研究課題/領域番号 |
22K15163
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
香川 幸太郎 東北大学, 生命科学研究科, JSPS特別研究員(PD) (80780395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 進化可能性 / 確率過程 / 中立進化 / 雑種形成 / 突然変異率 / 進化理論 |
研究開始時の研究の概要 |
進化には遺伝的多様性が不可欠である。近年の研究から、集団に供給される遺伝的多様性の多寡が集団の表現型に依存して変化しうることが示されている。つまり、集団の進化ポテンシャルと表現型進化の間にはフィードバック・ループが成立しうる。本研究では「進化ポテンシャルと表現型進化のフィードバック・ループが表現型進化に方向性を与え、自然選択の不在下でも非ランダムなマクロ進化を導く」という新理論を提唱し、進化シミュレーションでこの理論の妥当性を確かめる。
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研究実績の概要 |
進化には遺伝的多様性が不可欠である。近年の研究から、集団に供給される遺伝的多様性の多寡が集団の表現型に依存して変化しうることが示されている。したがって、集団が持つ進化ポテンシャルと表現型進化の間にはフィードバック・ループが成立しうる。これを受けて本研究では「進化ポテンシャルと表現型進化のフィードバック・ループが表現型進化に方向性を与え、自然選択の不在下でも非ランダムなマクロ進化を導く」という新理論を提唱する。この目的を達成するため、二つの研究課題を進めた。【①基礎理論の構築】進化ポテンシャルと表現型進化のフィードバックが生み出す進化動態に関する基礎理論の構築を目指して、適応度に個体間差が無いと仮定し、突然変異率を進化しうる形質としたトイモデルによるシミュレーションを行った。その結果、進化動態を表現型空間中の軌跡として表現した時、低い突然変異率を実現する表現型領域に留まる時間が相対的に長くなる傾向が確認された。したがって、複数集団のアンサンブルでは突然変異率を低下させる方向へ進化する傾向が観察された。この現象の確率過程の手法による定式化も進めている。【②理論の具体例の提案】進化ポテンシャルと表現型進化のフィードバックが導く進化動態の具体例を提案することを目的に、交雑帯における交配形質(例:繁殖時期)の進化シミュレーションも行った。遺伝的に分化した系統間の交雑帯では、別系統由来のゲノムが混ざり合うことで多様な表現型を持つ雑種個体が生み出され、表現型の偶発的進化が促進される。しかし、交雑帯集団で交配形質の新奇な表現型の頻度がある時偶然増加すると、親系統との交配が起こらなくなり、その後は交雑による多様性の創出が停止する。このような生殖隔離形質の進化と交雑による進化ポテンシャルの相互フィードバックが、新奇交配形質の進化を通じた種分化を促進しうることが進化シミュレーションで確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の課題である「基礎理論の構築」は順調に進んでおり、現在トイモデルによるシミュレーション結果や確率過程による理論の定式化をまとめた論文の執筆を進めている。また、第二の課題である「理論の具体例の提案」についても、交雑帯における進化についての研究成果を含む論文をEvolution誌に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案する理論の中心的なアイディアをまとめた論文の執筆と、交雑帯における進化動態に関する未発表の研究成果の論文化を進める。また、昨年度までの研究で交雑帯地域が空間的な広がりを持つ場合に、進化ポテンシャルと表現型進化の相互フィードバックが多様な交配形質を持つ種群の進化を促進しうることが分かってきた。今後は、このような進化動態が見られる条件を進化シミュレーションで探索する。また、本研究で提案する理論の実証も視野に入れて研究を進めたい。
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