研究課題/領域番号 |
22K15241
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
勝山 彬 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (20824709)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | ペプチド / 天然物 / 化合物ライブラリー / ケミカルライゲーション / 抗菌薬 / 薬剤耐性菌 / 有機合成化学 |
研究開始時の研究の概要 |
中分子天然物は低分子が標的とすることが困難な標的に対しても作用することが可能であり、新規医薬品のリード化合物としてのポテンシャルを秘めている。従来の全合成を基盤とした逐次的な方法では、多数の誘導体合成の段階に多大な労力を有する。この問題に対して申請者はこれまで、「天然物ビルドアップライブラリー戦略」を考案し、天然物誘導体を迅速に合成する方法論を確立してきた。本申請課題では、天然物ビルドアップライブラリーを多成分連結型へと発展させることで、既存の天然物誘導体ライブラリーを飛躍的に上回る大規模ライブラリーを構築する。また、構築したライブラリーを用いて、細菌感染症治療薬のリード化合物の獲得を目指す。
|
研究実績の概要 |
多成分ビルドアップライブラリー法の確立に向けて、抗菌天然物であるポリミキシン誘導体のライブラリー構築を実施した。アミノアルコールを有するポリミキシン誘導体を計12種類合成したのち、54種類のサリチルアルデヒドエステルとのセリン/スレオニンライゲーションを行うことで、約600種類からなるポリミキシン誘導体ライブラリーを構築した。ライブラリーの活性評価と再合成によるヒット化合物の同定を経て、優れた抗菌活性を示す誘導体を複数獲得するに至った。この中から、ポリミキシン耐性菌に対してより強い抗菌活性を示した誘導体を選択し、分子動力学シミュレーションによる作用機序の解析を実施した。その結果、グラム陰性細菌外膜に対して、ポリミキシン誘導体が膜透過を起こす過程において、新たに導入した置換基が分子全体の構造変化を誘起することで、膜透過を促進する可能性が示された。 次に、セリン/スレオニンライゲーションを用いることで、ポリミキシンの骨格にアルデヒドを導入した。このアルデヒドは、ヒドラジドとのヒドラゾン形成反応によりさらなる修飾が可能である。現在、ヒドラゾン形成反応による二度目の誘導化を検討している。 セリン/スレオニンライゲーションを2度用いることで、多成分ビルドアップライブラリーの構築もまた可能であり、サリチルアルデヒドエステルに変わる新たな反応性フラグメントの合成と反応の条件検討を行った。現在詳細について検討中であるが、種々のアミノアルコールに対するアシル化が可能なフラグメントを見出すに至っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セリン/スレオニンライゲーションを活用することで、複雑な構造を有する天然物であるポリミキシンの誘導体を、約600種類合成することができた。分子動力学シミュレーションによる作用機序の解析から、セリン/スレオニンライゲーションで導入した置換基が分子全体の構造変化を誘起することで、膜透過を促進する可能性が示され、この方法による天然物の高機能化が医薬品リードの創出に向けて有用であることが示唆された。 サリチルアルデヒドエステルに変わる新たな反応性フラグメントを用いた第二世代セリン/スレオニンライゲーションの開発にも目処が立ち、現在反応の一般性を検証する段階へと進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
第二世代セリン/スレオニンライゲーションの開発については、基質一般性の検討を実施したのち、最適な基質を用いて、ポリミキシンの誘導体化が可能であるかを検証することで、本反応が天然物ビルドアップライブラリーの構築に応用できることを示す。これが達成されたのち、セリン/スレオニンライゲーションと第二世代セリン/スレオニンライゲーションの双方を用いた多成分連結について検討をすすめる。また、二度目の置換基導入については、ヒドラゾン形成反応のみならず、オキシム形成反応も用いることを計画した。単純な置換基のみならず、抗菌作用を示す医薬品の部分構造や他の天然物の類似構造をポリミキシンに対して連結することで、2度の誘導体のメリットを最大限活用する。
|