研究課題/領域番号 |
22K15180
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 栃木県立博物館 |
研究代表者 |
山本 航平 栃木県立博物館, 学芸部自然課, 研究員 (60806248)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 冬虫夏草 / ツチダンゴ属 / 宿主転換 / 分離培養 / 外生菌根菌 / ホストジャンプ / 共生 / 分類 |
研究開始時の研究の概要 |
昆虫殺生菌として知られる冬虫夏草類の中でも,トリポクラジウム属は,菌根菌であるツチダンゴ属菌への宿主転換を経て多様化したユニークな系統である.トリポクラジウム属に寄生されたツチダンゴ属ではしばしば胞子形成が観察され,宿主を殺生していない可能性が示唆されていた.そこで本研究では、「トリポクラジウム属は,昆虫からツチダンゴ属菌への宿主転換を経て宿主を生存させる機構を確立し,ツチダンゴ属が菌根を介して樹木から得る栄養をトリポクラジウム属が横取りしている」という仮説を立てた.本研究ではその検証のために,トリポクラジウム属の詳細な系統分類を行い,寄生後も菌根を介した養分の移動が維持されているか検証する.
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研究実績の概要 |
当初の計画通り、初年度に引き続きトリポクラジウム属菌類の子実体を国内各地において採集し、菌株の確立と分類学的検討を重点的に行った。その結果、昆虫寄生性のトリポクラジウム属の未記載種1種(栃木県、長野県)、ツチダンゴ属寄生性のトリポクラジウム属の未記載種1種(奄美大島)を見出し、新種記載に向けて形態観察を行った。また、前年度に確立した手法および組織分離による分離培養を試みた結果、前種は培養に成功したが、後者は接種した子実体片・胞子のいずれも成長がみられなかった。今後、複数種の培地を検討するなど、改善策の検討が必要である。なお、既知種のミナヅキタンポタケについては、前年度に確立した手法で、胞子由来の培養株確立に成功した。本種はヨーロッパに分布するT. rouxiiと形態的が酷似しており、両者の関係性を明らかにするうえで重要な菌株を確立できた。また、前年度に採集した赤紫色の子実体を形成するTolypocladium sp.についても、本年度採集子実体からの培養株の確立に成功したため、新種記載に必要な複数遺伝子領域のシーケンス決定を現在進めている。 また、本研究のメインテーマである、トリポクラジウム属に寄生されたツチダンゴ属が、宿主樹木との菌根共生関係を維持しているのかを解明するために、野外実験を行うためのトリポクラジウム属菌の群生地の選定も進めた。その結果、所属機関から比較的近い場所で、ミヤマタンポタケおよびTolypocladium sp.の群生地を計3か所見出した。次年度はこれらの調査地で予備実験を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年実施できなかった離島(奄美大島や御蔵島)を含む広範囲の野外調査を実施でき、また、多くの冬虫夏草愛好家の協力を得ることもでき、結果的に10種以上のTolypocladium属菌を収集できた。また、3年度目以降に重点的に行う野外実験についても、準備を進めることができた。一方で、本年度中の投稿を目指していた記載論文については、シーケンス取得に時間を要したため、年度中に投稿できなかった。以上の結果から、おおむね順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は南西諸島で低温期に発生する種と、北海道で秋に発生する種の調査を実施し、モノグラフ作成に必要な種の収集を完了させる予定である。未記載種のうち、特に系統学的に重要な知見を与えると考えられる種については、次年度に論文を投稿する予定である。また、本年度に見出した野外調査の適地については、予備実験を行い、本実験が実施可能か検討する。
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