研究課題/領域番号 |
22K15148
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
川本 望 基礎生物学研究所, 植物環境応答研究部門, 特任助教 (20846414)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 細胞分裂 / 重力屈性 / 植物発生 / パターン形成 |
研究開始時の研究の概要 |
植物を含む多細胞生物の発生は細胞分裂の連続から成り立っている。植物の場合、細胞系譜と細胞の位置情報が細胞運命の決定および分化・発生とつよく結びついており、細胞運命を決定するような非対称細胞分裂を行う場合には、細胞分裂の位置・方向が正確に決定される必要がある。本研究では重力屈性に重要な働きを担うLZY1が細胞分裂面の位置決定に関与する可能性を見出しており、どのようにLZY1が細胞分裂面の位置決定に関与しているのか、その分子機構の解明を進める。
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研究実績の概要 |
植物を含む多細胞生物の発生は細胞分裂の連続から成り立っている。植物の場合、細胞系譜と細胞の位置情報が細胞運命の決定および分化・発生と強く結びついている。このため、細胞運命の決定に関わる非対称分裂を行う場合には、細胞分裂の方向、分裂面の位置決定が正確に決定される必要がある。本研究では、植物の重力屈性に重要な働きを担うLZY1が細胞分裂面の方向・位置決定に関わる可能性を新規に見出しており、LZY1の詳細な解析を通じて、細胞分裂面決定機構の解明を目指すものである。 2023年度はlzy1変異を亢進し、細胞分裂面の決定に関わるler変異体の原因遺伝子の同定を目指して、Illumina HiseqX TenおよびPacBio Sequel II CLRを用いた全ゲノムシークエンスのデータ解析を継続して進めた。この解析から、染色体転座が引き起こされていることが明らかとなった。現在はロングリード、ショートリード双方のシークエンスデータの統合的な解析を進めている。 昨年度までの研究から、lzy1の重力屈性異常を相補するゲノム断片ではlzy1 lerの相補には不十分であることが判明していた。このため、約19 kbのLZY1ゲノム断片を用いて、相補実験を進めている。上流約10 kbを用いたLZY1の転写を可視化するレポーターを作成し、観察したところ、花粉小胞子の非対称分裂に先立ち、LZY1の発現が開始することが明らかとなった。これらの結果から、LZY1の遺伝子発現制御には細胞種によって異なる転写制御領域が必要とされる可能性を見出した。 さらに、近接ビオチン標識法によりLZY1の新規相互作用因子の探索をおこなった。LZY1の他に、LZY3も用いて同様の実験をおこなったところ、既知の相互作用因子であるRLD1やGNOMの他に、多数の新規因子を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Illumina HiSeqX Tenを用いてlzy1変異の亢進変異であるlerの原因遺伝子の探索を進めていたところ、予期せぬことに染色体の再編成が生じている可能性が示唆された。先進ゲノム支援による支援を受け、PacBio Sequel II CLRによるロングリードシークエンスを行い、変異の同定を進めている。現在までに、1番染色体上腕と5番染色体上腕の間で染色体転座が生じていることを明らかにしている。 lzy1 lerにおける発生異常を細胞生物学的に調べるために利用する様々なマーカー系統、LZY1の相互作用因子の探索を行うためのTurboIDを利用した形質転換体の作成などを完了した。さらには、TurboIDを利用した新規相互作用因子の探索をおこなった結果、RLD1やGNOMなど既存の相互作用因子の他に、新規の相互作用因子の単離に成功した。 加えて、LZY1の転写を可視化するマーカー系統の観察やlzy1 ler変異体の相補実験から、LZY1の遺伝子発現制御は組織や細胞種により異なる転写制御領域が必要なことを示唆する結果が得られた。新規の相互作用因子の単離と合わせて、新たな研究展開に繋がる予備的な結果を得ることができた。 以上のように、LZY1の転写を可視化するレポーターを用いた解析や、生化学的な解析は順調に進展し、興味深い知見が得られているものの、lzy1変異の亢進変異であるlerの原因遺伝子の同定には至っておらず、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も引き続き、変異体のゲノム解析を進め、lzy1の亢進変異であるler変異体の原因遺伝子の同定を目指す。同定したler変異体はT-DNAの挿入変異体あるいはゲノム編集により新規変異体を作成し、lzy1との遺伝学的な相互作用を調べ、lzy1 ler二重変異体と同様の表現型を示すか遺伝学的な解析を行う。 2023年度に確立した条件下で、LZY1-TurboIDによるビオチン標識を行い、LZY1複合体構成因子の探索をさらに進める。現在までに得られた因子と共に、新たに得られた因子に関して変異体の表現型観察や細胞内での局在・動体を観察する。合わせて、得られた因子がler変異の原因遺伝子である可能性もあるため、lzy1との遺伝学的な相互作用を調べる。
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