研究課題/領域番号 |
22K15295
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
中村 吉伸 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (60880317)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | SLCO2A1 / Maxi-Cl / トランスポーター / チャネル / プロスタグランジン |
研究開始時の研究の概要 |
生体恒常性維持に必須なイオンの細胞膜透過を担うトランスポーターとチャネルは構造、性質的に似て非なる膜タンパク質である。近年、単独ではプロスタグランジントランスポーターとして働くSLCO2A1が、複数タンパク質と複合体を形成しATP等を輸送するMaxi-Clチャネルとして機能することが報告された。しかしその詳細なチャネル活性発現機構は不明である。本研究では、Maxi-Cl複合体の全容を明らかにし、SLCO2A1がトランスポーター/チャネル両機能を使い分ける機構を解明する。またチャネル活性を有する他のSLCO分子を探索する。本成果は分子的実体の全容が未同定なチャネルの解明に繋がると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究では、プロスタグランジン (PG) トランスポーターおよびMaxi-Clチャネルの二重機能を持つことが近年新たに明らかとなったSLCO2A1について、その活性発現機構と生理学的意義の解明、さらにはチャネル活性を有する他SLCO分子の探索を目的に研究を行っている。2023年度は、2022年度に引き続きSLCO2A1のトランスポーター/チャネル活性使い分け機構の解明を目的に研究を行った。SLCO2A1のチャネル活性が報告されたマウス乳腺由来C127細胞およびヒトSLCO2A1強制発現HEK293細胞を用いた検討の結果、低張刺激はMaxi-Clを活性化し、ATP放出を引き起こすが、PGE2の輸送活性には影響しないことを見出した。また、遺伝子欠損細胞を用いた検討により、Maxi-Cl活性化に必須なアクセサリータンパク質ANXA2/S100A10はSLCO2A1のチャネル活性だけでなく、PGE2輸送機能も調節することが示された。また、免疫沈降実験により、低張刺激は少なくともSLCO2A1とANXA2のタンパク質間相互作用には影響しないことを見出した。以上の結果より、SLCO2A1は刺激前からANXA2/S100A10と複合体を形成しており、低張刺激時にはMaxi-Clとして活性化すると同時にPGE2も輸送することが示唆された。本成果はAm J Physiol Cell Physiolにて報告した。 このほか2023年度は、複数のヒトSLCO分子種をそれぞれ安定発現させたHEK293細胞を構築し、これらを用いて、パッチクランプ法により低張刺激により生じる電流を測定した。その結果、ヒトSLCO2A1発現細胞では、vectorのみをトランスフェクションした細胞に比べて有意に大きい電流が観察された。さらに予備的な結果であるが、ヒトSLCO2A1と類似した電流を示すヒトSLCO分子が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Maxi-Cl活性化に必須な低張刺激およびアクセサリータンパク質がSLCO2A1のPG輸送に及ぼす影響、およびSLCO2A1とアクセサリータンパク質の相互作用について一部を明らかにし、原著論文を報告するに至ったため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はSLCO2A1がPG輸送とMaxi-Clチャネルの二重活性を有する生理学的な意義を明らかにするため、チャネル活性化刺激の一つである虚血や低酸素に着目し、脳梗塞の進展におけるSLCO2A1の役割について研究を展開する。さらに、予備的にチャネル活性が観察されたSLCO分子について、詳細な解析を行う予定である。
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