研究課題/領域番号 |
22K15289
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
孫 雨晨 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 研究員 (60818904)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 薬剤性間質性肺炎 / キヌレニン代謝経路 / バイオマーカー / キヌレニン経路 / LC/MS |
研究開始時の研究の概要 |
薬剤性間質性疾患(DILD)は医薬品による重篤副作用の一種であり、本邦における医薬品の適正使用において極めて重大な問題となっている。これまでに我々は血中メタボロミクス解析により、キヌレニン経路(KP)代謝物が新規DILDバイオマーカーになりうることを示した。そこで、本研究はDILDの非侵襲的な診断に利用可能な新規バイオマーカーの開発に向けて、DILD患者由来尿検体におけるKP代謝物の定量手法を開発し、DILDの非侵襲的診断におけるそれら代謝物の有用性を多角的に評価する。また、これと並行して、肺におけるKP代謝物の産生機序や肺構成細胞に対するその生理的役割を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では薬剤性間質性肺炎(DILD)に対する非侵襲的な新規バイオマーカー分子の同定を目的として、尿中のキヌレニン経路代謝物に着目したバイオマーカー開発を実施している。 本年度は、肺の細胞におけるキヌレニン経路活性化の生理的意義の解明に向けて、先行論文でキヌレニン経路の律速代謝酵素であるIDO1の発現が炎症で誘導されることを報告した肺毛細血管内皮細胞を用いて、キヌレニンを曝露した際に発現変動する遺伝子をRNAシークエンス解析により網羅的に解析した。その結果、グルタチオン合成に関わるトランスポーターであるSLC7A11の発現がキヌレニン曝露により有意に上昇することが明らかとなった。また、qPCRを用いた検証試験では、当該トランスポーターの上昇に加え、複数の抗酸化ストレス遺伝子の発現がキヌレニン曝露により上昇することを見出した。さらに、キヌレニン曝露により細胞内の総グルタチオン量が増加する結果を得た。次に、キヌレニンについて、酸化ストレス関連細胞死の一種であるフェロトーシスに対する保護効果を検証するために、フェロトーシス誘発剤であるエラスチン(SLC7A11阻害剤)とキヌレニンを共曝露した際の細胞死を解析した。その結果、キヌレニン曝露によりエラスチン誘発性フェロプトーシスを抑制可能であることが示された。これら試験に加え、細胞フリーアッセイ系を用いて、キヌレニン経路代謝物の一部が、ヒドロキシラジカルの除去能を有することを見出した。以上、本年度の検討により、薬剤性間質性肺炎時に上昇するキヌレニン経路代謝物は、グルタチオン合成の促進や抗酸化関連遺伝子の発現誘導、さらに当該化合物自身のラジカル除去能によりフェロプトーシスの発生を抑制し、細胞保護効果を有する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の結果、これまで薬剤性間質性肺炎では着目されてこなかったキヌレニン経路の抗酸化活性による生体防御機構に対する新規データを得ることができ、それら代謝物の薬剤性間質性肺炎における生理的役割の解明に一歩近づくことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、in vitro試験で見出されたキヌレニン代謝を介した酸化ストレス防御機構のさらなる詳細の解析のために、間質性肺炎モデルラットを用いた遺伝子発現解析や、代謝物測定解析を実施する予定である。
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