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ミトコンドリアDNA母性遺伝分子メカニズムの包括的解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K15097
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分44010:細胞生物学関連
研究機関群馬大学

研究代表者

佐々木 妙子  群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (90933507)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードミトコンドリア / 母性遺伝 / マイトファジー
研究開始時の研究の概要

ミトコンドリアは、生体内でエネルギーを産生する重要な細胞小器官であり、独自のDNAであるミトコンドリアDNA(mtDNA)をもつ。核DNAとは異なり、mtDNAは片親のみから受け継がれることが知られている。このような特殊な遺伝様式はほとんどの真核生物でみられるにも関わらず、その分子メカニズムはいまだに未解明である。最近になり母性遺伝の仕組みとして、受精後の父性ミトコンドリアがオートファジーによって選択的に分解されることが示された。本研究では、なぜ父性ミトコンドリアだけが周囲の母性オルガネラと区別され、選択的にオートファジーに導かれるのか、その分子メカニズムの解明を目指す。

研究実績の概要

ほとんどの真核生物でミトコンドリアDNA (mtDNA) は片親遺伝、主に母性遺伝する。近年、受精後の父性ミトコンドリア(父性mt)と内部のmtDNAのオートファジーによる分解が線虫C. elegansで初めて示された。本研究では、父性mtだけが選択的にオートファジーに導かれる分子メカニズムを、イメージング・プロテオミクス・遺伝学的手法を駆使して解明を目指す。
これまでの解析から、父性mtの分解にはALLO-1とIKKE-1が必須の因子であることが分かっていた。しかし、ALLO-1が父性mtに局在化するメカニズムやIKKE-1の役割は分かっていなかった。昨年度までに、ライブイメージングにより、ALLO-1が受精直後に父性mtを認識し局在化することを明らかにしてきた。また、ALLO-1による認識後、IKKE-1を介してオートファジーの開始に必要な因子、およびALLO-1が父性mtへさらに集積していくことが、オートファジーの駆動に必須であることも明らかにした。本年度は、超解像顕微鏡FV3000-OSRを用いることで、ikke-1遺伝子欠損胚においてオートファゴソーム形成が途中で停止してしまうことなどを見出し、これらの知見をまとめて国際誌(Nature Communications)に発表した。IKKE-1は、ヒトなど哺乳類において機能不全に陥った不良ミトコンドリアをオートファジーで除去する際に働く、TBK1/IKKεのホモログであることから、本発見は、母性遺伝だけでなく、ヒトにおいて疾患や老化の原因ともなる不良ミトコンドリアの除去の仕組みの解明にもつながることが期待される。
また本年度は、父性mt選択的オートファジーに関与する因子の探索、および精子ミトコンドリアの組成を解析するためのツールの開発もおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、①オートファジーに先立って起こる父性mtの変化、②ALLO-1が父性mtを認識するメカニズム、③その他の因子の役割の同定と解明を通じて、父性mt特異的オートファジーの分子メカニズムを解明することを目的としている。それぞれにおける進捗状況は以下の通りである。
①オートファジーに先立って起こる変化を解明するために、精子からミトコンドリアを単離し、他組織のものと組成を比較しようとしている。単離方法を検討した結果、精子、および受精卵から、ミトコンドリアを高純度で分画することに成功した。
②昨年度までに、計画に従ってGFP-ALLO-1を発現した線虫の受精卵を単離し、PFAで架橋したのち、免疫沈降法を用いてALLO-1結合因子を網羅的に同定した。しかし、ALLO-1の局在化に大きく影響を与える因子は見いだせなかった。そこで本年度は、ビオチンリガーゼであるTurboIDを用いて近接依存性標識法によるALLO-1相互作用因子の探索をおこなった。その結果、前回の解析では得られなかった因子を多数同定することに成功した。
③本年度は、ALLO-1の相互作用因子であるIKKE-1の機能を詳細に解析した。昨年度までにikke-1欠損胚において、ALLO-1やオートファジーの初期を駆動する因子の局在化が非常に弱くなることから、IKKE-1がこれらの因子の集積を促進していることが分かっていた。本年度は、ikke-1欠損胚における父性mt選択的オートファジーの後半における影響を調べた。その結果、ikke-1欠損胚では、オートファゴソームの形成が途中で停止することが、超解像顕微鏡などを用いた解析から明らかになった。したがって、IKKE-1によるオートファジー因子の集積は、オートファゴソームの伸長に必須であると考えられる。これらの知見をまとめ、論文を国際誌に発表した。

