研究課題/領域番号 |
22K15277
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 翔大 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (80880294)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 心筋再生 / 脂肪酸代謝 / ミトコンドリア / マイトファジー / ミトコンドリア形態 |
研究開始時の研究の概要 |
心疾患は不可逆的に進行するため予後が非常に悪いことが知られているが、これは心筋細胞の増殖能が極めて低く、傷害を受けた心筋組織が修復されないことに起因する。そのため、心疾患の根本的な治療には心筋細胞増殖のメカニズム解明が不可欠である。哺乳類の心筋細胞は出生後直ちに増殖能を失うが、その原因の1つとしてミトコンドリアの成熟に伴う酸化ストレスの増大が挙げられる。そこで本研究では、ミトコンドリア形態やマイトファジーの制御が、ミトコンドリアの品質改善と酸化ストレスの低減を誘導し、さらには心筋細胞の増殖を活性化させるかを調べる。
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研究実績の概要 |
本研究は、エネルギー産生系の変化によるミトコンドリアの機能と品質の変化が心筋細胞増殖能の喪失につながるという仮説の下で行っている。2022年度の研究において、遊離脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸の等量混合物)により、心筋細胞の増殖が抑制されること、ならびに心筋細胞の増殖を促進させる転写共役因子であるYAPを過剰発現させると遊離脂肪酸添加による脂肪酸代謝酵素の発現増加が抑制されることを明らかにしている。 2023年度の研究において、脂肪酸代謝にかかわる転写酵素であるPPARδが心筋細胞における脂肪酸代謝酵素の発現増加や増殖の抑制に関わっていることを明らかにした。酸化ストレスによるDNA損傷は心筋細胞の増殖を止める主要な要因の一つであると考えられている。しかし、脂肪酸による刺激では酸化ストレスを増加させたものの、PPARδの阻害剤はその酸化ストレス増加を抑制せず、PPARδの活性化剤は酸化ストレスを増加させなかった。このことから、脂肪酸による酸化ストレスの増加は、増殖抑制につながる主要な原因ではないと考えられる。そこで脂肪酸やPPARδ活性化剤により特に大きな発現増加が認められたPDK4とHMGCS2に着目した。これらの過剰発現は互いの発現やβ酸化に関わる酵素の発現を増加させることなく心筋細胞の増殖を抑制させた。この結果から、PDK4とHMGCS2は互いに独立したメカニズムで、β酸化とは無関係に細胞増殖を抑制している可能性が考えられる。 今後はPDK4ならびにHMGCS2がどのようなメカニズムで心筋細胞の増殖を誘導するのかについての解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸による心筋細胞の増殖抑制に、PPARδの活性化、ならびにその下流に存在するPDK4とHMGCS2の発現増加が関与していることを示唆する結果が得られたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
PDK4とHMGCS2はミトコンドリアに局在するエネルギー代謝系の酵素であるため、これらの過剰発現がミトコンドリアの機能に影響を与えた結果、心筋細胞の増殖を抑制した可能性が考えられる。しかし、PDK4とHMGCS2の過剰発現は酸化ストレスの産生を増加させなかったことから、ミトコンドリア以外に影響を与えている可能性も十分考えられる。例えば、PDK4とHMGCS2はどちらもアセチルCoAが関わっていることから、これらのタンパク質の過剰発現が細胞内タンパク質のアセチル化に影響を与えている可能性なども考えられる。そのため、今後は、ミトコンドリアの品質や機能に対する解析を行いつつ、その他の細胞小器官などにも着目して研究を行う予定である。
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