研究課題/領域番号 |
22K15205
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
石井 宏憲 関西医科大学, 医学部, 助教 (30636676)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 時間制約 / 意思決定 / 経路選択 / 報酬 / 制限時間 / ドーパミン / セロトニン / サル / 採餌戦略 |
研究開始時の研究の概要 |
意思決定には環境の制約条件に合わせて戦略を切替える柔軟性が欠かせない。特に時間制約は仕事の期日や試験の制限時間など我々の日常生活の多くの場面で直面する問題であり、また動物にとっても採餌戦略を律速する最も重要な要素の一つである。例えば餌の探索に十分な時間を割ける場合は散在する餌場を網羅的に訪問し収量を最大化できるが、時間が限られている場合は豊富な餌場を重点的に訪問し効率を上げる必要がある。では脳はどのように採餌戦略を切替えるのだろうか。本研究では独自に開発したサルの制限時間付き訪問採餌課題を用い、薬理・電気生理実験によって戦略切替えの神経基盤を明らかにする。
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研究実績の概要 |
私たちヒトや動物は日々様々なタイムリミットの中で行動選択・意思決定を行っている。制限時間が短ければそれに合わせて仕事のスピードや目標設定、やり方を柔軟に変えていく必要がある。本研究は脳のどのような仕組みによってこの柔軟性が実現させているかを明らかにすることを目的としている。本研究ではサルをモデル動物した制限時間付き多報酬採餌課題を開発した。時間制限が長い場合は報酬を全て回収することができるが、時間制限が短い場合は回収する報酬の数を妥協し、しかしその中で獲得総量を最大化するため戦略を変える必要がある。初年度は2頭のサルの訓練に成功し、いずれのサルも制限時間が短くなるにつれ時間効率を優先した戦略に切り替えることが分かった。本年度は2頭のサルを用い、ドーパミンD1型受容体とD2型受容体の選択的阻害剤(SCH23390とEticlopride)およびセロトニン前駆体である5-HTPの全身投与が課題遂行にどのような影響をもたらすかを評価した。いずれの薬剤も制限時間の存在下での獲得総報酬量を悪化させたが、その原因は大きく異なっていた。ドーパミンD1型受容体阻害剤は制限時間が短くプレッシャーがかかる条件において、行動開始をチョークさせることが分かった。ドーパミンD2型受容体阻害剤では運動関連の障害が見られなかった一方、意思決定プロセスにおける変化が生じていた。また5-HTPはドーパミン阻害剤とは異なる行動変化を引き起こすことが分かっており、その詳細については現在解析中である。行動実験で得られた成果およびドーパミン阻害実験で得られた成果については現在論文投稿に向けて執筆作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初年度で確立した制限時間付き多報酬採餌課題を用い、ドーパミンD1型受容体とD2型受容体の選択的阻害剤(SCH23390とEticlopride)およびセロトニン前駆体である5-HTPの全身投与が課題遂行にどのような影響をもたらすかを評価した。いずれの薬剤も制限時間の存在下での獲得総報酬量を悪化させたが、その原因は大きく異なっていた。ドーパミンD1型受容体阻害剤は制限時間が短くプレッシャーがかかる条件において、行動開始をチョークさせることが分かった。ドーパミンD2型受容体阻害剤では運動関連の障害が見られなかった一方、意思決定プロセスにおける変化が生じていた。また5-HTPはドーパミン阻害剤とは異なる行動変化を引き起こすことが分かっており、その詳細については現在解析中である。また行動実験で得られた成果およびドーパミン阻害実験で得られた成果については現在論文投稿に向けて執筆作業を進めている。24年度に予定している電気生理実験についても作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として1)新規にサルの導入・訓練、2)行動のモデル化、3)電気生理実験、を予定している。 1)2頭のサルで成果が得られているものの、再現性の追試および今後の展開のためにさらに新規のサルを導入し訓練を行う。 2)データ解析において本実験のサルの選択行動をモデル化することを試みる。現在は重回帰分析を用い選択をステップワイズに予測するグリーディー法ライクな解析手法を用い、実際のサルの選択を4割以上の精度で予測することに成功している。より現在の方法をさらに改善するか新しい手法を検討していく予定である。 3)電気生理実験。すでに全身投与実験によってドーパミンが本課題遂行に重要であることが分かっているため、ドーパミンの投射を多く受ける脳領域の神経活動計測を予定している。
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