研究課題/領域番号 |
22K15260
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田中 佑樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (50824041)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ナノ物質 / ICP-MS / フィールド・フロー・フラクショネーション |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ物質の細胞内取り込み量や経路は大きさ、形状によって変化することが示唆されており、生体影響を評価するにはナノ物質の種類だけでなく大きさや形状も考慮する必要がある。本研究では銀、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、二酸化ケイ素など身近に使用されるナノ物質に対して、asymmetric flow field-flow fractionation (AF4)によるサイズ、形状ごとの分離と高感度の元素分析装置であるICP質量分析計によるナノ物質の検出を組み合わせたAF4-ICP-MSの構築を目指す。本手法によって化学組成、大きさに加えて形状まで考慮したナノ物質の生体内動態解明が期待される。
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研究実績の概要 |
昨年度までに実施したシリカナノ粒子のサイズ分級と培養細胞による取り込みを評価した実験の結果は国際学術誌(Archives of Toxicology)に投稿し、掲載された。 今年度は非対称フロー型のフィールド・フロー・フラクショネーション(AF4)とICP質量分析計(ICP-MS)を組み合わせたAF4-ICP-MSによる、ナノ粒子の形状分級を試みた。同体積で形状の異なる金ナノ粒子、ナノプレート、ナノロッドを用意し、分離を試みたが、AF4では拡散係数の差異が小さく分離して検出することが難しかった。一方、一粒子ごとに分析を行うsingle particle ICP-MS(spICP-MS)法を適用したところ、同体積のため差異が見られないと想定されたナノ粒子、ナノプレート、ナノロッドにおいて信号強度が大きく異なり形状の識別が可能であることが示唆された。この結果は、形状の違うナノ粒子のICPにおけるイオン化効率が異なっていることに由来すると考えられた。 また、AF4-ICP-MSを用いて、培養細胞が亜セレン酸と塩化水銀から生合成するセレン化水銀(HgSe)のバイオジェニックナノ粒子の測定を試みた。培養時間の増加とともに直径200nm以下のHgSeナノ粒子の合成量が増加することが明らかになった。また、HgSeを含むcell lysateをプロテアーゼ処理すると、10~100nmの粒子の形成が見られたことから、細胞内のHgSeバイオジェニックナノ粒子はリソソーム内でHgSeコロイドが結合したタンパク質が分解されることで生じる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に引き続き、学会発表による成果の発信を行い、これまでの成果を学術雑誌に投稿することができた。サイズ分級については、当初の計画では難しいことが示唆されたが、代替法としてspICP-MSが有効であることを示した。AF4-ICP-MSによるサイズ分級について、分離チャネルの種類を変更して実施することも可能であると考えたが、機器(チャネル)の準備に時間を要し、具体的な検討は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
AF4のマイクロチャネルを用意することができたので、従来の分離チャネルとの比較を行いながら、再度、金ナノ粒子の形状分級について検討する。また、結晶系(二酸化チタンのルチル型、アナターゼ型)ごとに分級し、測定する方法を検討する。さらに応用研究として、酸化鉄ナノ粒子のサイズ分級を行い、酸化鉄ナノ粒子を含む医薬品(肝臓のMRI造影剤リゾビスト)について粒径やイオン含有量など品質に係る物性評価を行う。上記の二酸化チタン、金、酸化鉄について培養細胞を用いてサイズ、形状、結晶系ごとの取り込み効率の測定と毒性学的な検査を組み合わせた評価を実施する。
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