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SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS2領域を認識する中和抗体の探索

研究課題

研究課題/領域番号 22K15284
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
研究機関東京理科大学

研究代表者

山本 雄一朗  東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (00907412)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードSARS-CoV-2 / スパイクタンパク質 / S2 subunit / 中和抗体
研究開始時の研究の概要

世界的に流行している新型コロナウイルス感染症COVID-19ではワクチン開発が成功しているものの、次々と遺伝子変異株が出現し、免疫逃避能を持つとされているワクチン耐性変異株に効果を示す中和抗体の開発が急務とされている。我々はこれまでにワクチン耐性変異部位とは異なる領域をエピトープとする新規の中和抗体を同定している。本研究では新規エピトープを持つSARS-CoV-2中和抗体によるスパイクタンパク質の認識機構を詳細に解析し、感染阻害活性の発現メカニズムを明らかにすることを試みる。

研究実績の概要

昨年度までの成果として,本研究申請時点で樹立していた抗RBD抗体CvMab-6,抗S2抗体CvMab-62の武漢型及び変異型シュードタイプウイルスに対する中和活性と3量体スパイクタンパク質への結合親和性を評価し,CvMab-62が武漢型シュードタイプウイルスにおいてCvMab-6よりも中和活性が高いこと,武漢株およびオミクロン株3量体スパイクタンパク質との結合親和性が高いことを明らかにした.本年度は,CvMab-62のSARS-CoV-2に対する感染阻害活性を評価し,起源株に対して高濃度であるが中和活性が認められた.さらに,CvMab-62のスパイクタンパク質への結合親和性に着目し,抗S2抗体を基本とした抗体カクテルの中和活性を評価した.その結果,構成抗体単独と比較して中和活性の向上は認められなかった.CvMab-62のエピトープを同定するために,S2領域における部分欠失変異体を作製し,CvMab-62による結合力をウェスタンブロット法にて解析したところ,ステムヘリックス領域よりも上流のサブドメイン3領域内(residues; 1123-1148)がCvMab-62のエピトープ部位であることが示された.詳細な解析により,多くの抗S2抗体の共通エピトープ残基1149-1162位には結合しないことが示された.これらの結果より,CvMab-62のエピトープ部位が新規であることが考えられる.表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて,CvMab-62とBA.4/5,BQ.1.1の3量体スパイクタンパク質細胞外ドメイン間の結合強度をpH7.4,pH5.5の条件下で評価した.その結果,CvMab-62 は2つの条件下において強力で安定した結合能を示した.つまり,CvMab-62がエンドソーム内環境下においても,抗原抗体相互作用を維持することが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

S2領域を新規エピトープに持つSARS-CoV-2中和抗体に着目し,その抗体によるスパイクタンパク質の認識機構を詳細に解析し,感染阻害活性の発現メカニズムを明らかにすることが本研究の目的である.本年度は,CvMab-62のSARS-CoV-2における中和活性を評価し,高濃度であるが中和活性があることを明らかにした.さらに,エピトープ解析では,これまでの抗S2抗体で報告されているエピトープ部位には結合しないことが示され,新規のエピトープであることを明らかにした.SPR解析により,CvMab-62がBA.4/5,BQ.1.1のスパイクタンパク質細胞外ドメインとの間で安定した結合能を示した.興味深いことに,エンドソームのような酸性環境下でも高い結合能を維持することを明らかにした.したがって,抗S2抗体によるスパイクタンパク質の認識機構の解析は予定通り進捗しているものと考えられ,本研究はおおむね順調に進展していると評価した.

今後の研究の推進方策

CvMab-62のSARS-CoV-2スパイクタンパク質への結合能と感染阻害活性の関連については現時点で不明である.したがって,CvMab-62の結合がプロテアーゼによるスパイクタンパク質の切断に与える影響を生化学的に解析し,阻害する感染過程を同定する.本年度,CvMab-62のエピトープ部位を同定したが連続したアミノ酸からなる一次構造としてのリニアエピトープであるため,X線結晶構造解析により,CvMab-62とエピトープとの結合様式を立体構造学的に解析する予定である.

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] SARS-CoV-2 Spike Protein Mutation at Cysteine-488 Impairs Its Golgi Localization and Intracellular S1/S2 Processing2022

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Y, Inoue T, Inoue M, Murae M, Fukasawa M, Kaneko MK, Kato Y, Noguchi K.
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 23 号: 24 ページ: 15834-15834

    • DOI

      10.3390/ijms232415834

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Direct Inhibition of SARS-CoV-2 Spike Protein by Peracetic Acid2022

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Yuichiro、Nakano Yoshio、Murae Mana、Shimizu Yoshimi、Sakai Shota、Ogawa Motohiko、Mizukami Tomoharu、Inoue Tetsuya、Onodera Taishi、Takahashi Yoshimasa、Wakita Takaji、Fukasawa Masayoshi、Miyazaki Satoru、Noguchi Kohji
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 号: 1 ページ: 20-20

    • DOI

      10.3390/ijms24010020

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] SARS-CoV-2スパイクタンパク質S2領域を標的とする二重特異性中和抗体の作製2023

    • 著者名/発表者名
      山本雄一朗,井上徹哉,村江真奈,中村優子,小川基彦,深澤征義,金子美華,加藤幸成,野口耕司
    • 学会等名
      第1回新型コロナウイルス研究集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2スパイクタンパク質を標的とする二重特異性中和抗体の創出2023

