研究課題/領域番号 |
22K15254
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小嶺 敬太 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (70838268)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 有機合成化学 / 天然物合成 / アルカロイド / ラジカル反応 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の創薬研究において複雑に縮環した構造を持つ天然物が注目されており、酵素との親和性の高さから既存の医薬品よりも活性の増強や選択性の向上が期待されている。本研究は魅力的な生物活性を示し、複雑に縮環した構造を持つアルカロイドに着目し、その効率的かつ網羅的な合成法の確立を目的とする。本合成を達成する上で鍵となる、ラジカルの電子的な性質を考慮した新規ラジカルカップリングの開発を行い、高効率的な新規分子構築法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
近年の創薬研究において複雑に縮環した構造を持つ天然物が注目されており、酵素との親和性の高さから既存の医薬品よりも活性の増強や選択性の向上が期待されている。生薬の一種であるヒカゲノカズラ科の植物から単離されたリコポジウムアルカロイドは、魅力的なリード化合物であるものの、その構造の複雑さから合成が困難であり、効率的合成法が必要である。本研究はリコポジウムアルカロイドの効率的かつ網羅的な合成法を確立することを目的とする。また、本合成を達成する上で鍵となる、ラジカルの電子的な性質を考慮したアシルラジカルを経るラジカルカップリングの開発を行い、新規分子構築法の確立を目指す。 初めに、前述したアシルラジカルを経るラジカルカップリングの検討を行った。まず、可視光レドックス触媒を用い、青色LED照射下反応を行ったが、望む生成物は全く得られなかった。続いてAIBNやV-40等を用いて加熱条件下で反応を行ったところ、低収率ながら望む生成物が異性体と共に得られた。収率およびジアステレオ選択性の向上を目的に様々な条件で検討を行った結果、青色LED照射下、光駆動型の触媒であるホスフィンオキシドを用いると、望む生成物が高収率かつ高立体選択的に得られてくることがわかった。次に、得られたカップリング体から炭素鎖の伸長を試みた。しかし、当初計画していたモルフォリンアミドのアリル化反応は、全く進行しなかった。そこで、比較的小さな官能基であるアルデヒドへと変換し炭素鎖の伸長を試みたところ、高収率かつ高立体選択的に反応は進行した。得られた化合物をジオールへと変換後、9員環の形成を試みた。条件検討の結果、Ms化の後、NsNH2との二重のアミノ化により、9員環の形成に成功した。その後、脱保護と続く環化により、共通中間体の短工程合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本合成研究において、量的供給が可能な共通中間体の合成法の確立は、大変重要な位置付けであり、本年度の目標であった。また、本合成を達成する上で鍵となる、ラジカルの電子的な性質を考慮したアシルラジカルを経るラジカルカップリングも、本年度中に確立する計画であった。 アシルラジカルを経るラジカルカップリングに関して、可視光レドックス触媒を用いた反応条件では残念ながら望む生成物が得られなかった。しかし、検討の過程で青色LEDと光駆動型の触媒であるホスフィンオキシドを用いる方法を見出し、望む生成物を高収率かつ高立体選択的に得ることに成功した。続く炭素鎖の伸長と9員環形成、三環性骨格の構築は、当初予定した計画通りに進行しなかった。しかし、適宜合成ルートの修正を行うことで、最終的に本年度の目標であった共通中間体の合成を達成した。 上記の理由から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
共通中間体の合成法を確立することができたため、次に本化合物の不斉合成を行う。具体的には、光学純度の高いエノン体を合成し、それを用いたラジカルカップリングを検討する。その後、得られた化合物からこれまでに確立した方法に従って、光学純度が高い共通中間体を合成する。 次に、共通中間体から標的とする生物活性天然物の合成を試みる。具体的には、アミドへと変換後、炭素を伸長する。そして、SmI2を用いて閉環し、本天然物の不斉合成を完了する。本研究計画は十分精査したものであるが、万が一、当初の計画通りに進まない場合、適宜柔軟に合成戦略を修正する。 そして、これまで得られた知見をもとに、共通中間体から対応するセグメントを用いて同様の方法により炭素鎖を伸長し、類縁体の網羅的な合成を行う。
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