研究課題/領域番号 |
22K15129
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
今井 裕紀子 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特任研究員 (00814782)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 減数分裂 / 相同組換え / ゼブラフィッシュ / 組換え / テロメア |
研究開始時の研究の概要 |
減数分裂期の相同組換えは、正確な染色体分配と多様性の創出を担う重要なメカニズムである。この組換えは部位特異的なDNAの二重鎖切断(DSB)によって始まる。ヒトの精子形成では、テロメア近傍でDSBが起こりやすいが、そのメカニズムは全くわかっていない。本研究では、ヒトの精子形成と類似した特徴を持つゼブラフィッシュをモデルとして、テロメア近傍でDSBを引き起こすメカニズムの解明を目指す。本研究の成果は、"ヒトにおける組換えメカニズムの理解"という観点から、重要なインパクトを持つと同時に、"組換えメカニズムの多様性と意義"にアプローチするための足がかりになると期待される。
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研究実績の概要 |
減数分裂期の相同組換えは、正確な染色体分配と多様性の創出を担う重要なメカニズムである。この組換えは部位特異的なDNAの二重鎖切断(DSB)によって始まる。ヒトの精子形成では、テロメア近傍でDSBが起こりやすいが、そのメカニズムは全くわかっていない。本研究では、ヒトの精子形成と類似した特徴を持つゼブラフィッシュをモデルとして、テロメア近傍でDSBを引き起こすメカニズムの解明を目指す。マウスのDSBに必須のIHO1/Iho1は、ゼブラフィッシュにおいて組換え初期のテロメア近傍に局在するが、サブテロメア型のDSB形成における機能と局在メカニズムは未知である。そこで、サブテロメア近傍でおこるDSB形成の鍵となる因子として、Iho1に着目した。 2022年度は、Iho1のnull変異体についてガンマ線照射実験と免疫細胞化学による精母細胞の表現型解析を行ったところ、Iho1がゼブラフィッシュのDSB形成に必須であることが明らかになった。 また、マウスでは、軸構造に局在するHormad1タンパク質との相互作用によってIHO1が染色体上にリクルートされることが知られている。そこで、野生型とDSBの起こらないspo11変異体ゼブラフィッシュにおけるIho1とHormad1の局在を免疫細胞化学により解析したところ、spo11変異体ではIho1とHormad1で異なる局在が見られたことから、ゼブラフィッシュIho1がマウスとは異なったメカニズムで、テロメア近傍へローディングされることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得られているIho1のnull変異体について、DSB部位に局在するレコンビナーゼDmc1/Rad51の抗体を用いて免疫染色をおこなったところ、局在がほとんど見られなかった。このことは、Iho1 null変異体ではDSB形成が起こらないか、または、Dmc1/Rad51が局在できないことを示唆している。そこで、Iho1 null変異体にガンマ線を照射して人為的にDSBを誘導したところ、照射前に比べてDmc1/Rad51 fociが有意に増加した。このことから、Iho1が、ゼブラフィッシュのDSB形成そのものに必要であることが明らかとなった。 マウスでは、減数分裂期の染色体軸に局在するHormad1タンパク質との相互作用によってIHO1が染色体上に局在することが知られている。そこで、Hormad1とIho1の局在を野生型と減数分裂期のDSBを触媒するヌクレアーゼSpo11の変異体ゼブラフィッシュで観察した。その結果、spo11変異体では、Iho1がテロメア近傍に停留する一方で、Hormad1は染色体軸全体に局在することがわかった。spo11変異体ではDSBが起こらないことから、Iho1はローディングされた領域にとどまっていると考えられる。このようなIHO1の局在はマウスSpo11変異体では見られないことから、ゼブラフィッシュのサブテロメア型DSB形成では、新規メカニズムによってIho1の染色体上へのローディングが起こることが強く示唆された。さらに、Iho1のテロメア近傍への局在にHormad1が必須であるか明らかにするため、hormad1変異体ゼブラフィッシュを入手し、交配を進めた。また、これまでに得られたIho1のアミノ酸1残基欠失変異体についても交配を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
現在交配中のIho1のアミノ酸1残基欠失変異体とhormad1変異体について、Dmc1/Rad51やIho1抗体による免疫細胞化学解析を行う。これにより、欠失したアミノ酸やHormad1が、DSB形成やIho1の局在に与える影響を明らかにする。 減数分裂期の染色体軸構造はDSB形成の足場になると考えられるが、軸構造タンパク質の中には軸構造上で不均一な分布を示すものが多い。Iho1のローディングはテロメア近傍の軸構造上で起こるが、軸構造やテロメアに局在する特定の因子との共局在を解析するのは、従来型顕微鏡の解像度では難しい。そこで、超解像度顕微鏡を用いてIho1とこれらの因子の局在を解析することで、Iho1が局在する領域の特徴を明らかにする。 また、サブテロメア型のDSB形成では、Hormad1と異なる因子によってIho1がテロメア近傍へリクルートされると予想されることから、このような因子として、RNAに着目する。精母細胞をRNase処理してから、免疫細胞化学によってIho1を観察し、RNAの有無がIho1の局在に与える影響を検討する。RNase処理によって変化が見られる場合、精巣抽出液から抗Iho抗体を用いたRNA免疫沈降を行い、Iho1に結合するRNAを同定する。RNase処理によってIho1の局在に変化が見られない場合は、RNA以外の因子が、Iho1の局在に中心的な役割を果たすと考えられる。これまでに、軸構造の形成に必要なSycp2や、減数分裂初期のテロメア集合(ブーケ構造)の形成に必須のTerb2などの変異体が得られていることから、これらの変異体におけるIho1の局在を免疫細胞化学によって解析し、減数分裂期の染色体構造の形成が、Iho1の局在に果たす役割を明らかにする。
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