    • 著者名/発表者名
      井上徹哉,山本雄一朗,佐藤薫,中村優子,清水芳実,小川基彦,深澤征義,金子美華,加藤幸成,野口耕司
    • 学会等名
      第22回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2スパイクタンパク質S2領域を標的とする二重特異性中和抗体の作製2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤薫,井上徹哉,山本雄一朗,中村優子,清水芳実,小川基彦,深澤征義,金子美華,加藤幸成,野口耕司
    • 学会等名
      第67回日本薬学会関東支部大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 二重特異性抗体によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の機能阻害2023

    • 著者名/発表者名
      山本雄一朗,井上徹哉,村江真奈,中村優子,小川基彦,深澤征義,金子美華,加藤幸成,野口耕司
    • 学会等名
      第70回日本ウイルス学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Discovery of the middle-sized compounds inhibiting the SARS-CoV-2 viral entry, using in silico approach and NMR analysis2023

    • 著者名/発表者名
      Mariko YOKOGAWA,Mahoro HORIUCHI,Shunki KANEICHI,Taiga OTAKE,Tomoki YONEZAWA,Yugo SHIMIZU,Kazuyoshi IKEDA,Yuichiro YAMAMOTO,Shota SAKAI,Kohji NOGUCHI,Masayoshi FUKASAWA,Masanori OSAWA
    • 学会等名
      CBI学会2023年大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] SARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合してSARS-CoV-2の侵入を阻害する化合物の創製2023

    • 著者名/発表者名
      金一駿希,横川真梨子,堀内まほろ,大竹帝河,米澤朋起,清水祐吾,池田和由,山本雄一朗,酒井祥太,野口耕司,深澤征義,大澤匡範
    • 学会等名
      第62回NMR討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] hACE2に結合してSARS-CoV-2の侵入を阻害する化合物の創製2023

    • 著者名/発表者名
      横川真梨子,堀内まほろ,金一駿希,大竹帝河,米澤朋起,清水祐吾,池田和由,山本雄一朗,酒井祥太,野口耕司,深澤征義,大澤匡範
    • 学会等名
      第62回NMR討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2 スパイクタンパク質に対する広域中和二重特異性抗体の創出2023

    • 著者名/発表者名
      井上徹哉,山本雄一朗,佐藤薫,中村優子,清水芳実,小川基彦,深澤征義,金子美華,加藤幸成,野口耕司
    • 学会等名
      第2回日本抗体学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2スパイクタンパク質S2領域を標的とする二重特異性中和抗体の作製2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤 薫,井上 徹哉,山本 雄一朗,中村 優子,清水 芳実,小川 基彦,深澤 征義,金子 美華,加藤 幸成,野口 耕司
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 分子動力学計算を用いたSARS-CoV-2 Spikeタンパク質の揺らぎ変化2023

    • 著者名/発表者名
      中野義雄, 近藤洋介, 山本雄一朗, 野口耕司, 宮崎智.
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2 スパイクタンパク質のC488変異は細胞内局在とプロセシングに影響する2023

    • 著者名/発表者名
      古川未悠, 山本雄一朗, 井上徹哉, 村江真奈, 深澤征義, 野口耕司.
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2 スパイクタンパク質S2領域を標的とする二重特異性中和抗体の探索2023

    • 著者名/発表者名
      井上徹哉, 山本雄一朗, 村江真奈, 中村優子, 小川基彦, 深澤征義, 金子美華, 加藤幸成, 野口耕司.
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] COVID-19の原因となるタンパク質-タンパク質相互作用を標的とする合成中分子阻害剤のインシリコスクリーニング2023

    • 著者名/発表者名
      米澤朋起, 清水祐吾, 池田和由, 山本雄一朗, 野口耕司, 酒井祥太, 深澤征義, 横川真梨子, 大澤匡範.
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] NMRを活用したSARS-CoV-2スパイクタンパク質とhACE2の相互作用を標的とするSARS-CoV-2侵入阻害化合物の分子設計2023

    • 著者名/発表者名
      横川真梨子, 堀内まほろ, 金一駿希, 大竹帝河, 米澤朋起, 清水祐吾, 池田和由, 山本雄一朗, 酒井祥太, 野口耕司, 深澤征義, 大澤匡範.
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 新型コロナウイルスSARS-CoV-2スパイクタンパク質阻害剤の探索2022

    • 著者名/発表者名
      小林明日香, 祝部真澄, 山本雄一朗, 村江真奈, 清水芳実, 酒井祥太, 深澤征義, 米澤朋起, 清水祐吾, 池田和由, 横川真梨子, 大澤匡範, 野口耕司.
    • 学会等名
      第34回微生物シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2に対する過酢酸の消毒効果の分子メカニズムの解析2022

    • 著者名/発表者名
      山本雄一朗, 村江真奈, 清水芳実, 酒井祥太, 小川基彦, 井上徹哉, 中野義雄, 宮崎智, 深澤征義, 野口耕司.
    • 学会等名
      日本防菌防黴学会第49回年次大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS2領域を認識する二重特異性中和抗体の探索2022

    • 著者名/発表者名
      井上徹哉, 山本雄一朗, 村江真奈, 中村優子, 小川基彦, 深澤征義, 金子美華, 加藤幸成, 野口耕司.
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] SARS-CoV-2 スパイクタンパク質S2領域を標的とするバイスペシフィック中和抗体の作製2022

    • 著者名/発表者名
      井上徹哉 , 山本雄一朗, 村江真奈, 中村優子, 小川基彦, 深澤征義, 金子美華, 加藤幸成, 野口耕司.
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会/日本生物物理学会共催
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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