研究課題/領域番号 |
22K15168
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
奥出 絃太 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 特別研究員(PD) (90934589)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | イトヨ / トゲウオ / 婚姻色 / 分子基盤 / アンドロゲン / 体色変化 / 分子機構 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの生物が、クジャクの羽などに代表されるように、オスとメスとで顕著に異なる性的装飾形質を示す。捕食者から目立つような一見生存に不利に見える性的装飾形質は、どのように野生集団で進化するのだろうか?本研究では、トゲウオ科魚類のイトヨにおける、繁殖期オスの腹面に現れる赤い婚姻色に着目し、イトヨのオスの婚姻色の進化をもたらす原因遺伝子・原因変異を同定し、それらを操作することで適応度(生存や繁殖成功率)に与える効果を解明する。赤い婚姻色を示さない近縁種トミヨや他種との比較も行って、どのようにイトヨが赤色の婚姻色を獲得したのか、その分子基盤を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、トゲウオ科魚類のイトヨにおける、繁殖期オスの腹面に現れる赤い婚姻色に着目し、イトヨのオスの婚姻色の進化をもたらす原因遺伝子・原因変異を同定し、それらが適応度(生存や繁殖成功率)に与える効果を解明することを目指す。 3年計画の2年目である2023年度には、2022年度に実施したRNAseq解析により明らかになったイトヨのオスの赤い婚姻色部位特異的に発現していたいくつかの候補遺伝子や雄性ホルモン関連遺伝子を対象に、CRISPR/Cas9法を用いて遺伝子をノックアウトしたイトヨを作出した。婚姻色を呈していない稚魚の時点では、体色などにおける明瞭な表現型は観察されなかった。現在、性成熟に至るまで成長を待っているところである。 また、雄性ホルモン投与により赤い婚姻色を呈したイトヨのメスを作出し、喉部分の赤くなった皮膚を用いて網羅的な遺伝子発現解析(RNAseq)および網羅的なオープンクロマチン領域同定(ATAC-seq)のライブラリを作成し、シーケンスを実施した。他にも、雄性ホルモンの他組織における機能も調べるために、雄性ホルモン投与個体および無処理個体から、脳・腎臓・腹部の皮膚など様々な組織を切り出し、RNAseq解析を実施した。現在、データの解析を進めているところである。同様に、トミヨのメスにも同濃度の雄性ホルモンを投与し、その個体を用いてイトヨとは異なる黒色の婚姻色の解析を実施しようと試みたが、トミヨに雄性ホルモンを投与すると、黒色の婚姻色が出現する前に死亡してしまうことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は予定通り、候補遺伝子群のノックアウト実験や、雄性ホルモンを投与したイトヨのメスのRNAseq・ATAC-seq解析を実施することができている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に作出した候補遺伝子のノックアウトイトヨに関しては、現在性成熟に至るまで成長を待っているところである。2024年の秋頃に表現型を解析し、候補遺伝子のイトヨのオスの赤い婚姻色への機能の有無を明らかにする。遺伝子欠失個体の婚姻色に影響のあった場合には、その遺伝子をホモで欠失した個体を作出するとともに、その遺伝子欠失の適応度への影響を調査する。 また、雄性ホルモン投与により赤い婚姻色を呈したイトヨのメスおよび無処理のメスを用いたRNAseq・ATAC-seqのデータを解析し、イトヨのオスの婚姻色に重要な遺伝子や制御領域を明らかにする。特に重要な制御領域が明らかになった際には、その領域をゲノムから欠失した個体をCRISPR/Cas9法により作出するとともに、その領域に着目して、イトヨと赤い婚姻色を呈しないトミヨのゲノムを比較する。
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