研究課題/領域番号 |
22K15170
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊東 拓朗 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (10827132)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 異質倍数体 / 適応進化 / 高山 / 海岸 / ベンケイソウ科 |
研究開始時の研究の概要 |
倍数体形成は,植物が様々な環境へと進出し,多様化を遂げる上で大きな原動力でとされている.その中で,異質倍数体はゲノム冗長性によって環境適応性は高まる一方で,極端な環境への進出は制限されることが一般に示唆されている.しかし,自然界における異質倍数体種の環境適応機構の実証的研究はきわめて限定的である. 本研究では,海岸性種と山地性種の交雑に由来する推定異質倍数体メノマンネングサとその両親種をモデルに,異質倍数体種が祖先親種よりも広域なニッチに適応する過程及びニッチ拡大の限界を規定する環境適応メカニズムについて,生態・生理学的解析及びゲノミクスを用いて検証する.
|
研究実績の概要 |
倍数体形成は,植物が様々な環境へと進出し,多様化を遂げる上で大きな原動力でとされている.異質倍数体はゲノム冗長性によって環境適応性は高まる一方で,極端な環境への進出は制限されることが一般に示唆されているが,自然界における異質倍数体種の環境適応機構の実証的研究はきわめて限定的である.申請者はこれまで,ベンケイソウ科マンネングサ属のメノマンネングサ(海岸-山地性,以下メノ)が,海岸性種と山地性種の交雑に由来する推定異質倍数体であることを見出した.さらに,同種は両祖先親種よりも広域にわたる生育適地(海岸-山地)をもつことが推定されたが,祖先親種の一部が占めている高山環境へは進出できていない.そこで本研究では,海岸性種と山地性種の交雑に由来する推定異質倍数体メノとその両親種をモデルに,①分類学的観点からメノ種群の実体解明,②全ゲノム解析によるメノの異質倍数体形成プロセスの解明,③生態・生理学的解析による異質倍数体種のニッチ拡大・制限を規定する環境適応機構の検証という3つのサブテーマを遂行することで,異質倍数体種が祖先親種よりも広域なニッチに適応する過程及びニッチ拡大の限界を規定する環境適応メカニズムについて検証する. 本年度の研究では,対象種群のサンプル不足地点において植物試料採取を進めた.共通圃場栽培比較からは,メノ両親種に開花期のずれが存在し,メノは集団間で開花期がばらつく傾向が認められた.また,昨年度得た対象種のロングリード塩基配列を基に高精度ドラフト全ゲノムを構築した.さらに対象種の分布域を網羅した全ゲノムリシーケンスを行い,構築したドラフト全ゲノムを参照配列として遺伝解析を行った.葉緑体全ゲノムに基づく系統解析の結果から,メノは海岸種を母親としている一方で,核遺伝子に基づく系統解析の結果からはメノ内で遺伝組成の勾配が認められ,単純な異質倍数体起源ではない可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究では,特に対象種群のサンプル不足地点において植物試料採取を進めた.共通圃場栽培比較からは,当初葉形態の比較を主に行う予定であったが,対象種群には開花期に大きなずれがあることが明らかになったため,開花期の調査を追加で行った.高山種は開花期が早く,海岸種はそれよりも1ヵ月ほど開花が遅れることが明らかとなった.さらにメノに関しては,開花期がその間でばらつくことが明らかになり,生育環境や形態的特徴との関連を現在調査している.また,昨年度得た対象種のロングリード塩基配列を基に高精度ドラフト全ゲノムを構築することができた.さらに対象種の分布域を網羅した全ゲノムリシーケンスを行い,構築したドラフト全ゲノムを参照配列として遺伝解析を行った.葉緑体全ゲノム配列に基づく系統解析の結果から,メノはすべて海岸種を母親としていた.しかしながら,核シングルコピー遺伝子に基づく系統解析の結果からは,メノ内で遺伝組成の勾配が認められたため,種間・集団間の遺伝子流動が存在している可能性が示唆された.このことからメノは単純な異質倍数体起源ではない可能性が示唆されたため.より詳細なゲノム解析を進めていく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後一年間で行う研究計画としては,同種群において①集団全ゲノムリシーケンスデータに基づく異質倍数体形成プロセスの推定,②共通圃場栽培による形態・生理特性の変異幅を網羅的調査,③RNA-seqを用いた環境適応性に関連する遺伝子発現量の比較を予定している.おおよそこれまでの研究計画は予定通りに達成できており,基本的な方針に変更の予定はないが,追加でゲノムリシーケンス解析を行うことを予定している.また,随時論文化および学会でのアウトプットを予定している.追加の計画分に関しては,遂行予定の解析サンプル数などを調整し,本研究の遂行に支障が出ないように調整を予定している.
|