今後の研究の推進方策

本年度は、主に受精後に父性mtおよびその周辺に起こる変化について解析、および報告したため、最終年度は、①オートファジーに先立って起こる父性mtの変化、②ALLO-1が父性mtを認識するメカニズムに重点を置いて解析を進める。
①オートファジーに先立って起こる父性mtの変化:本年度は、精子および受精卵から、ミトコンドリアを単離することに成功した。今後は、膜電位依存的にミトコンドリアを赤く染色することが可能な色素TMREを用いて、単離ミトコンドリアの状態が良好かどうかを調べる。その後、ラージスケールでミトコンドリアを単離し、比較プロテオミクス解析をおこなう予定である。また、イメージングによっても精子mtの変化を捉えるために、蛍光色素を用いたミトコンドリア内部構造の可視化を引き続き進める予定である。
②ALLO-1が父性mtを認識するメカニズム:本年度は、あらたにTuuboIDを用いた近接依存性標識法により、ALLO-1に近接した因子を網羅的に同定した。これらの候補因子の中には、これまでに解析していない因子が多数含まれているため、今後RNAiにより網羅的スクリーニングをおこない、ALLO-1の局在化に影響を与える因子を探索する予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] MARC-3, a membrane-associated ubiquitin ligase, is required for fast polyspermy block in Caenorhabditis elegans2024

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Ichiro、Sugiura Kenta、Sasaki Taeko、Matsuda Noriyuki、Sato Miyuki、Sato Ken
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 号: 1 ページ: 792-792

    • DOI

      10.1038/s41467-024-44928-6

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ALLO-1- and IKKE-1-dependent positive feedback mechanism promotes the initiation of paternal mitochondrial autophagy2024

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Taeko、Kushida Yasuharu、Norizuki Takuya、Kosako Hidetaka、Sato Ken、Sato Miyuki
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 号: 1 ページ: 1460-1460

    • DOI

      10.1038/s41467-024-45863-2

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Regulation of paternal mitochondria autophagy via ALLO-1 and IKKE-1 in Caenorhabditis elegans2023

    • 著者名/発表者名
      Taeko Sasaki, Yasuharu Kushida, Hidetaka Kosako, Ken Sato, Miyuki Sato
    • 学会等名
      第18回生命医科学研究所ネットワーク国際シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] The autophagy adaptor ALLO-1 and IKKE-1 kinase regulate selective elimination of paternal organelles in C. elegans2022

    • 著者名/発表者名
      Taeko Sasaki, Yasuharu Kushida, Hidetaka Kosako, Ken Sato, Miyuki Sato
    • 学会等名
      10th International Symposium on Autophagy
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] The mechanisms of selective elimination of paternal organelles regulated by the autophagy adopter ALLO-1 and IKKE-1 kinase in Caenorhabditis elegans2022

    • 著者名/発表者名
      Taeko Sasaki, Yasuharu Kushida, Hidetaka Kosako, Ken Sato, Miyuki Sato
    • 学会等名
      第8回 生体調節研究所 内分泌代謝シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] The underlying mechanism of selective elimination of paternal mitochondria in C. elegans2022

    • 著者名/発表者名
      Taeko Sasaki, Yasuharu Kushida, Hidetaka Kosako, Ken Sato, Miyuki Sato
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [備考] 【プレスリリース】受精卵に入った父親由来のミトコンドリアが速やかに見分けられ、除去される仕組みを発見

    • URL

      https://www.gunma-u.ac.jp/information/173145

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 【プレスリリース】多精子受精拒否の仕組みの一端を解明

    • URL

      https://www.gunma-u.ac.jp/information/171590

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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