖鎖 / Endo-O-Mannosidase / Budding yeast / O-Glycans / Glycan metabolism |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、これまで活性のみが報告されている出芽酵母のタンパク質上 O-マンノース型(OM)糖鎖切断酵素 “エンド-O-マンノシダーゼ(EOMase)” の遺伝子および酵素同定を行い、 本酵素が関与する O-結合型糖鎖の代謝機構の一端を明らかとする。本研究によって出芽酵母における糖鎖代謝の分子機構の一端やその生物学的意義の解明が進み、また関連する遺伝病治療法や糖鎖精製ツールの開発などへの応用が期待される。
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研究実績の概要 |
真核生物のO-結合型糖鎖は、タンパク質のSer/Thr残基を修飾する糖鎖であり、様々な生体内プロセスに深く関わっていることが知られている。近年、その生合成経路については解明されつつあるが、その代謝系についてはほとんど知られていない。その中でもヒトから酵母までその存在が知られているO-マンノース型(OM)糖鎖の代謝機構の知見は全ての生物種で皆無である。それに対し当研究室では、出芽酵母においてタンパク質に付加されたOM糖鎖を切断・遊離させる新規の“エンド-O-マンノシダーゼ(EOMase)”様の酵素活性を発見した。そこで、本研究ではこのEOMase遺伝子および酵素の同定を行い、それらの機能解析を行うことで、O-結合型糖鎖代謝機構の解明を目的とした。本目的に対し、初めに「実験1.EOMase活性検出アッセイ方法の確立」と「実験2.遺伝子破壊株の遊離糖鎖解析によるEOMase遺伝子探索」の二つを試みている。 「実験1」では、EOMaseの酵素活を直接的に観察するために、異なる構造を持つ三種類の基質を合成していただいた。本基質を活用し、HPLCでの活性検出の条件、および酵母細胞ライセートを用いた酵素活性検出の条件の検討を行った。その結果、HPLCの条件検討は完了したため、酵素活性検出の条件検討を行っている。 「実験2」では、EOMase遺伝子の破壊によって遊離糖鎖が生産されないことが予想されたことから、昨年度までで非必須遺伝子約5000遺伝子中1041遺伝子の破壊株で解析を行った。その結果、EOMase遺伝子の同定には至っていないが、野生株に比べて極端に遊離OM糖鎖生成量が少ない二つの株を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「実験1.EOMase活性検出アッセイ方法の確立」では、当初計画していたHPLCでの検出条件検討は完了したが、酵素活性検出に難航している。具体的には、Buffer、pH、タンパク質安定化剤などを組み合わせた酵素活性検出用溶液条件の決定を継続して試みている。また、配列や活性などが類似すると考えられる酵素(エンドマンノシダーゼやO-グルカナーゼ、O-マンノース転移酵素など)について、報告されているin vitroでの活性検出条件もライセート作成およびインキュベート時に適応し、検討を行っている。 「実験2.遺伝子破壊株の遊離糖鎖解析によるEOMase遺伝子探索」では、目的遺伝子の同定に至っていないが、その破壊株の遊離OM糖鎖生成量が少ない二つの遺伝子を発見できたことから、今後は、これまでに発見された過剰に遊離OM糖鎖を生成するcyc8破壊株との掛け合わせや関連する代謝経路遺伝子の解析を行っていく。また、cyc8破壊株は、EOMase活性化による糖タンパク質からの過剰な糖鎖脱離の結果,細胞壁ストレスが起こり,最終的に生育阻害という表現型を示すことから、今回見出した遺伝子の表現型解析も詳細に行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
「実験1.EOMase活性検出アッセイ方法の確立」では、今後とも継続してEOMaseの活性検出条件検討を行っていく。活性が検出でき次第、出芽酵母の遺伝子欠損株ライブラリ等を活用し、酵素活性ベースのアッセイ法を確立し、EOMase遺伝子探索を試みる予定である。また、現在酵素源として用いている出芽酵母以外にも、分裂酵母、カビ類、昆虫、植物、哺乳動物などO-マンノース糖鎖を持つ生物細胞のライセートも作成し、活性のスクリーニングを行う。活性を検出できた場合、タンパク質自体を抽出・精製し、その配列解析を元に出芽酵母のEOMase遺伝子の同定を試みる。 「実験2.遺伝子破壊株の遊離糖鎖解析によるEOMase遺伝子探索」では、発見した遊離OM糖鎖生成量が少ない二種の遺伝子破壊株に着目した解析に加え、以前から候補としていた必須遺伝子、および機能がオーバーラップしている遺伝(冗長な遺伝子)の解析も試みる。冗長な遺伝子に関しては候補を選出し、その多重破壊株の作成およびプラスミドでの過剰発現、必須遺伝子については利用可能な遺伝子発現 低下株、及び機能低下株(DAmP株および温度感受性コレクション株)を用いて、これらについて同条件での培養における遊離OM糖鎖の生成量を測定し、EOMase候補遺伝子の候補遺伝子探索を行う。 これらの実験によって、本研究の目的であるEOMase遺伝子および酵素の同定とそれらの機能解析を行い、O-結合型糖鎖代謝機構の解明を目指していく。
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