研究課題
若手研究
ヒト胎盤特異的なインプリント遺伝子は、アレル特異的な発現様式を示す。最近申請者らは、ヒト胚性幹(ES)細胞が栄養膜幹(TS)細胞へ分化転換した細胞モデルを用い、ヒト胎盤細胞への運命決定に、胎盤特異的なインプリント遺伝子C19MCの発現が必須であることを明らかにした。また、妊娠高血圧症候群(HDP)の胎盤細胞は、C19MCの異常発現を示すことが知られている。本研究では、ヒト胎盤発生に重要な機能をもつC19MCの発現制御領域に着目し、胎盤特異的なインプリンティングを制御する転写因子を探索することを目的とする。
本年度は、ヒト胚性幹(ES)細胞が栄養膜幹(TS)細胞へ分化転換する細胞モデルを用いて、ヒト胎盤への運命決定には、胎盤特異的なインプリント遺伝子C19MCの発現が必須であることを報告した(Kobayashi et al. Nature Communications. 2022)。さらに、TS細胞におけるC19MCの発現制御に関わる転写因子を明らかにするため、CRISPR-Cas9 gRNAライブラリーを利用した遺伝子ノックアウト(KO)スクリーニングシステムの構築を行った。具体的には、900程度の転写因子に対してgRNAライブラリーを作成し、KOスクリーニング後に、次世代シーケンサーによりTS細胞の表現型に影響のある候補遺伝子を選定した。その結果、幹細胞性の維持に必要な転写因子群が同定できたことから、実験系の条件検討を完了した段階にある。これまで、所属研究室ではヒト胎盤を用いて、網羅的な遺伝子発現やDNAメチル化のプロファイルを取得し、少なくともアレル特異的なDNAメチル化領域(DMR)を23カ所同定したが、その近傍のインプリント遺伝子の発現制御に関わる転写因子は不明である。今後、ヒト胎盤発生に重要な機能を持つC19MC DMRに着目し、胎盤特異的なインプリンティングは、どの転写因子によって発現制御されているのか、について取り組む。具体的には、KOスクリーニングより検出した候補遺伝子から、C19MCや他のインプリント遺伝子の発現制御に関係する転写因子を同定する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Nature Communications
巻: 13 号: 1 ページ: 3071-3071
10.1038/s41467-022-30775-w