研究課題
若手研究
リン脂質分子はグリセロール骨格のsn-1位とsn-2位に2つの脂肪酸結合部位を持つが結合する脂肪酸の種類は2つの部位で異なる。このような脂肪酸種の偏りがリン脂質分子の機能発現において重要と想定されるがリン脂質sn-1位の脂肪酸種決定機構の解析は遅れていた。我々はこれまでの研究からリン脂質のsn-1位に対して特異的に脂肪酸導入する酵素を生化学的に同定してその解析を進めてきた。本研究では動物個体レベルにおいてこれら酵素が持つ生物学的意義を明らかにするとともに、その標的分子同定技術の開発を通じて個体から分子レベルでのリン脂質分子の機能発現機構の解明を目指す。
①LPLAT7/LPGAT1に関して欠損マウスを用いた解析から網膜組織の維持に必須の因子であることを明らかにした。最終年度では脂肪組織に着目した解析を行なった。脂肪組織の中でも褐色脂肪組織において、マウスを寒冷ストレスに暴露することでLPLAT7が発現上昇した。またLPLAT7がその産生に関わるステアリン酸含有リン脂質の増加が誘導された。脂肪組織特異的LPLAT7欠損マウスを用いて解析を進めると欠損マウスでは褐色脂肪組織において脂肪蓄積が抑制される傾向を認めた。また白色脂肪組織においても寒冷刺激時のベージュ化が抑制される傾向にあることを見出した。これらからLPLAT7は寒冷刺激時にステアリン酸含有リン脂質を産生することで脂肪組織において機能を持つ可能性が示唆された。②アルキン脂肪酸やアジド脂肪酸を培養細胞に添加し、クリック反応により蛍光団を付与することで細胞レベルでの可視化を試みた。特に各種LPLAT発現細胞においてはその発現部位である小胞体にシグナルが観察され、LPLATによる脂肪酸の導入の可視化に成功した。特にLPLAT7発現細胞では小胞体の中でも3-way-junctionと呼ばれる小胞体の網目構造が交差する部位で強いシグナルが観察されたことからLPLAT7の小胞体における機能的部位が明らかとなった。③新規PLA分子探索の過程で見出したPAQRファミリー分子は過剰発現細胞において顕著なリゾリン脂質の増加を誘導した。最終年度はさらに詳細なリン脂質の解析を行なった。その結果、過剰発現細胞や発現抑制細胞ではリン脂質の脂肪酸分子種の変化も観察された。その変化はPAQRファミリー分子ごとに異なっており、特定のファミリー分子が特定のリン脂質分子種の形成に関わることが判明した。PAQRファミリー分子はリン脂質の脂肪酸部を規定する重要なリモデリング因子であることが明らかとなった。
すべて 2024 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (7件)
Nature Communications
巻: 15 号: 1 ページ: 902-902
10.1038/s41467-024-45046-z
CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN
巻: 71 号: 7 ページ: 584-615
10.1248/cpb.c23-00250
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 号: 7 ページ: 104848-104848
10.1016/j.jbc.2023.104848
PLOS ONE
巻: 18 号: 1 ページ: e0280448-e0280448
10.1371/journal.pone.0280448
Molecules
巻: 27 号: 8 ページ: 2487-2487
10.3390/molecules27082487
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 602 ページ: 70-76
10.1016/j.bbrc.2022.02.098
Scientific reports
巻: 12 号: 1 ページ: 7312-7312
10.1038/s41598-022-11002-4
Journal of Lipid Research
巻: 63 号: 10 ページ: 100271-100271
10.1016/j.jlr.2022.100271
巻: 13 号: 1 ページ: 6020-6020
10.1038/s41467-022-33735-6