研究課題/領域番号 |
22K15214
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 新潟大学 (2023) 九州大学 (2022) |
研究代表者 |
濱崎 英臣 新潟大学, 脳研究所, 特任助教 (80843771)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | タウオパチー / アルツハイマー病 / 神経変性疾患 / 画像解析 / 神経病理 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病の脳内には2つのたんぱく質、アミロイドベータとタウタンパクが異常な形で蓄積します。 本研究は、解剖に協力いただいた方の脳を対象に、タウタンパク病変をの分布を詳細に検討することを目的としています。その解析のために、新たなプログラムを作製し、タンパク質の沈着と生前のライフスタイルや臨床的にみられた症状との関連を明らかにすることで、病変の危険因子や細かい認知症の亜型の存在を明らかにすることを目的としています。 また、脳内にみられる変生産物はタウタンパク以外にもあり、多様な形態をしています。それらの変生産物についても、解析を行い、危険因子の発見を行うことを目的としています。
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研究実績の概要 |
認知症の原因疾患として最も多いアルツハイマー病では、アミロイドβと呼ばれるタンパクが大脳皮質に沈着する老人斑と、Tauタンパクが神経細胞の中に沈着する神経原線維変化(Neurofibrillary tangle; NFT)が神経病理学的診断のhallmarkとなる。組織切片上では、Tauの異常沈着はNFTだけでなく、細胞間の神経突起網と呼ばれる領域やアストロサイト内にも観察される。本研究の目的は、NFTと様々な細胞突起内に沈着が見られる神経突起網病変を区分して画像解析を用いて定量的に解析し、部位ごとの詳細なTau異常沈着パターンやその頻度を明らかとすることで、Tau異常沈着によって引き起こされる疾患のサブタイプを明確にすることである。 本年度は、昨年に引き続き解析プログラムの改良と検討症例数の追加を行い、計31症例を解析した。撮像はKEYENCE BZ-X700の対物20倍レンズを用いてタイルスキャンを行い、大脳皮質の全層が入るように異常リン酸化Tau免疫染色(抗体:AT8)標本を撮像し、Tau陽性構造物の面積を定量評価した。一部の症例では神経細胞内のNFT病変と神経突起網病変に区分し解析を行った。部位はいずれの症例も中前頭回、上側頭回、下頭頂小葉の3部位を解析した。 NFT病変、神経突起網病変共に加齢性の増加を示した。部位別では、今回検討した部位の中では最も海馬に近い上側頭回でTau異常沈の面積がやや高値であり、中前頭回と下頭頂小葉はほぼ同値であった。また、母数が少ないため追加の検討が必要であるものの、下頭頂小葉で最も病変が強い症例も2例観された。2症例ともに神経突起網病変が強く、一部はアルツハイマー病老人斑が下頭頂小葉で高値を示した。同部位では上側頭回と比してアミロイド沈着も顕著であったことからアミロイド沈着に伴うTau陽性構造物が増加している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は研究計画に則り検討症例数の増加と解析プログラムの改良を行った。昨年検討できた症例は①大脳皮質のNFTを主病変とする症例、②神経突起網病変が顕著である症例、③病変が軽度であり、ごく少数のNFTが観察される症例、④病変が軽度であり、ごく少数の神経突起網病変のみ観察される症例、の4パターンに分け各3症例を代表例とした12症例のみであり、かつ少数の神経突起網病変のみの症例では偽陽性が多くみられた。 昨年度から解析症例を蓄積し、現時点で累計(内訳:男性17例、女性14例、非認知症症例7例、AD(他の変性疾患の合併含む):17症例、Primary age-related tauopathy:4例、血管性認知症:2例、その他1例)の解析を行った。部位はいずれの症例も中前頭回、上側頭回、下頭頂小葉の3部位を解析した。 解析プログラムの改良に関して、本研究で用いている解析プログラムは陽性構造物の抽出に際し、色温度の閾値を設定するのではなく、標本間の固定などの影響による抗原性・染色性の差を少なくするためK-meansクラスタリングを導入している。そのため染色性の弱い症例では陽性構造物とリポフスチンなどのやや褐色の構造物が混在し偽陽性が出ていた。偽陽性を除くため、抽出後に閾値処理を追加した。①~③の沈着パターンを示す代表症例でも同様の処理を行い、陽性構造物の抽出が正常に行われていることを確認した。一方で、今回追加した症例でARTAGと呼ばれるTauのグリア細胞病変が高度な症例ではARTAGを大きな封入物として捉えてしまいNFTと神経突起網病変の分類ができなかった。現時点では分布の傾向を見るため総面積のみを算出しているが、今後より広い対象を解析可能となるようプログラムの改良を行う。 プログラムの改良が残っているものの、追加症例の検討は順調に進んでいるためおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今回検討した3部位では、NFT・神経突起網病変共に上側頭回から出現し、他の皮質領域へと進展してるように考えられた。また、症例数は少ないが下頭頂小葉ではニューロピル病変の出現がやや多い傾向が見られた。 今後、現時点ではARTAGを有する症例などでNFTと神経突起網病変を区分しての解析が完了していないため、プログラムの改良を行いデータを揃えることを第一の目標とする。全データが揃った後に、これまでに申請者が解析している海馬や被殻といった他の脳領域のTauやアミロイド沈着との関連を検討し、NFT/ニューロピル病変の比を規定するものが部位によるものか、症例ごとに異なるものであるかを検討することで、Tau異常沈着の進展様式に関するデータを示すことを次の目的として研究を進める。 また、一昨年度、本プログラムを用いて筋強直性ジストロフィー脳のTau異常沈着の画像解析を行い論文の一部のデータとして発表しており、他疾患への応用が可能であることが示された。最終年度は主に解析対象を他の神経変性疾患に広げ、TDP-43やα-synuclein等の他の変性産物に対しても定量的な解析を行い、Tau異常沈着との関連を明らかとすることを最終的な目的とする。
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