研究課題/領域番号 |
22K15238
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 迪諒 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主任研究員 (50826526)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 運動 / 意欲 / ドーパミン / 運動野 / サル / 皮質脳波 / 機能的結合 / 電気刺激 / 赤核後部 / マカクザル / 電気生理 |
研究開始時の研究の概要 |
オリンピックで世界記録が生まれやすいのはなぜか?本研究提案では、強い動機づけが運動能力を高める神経機序の一端を明らかにすることを目指す。動機づけには中脳ドーパミン(DA)神経細胞群が重要な役割を担う。研究代表者は、中脳DA領域が筋活動を生み出すことができる新たな神経路を解剖学的に発見したが、その経路の機能は不明である。そこで、「中脳DA細胞群である赤核後部(RRF: retrorubral field, A8)がやる気と運動を制御する源である」という仮説のもと、行動課題中のサルのRRFからの神経活動記録および神経活動操作を行い、RRFによって制御されるやる気と運動の制御機構を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度に取得した実験データの解析を進めた。麻酔下のサルの腹側被蓋野、黒質緻密部、赤核後部を電気刺激した際に誘発される皮質脳波の機能的神経結合の差異を検証した。誘発脳波の潜時は0-30ms, 30-80ms, 80ms以上と大きく3つのコンポーネントに分類される傾向があった。また、大脳皮質感覚運動野との機能的結合の強さ(誘発電位の大きさ)は、腹側被蓋野<黒質緻密部<赤核後部というようにグラディエントに変化していくことがわかった。一方で、眼窩前頭皮質については、腹側被蓋野<赤核後部<黒質緻密部の順で機能的結合が強かった。また、マカクサルの一次運動野上肢領域に逆行性神経トレーサーを注入し、中脳ドーパミン領域の逆行性標識細胞を観察することも実施した。その結果、一次運動野上肢領域へ投射する神経細胞の数の割合は、腹側被蓋野、黒質緻密部に比べ、赤核後部において最も多かった。標識神経細胞の中にはドーパミン神経解剖も非ドーパミン神経細胞も両方存在した。 以上のように、大脳皮質運動野との神経結合の強さは腹側被蓋野や黒質緻密部に比べ、赤核後部が強いという結果は神経解剖の実験と電気生理実験の結果の両方において確認できた。 加えて、行動中の動物から神経活動を記録するための実験用に、2頭の動物の行動課題トレーニングを実施している。構造MRI画像データも取得し、ドーパミン細胞からの記録実験に向けて進んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動実験対象個体の行動課題の学習に時間を要したことに加え、別プロジェクトの実験との兼ね合いで、本課題にやや遅れが出ている。しかし、1頭では行動課題のトレーニングは完了しており、対象個体2頭のMRI構造画像も取得済みであるため、2024年度は該当個体の赤核後部(RRF:A8)から行動課題中の活動が記録できるものと想定している。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、運動課題中の動物から中脳ドーパミン細胞群の神経活動を記録し、力の発揮レベルに依存した神経活動がドーパミン細胞から得られるか否かを明らかにすることを目指す。麻酔下実験で得られた腹側被蓋野<黒質緻密部<赤核後部の順で大脳皮質運動野との機能的結合が強くなることをサポートする様な神経活動の強さのグラディエントが運動課題中のドーパミン細胞から記録できることを期待している。
|