研究課題/領域番号 |
22K15172
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
河野 美恵子 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 特別研究員 (70814276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 再合成実験 / 長期培養 / 形態変化 / 条件検討 / 地衣類 / 三者共生 |
研究開始時の研究の概要 |
地衣類は共生という生活様式を獲得したことで生息域を極限環境にまで拡大し多様な生態系において根幹的な役割を担っている。これまで地衣類は光合成を行いエネルギー生産を担う藻類・藍藻類と、地衣体と呼ばれる共生体の大部分を構成する菌類の二者共生であると考えられてきた。しかし近年地衣類に普遍的に存在するバクテリアや担子菌酵母が報告され、より多くの生物種が互いに影響し合うことで構築される共生システムであることが示唆されている。本研究では現在唯一実験室での地衣体の再現が可能なハコネサルオガセ共生システムを用いてバクテリアが地衣共生で担う役割を明らかにし、地衣類が三者共生であるという実験的確証を得る。
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研究実績の概要 |
ハコネサルオガセ共生系を用いて地衣類が共生菌・共生藻・共生バクテリアの三者共生系であることを実験的に示すため2022年度は以下の条件検討を行なった。 ハコネサルオガセに由来する共生バクテリアSphingomonas sp.は共生藻との混合培養によってのみ実験室での培養が可能である。培養時バクテリアは藻細胞の表面に局在し単独コロニーを形成しないが、GFPを発現する共生バクテリア株を作製するためには単独コロニーが必要となる。そこで、共生バクテリアが藻細胞から遊離する培養条件を検討し明らかにした。 GFP発現株を作製した後は実験室条件下で共生菌、共生藻、共生バクテリアの混合培養によって共生体を再合成しバクテリアの局在を蛍光顕微鏡で観察する予定であるため、共生体を用いた試料作製の手順・条件を検討し調整した。また共生体の再合成実験の条件を再検討した結果、これまでより長期間共生体の培養が可能になり、さらに長期間培養した方がバクテリアを加えた場合と加えなかった場合で共生体の表面構造や長さなどの差が顕著になることが明らかになった。バクテリアを加えると表面を覆う皮層がより厚く均一になると考えられる。研究計画ではバクテリアを加えた場合と加えなかった場合で全トランスクリプトーム比較を行う予定であるため、リボソームRNA除去に必要となる共生菌、共生藻、共生バクテリアのrRNA配列と相補的なプローブ配列を作製した。また、現在24のscaffoldからなる共生バクテリアゲノムをより繋げるためOxford Nanopore社のMinIONを用いたロングリードシーケンスを行ない、高分子DNAの抽出方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非モデル生物であるハコネサルオガセを用いた実験は標準プロトコールでは対応できないことがほとんどであるため実験条件の検討がもっとも重要かつ困難な点であり、また、再合成実験は共生体の形態に顕著な差が生じるのに3-6ヶ月の培養が必要であるため、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の結果から今後は以下のように研究を推進する。 1)共生バクテリアの単独コロニーの形成に成功し、顕微鏡観察の条件の検討もできたため、CRISPR/Cas9を介し、GFPを恒常的に発現するバクテリア株の作製を行う。 2)バクテリアを加えた場合と加えなかった場合で顕著な差が生じる培養条件が明らかになり、リボソームRNA除去のためのプローブも作製できたため全トランスクリプトーム比較を行う。また、遺伝子発現だけでなく、形態や共生体特異的に合成される二次代謝産物の違いも詳しく調べる予定である。 3)ロングリードを用いて共生バクテリアの全ゲノム配列を改善する。
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