研究課題/領域番号 |
22K15240
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森崎 一宏 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (80822965)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 配座制御 / フッ素 / 亜鉛 / モノフルオロアルキル化 / カップリング / 不斉反応 |
研究開始時の研究の概要 |
モノフルオロメチレン構造は主に①脱酸素的フッ素化②多重結合へのF+の親電子付加などC-F結合形成よって構築されるため、化合物の多様性に改善の余地がある。本研究では、ほとんど着目されてこなかったα-モノフルオロアルキル金属種を用いた種々のカップリング反応によるモノフルオロメチレン構造含有化合物の効率的合成を目指す。
|
研究実績の概要 |
化合物の配座固定は、医薬品候補化合物の構造最適化において重要な戦略の一つである。一般に、配座自由度の高い直鎖構造の配座固定は環構造や不飽和構造の導入によって図られるが、これら既存の手法では元の化合物からの大きな構造変化が避けられない。一方、化合物の適切なC-H結合をC-F結合へと置き換えることで立体容積をほとんど変えることなく安定配座を変化させることが可能である。特に、炭素上に一つフッ素を有するモノフルオロアルカン・アルケンは創薬のモチーフとして期待されている。 しかし、効率的合成手法の欠如から、配座制御法としての基礎的知見に乏しく実用例も限られている。 本研究ではモノフルオロアルカン・アルケンの効率的合成法を開拓し、配座固定法としてのフッ素導入の効果・適用範囲を提示を目指している。 これまでに、Zn/Fカルベノイド(α-モノフルオロアルキル亜鉛)・Zn/Fアルキリデンカルベノイド(α-モノフルオロビニル亜鉛)の調整法を初めて確立し、これらが室温で取り扱い可能であることを見出している。また、これらの詳細な溶液中での構造・分解過程に関しても明らかにした。さらに、これら新規亜鉛種は種々のカップリング反応に適用可能であり、これまで合成が極めて困難であった種々の官能基を有するモノフルオロアルカン・アルケンのカップリングによる収束的・効率的な合成に成功した(国際誌投稿中)。 また、Zn/Fカルベノイドを用いた新規ホモロゲーション反応、銅触媒を用いたC-H官能基化を伴うジフルオロシクロプロパン合成を合わせて見出した。 現在、得られら広範な含フッ素化合物の配座をNMRや量子化学計算によって測定するとともに、より難易度の高い、Zn/Fカルベノイド亜鉛種のエナンチオ収束的な根岸カップリングへの適用・β-モノフルオロアルキル亜鉛種の調整に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モノフルオロアルカンの効率的合成を妨げていたのは、求核的モノフルオロアルキル化試薬の潜在的な不安定性であった。例えば、モノフルオロアルキルリチウムは-78度においても1秒以内に分解してしまう。私は初年度までの研究で、長寿命な求核的含フッ素亜鉛種(Zn/Fカルベノイド)の調整に成功していた。今年度は主にZn/Fカルベノイドを用いた種々のカップリング反応を検討し、これまで合成が困難であった種々官能基化モノフルオロアルカンの合成を達成した(国際誌投稿中)。また、Zn/Fカルベノイドの特異な分解過程をNMR測定から解明した。さらに、sp2混成炭素上にフッ素と亜鉛を有するZn/Fアルキリデンカルベノイドの安定性や種々カップリングにも成功しフルオロアルケンの合成に適用した(国際誌投稿準備中)。 α-モノフルオロアルキル亜鉛種を用いた根岸カップリングは困難を極めていたが、当量反応を用いた種々反応機構解析を行い反応の進行を妨げているステップを明らかにした。また、適切な添加剤を発見し、根岸カップリングの成績体を確認した。現在、条件最適化及び不斉化に向けて検討を開始している。 また、Zn/Fカルベノイドを用いた新規ホモロゲーション反応、銅触媒を用いたC-H官能基化を伴うジフルオロシクロプロパン合成などの新規反応を見出している。 以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
以下を計画している。 ・Zn/Fカルベノイドを用いた根岸カップリングの検討:Zn/Fカルベノイドを用いた根岸カップリングが実現できればさらに広範なモノフルオロアルカンの合成が可能となる。現在、亜鉛種のトランスメタル化が遅いことが反応の妨げになっていることが判明しているため、トランスメタル化を促進する銅などの金属を添加し、dual触媒系での根岸カップリングを検討する。 ・エナンチオ選択的な反応への検討:現在得られているモノフルオロアルカンはラセミ体であるため、Zn/FカルベノイドのDKR、もしくは、光学活性亜鉛種の調整を行い、光学活性なモノフルオロアルカンを得る。 ・Zn/Fカルベノイドを用いた新規ホモロゲーション:Zn/Fカルベノイドから脱離するフッ化物イオンを利用して、カルボニル化合物、ケイ素試薬との三成分反応を検討し、従来にはないケイ素試薬を用いたホモロゲーションを開発する。 ・銅触媒を用いたC-H官能基化を伴うジフルオロシクロプロパン合成:新規銅触媒系において、アルカンとジフルオロシクロプロペンが反応しジフルオロシクロプロパンが得られることを見出している。不斉化及び反応機構解析を行い本反応の全貌を明らかにする。
|