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非内因性経路に着目した植物由来サポニンのアポトーシス誘導メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K15306
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
研究機関東京薬科大学

研究代表者

井口 巴樹  東京薬科大学, 薬学部, 助教 (90847120)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードSaponaria officinalis / ‘Globemaster’ / Allium atropurpureum / トリテルペン配糖体 / ステロイド配糖体 / 腫瘍細胞毒性 / アポトーシス誘導活性 / 構造決定 / 天然物 / アポトーシス / 小細胞肺がん / 非内因性経路 / サポニン / がん
研究開始時の研究の概要

本研究では、新規がん治療薬の開発を目指し、新規サポニンの非内因性アポトーシス誘導メカニズムを明らかにするとともに構造活性相関の知見を収集する。本研究に先立って見出された植物由来の新規サポニンは、非内因性経路でアポトーシスを誘導することが示唆され、現存するがん治療薬とは異なる作用メカニズムを有している可能性が考えられた。非内因性アポトーシス誘導経路のうち、小胞体ストレスが要因となる作用メカニズムの医薬品は、現在のところ存在しない。本研究は、既存の治療薬が奏功しないがんや再発がんなど、治療薬の選択肢が十分でないがん治療の課題解決に向けた成果をもたらすことが期待される。

研究実績の概要

植物由来サポニンの腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導活性メカニズムの解明を目的に、Saponaria officinalis種子から単離された新規トリテルペン配糖体について、トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、新規トリテルペン配糖体で処理したSBC-3ヒト小細胞肺がん細胞においてNF-kappa Bシグナル伝達経路、TNFシグナル伝達経路、およびアポトーシス誘導経路などにかかわる遺伝子の発現上昇が認められた。今後、これらの遺伝子に関連するタンパク質の発現を検証していく予定である。
非内因性経路を介して腫瘍細胞をアポトーシスに誘導するサポニンを探索することを目的に、複数の植物の成分探索ならびに腫瘍細胞毒性の評価を行った。その結果、Allium cristophii×A. macleanii ‘Globemaster’鱗茎から新規10種の、A. atropurpureum鱗茎から新規6種の、Ornithogalum thyrsoides鱗茎から新規21種のステロイド配糖体をそれぞれ単離、構造決定した。それぞれの植物から単離された化合物について、SBC-3細胞に対する細胞毒性を評価したところ、IC50 0.00014-49μMの範囲で細胞毒性を示した。さらに、O. thyrsoides鱗茎から単離された化合物については、HL-60ヒト白血病細胞に対する細胞毒性を評価し、IC50 0.000086-18μMの範囲で細胞毒性を示すことを明らかとした。O. thyrsoides鱗茎から単離された新規ステロイド配糖体について、腫瘍細胞毒性メカニズムを検討した。その結果、当該化合物でHL-60細胞を処理した場合には、アポトーシスの誘導が認められたのに対し、SBC-3細胞を処理した場合にはネクローシス様の形態変化が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は、S. officinalis種子から単離された新規トリテルペン配糖体のアポトーシス誘導活性メカニズムの解明を目的に、新規トリテルペン配糖体で処理したSBC-3細胞についてトランスクリプトーム解析を実施した。その結果、NF-kappa Bシグナル伝達経路、TNFシグナル伝達経路、およびアポトーシス誘導経路などにかかわる遺伝子の発現上昇が認められた。
さらに、非内因性経路を介して腫瘍細胞をアポトーシスに誘導するサポニンを探索することを目的に、複数の植物の成分探索ならびに腫瘍細胞毒性の評価を行った。各植物から得たメタノール抽出エキスについて、順相および逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを用いて繰り返し分離、精製を行った。その結果、A. cristophii×A. macleanii ‘Globemaster’鱗茎から新規10種を含む計27種のステロイド配糖体を、A. atropurpureum鱗茎から新規6種を含む計9種のステロイド配糖体を、O. thyrsoides鱗茎から新規21種を含む計35種のステロイド配糖体をそれぞれ単離した。単離された化合物の構造を、2次元核磁気共鳴スペクトルを中心とした各種スペクトルの解析により決定した。さらに、単離された化合物について腫瘍細胞毒性を評価したところ、研究実績の概要で記述したIC50を示すことを明らかにした。また、O. thyrsoides鱗茎から単離された新規ステロイド配糖体について、腫瘍細胞毒性メカニズムを検討した。その結果、当該化合物でHL-60細胞を処理した場合には、アポトーシス関連タンパク質であるcaspase-8、-9、-3の活性化が認められたのに対し、SBC-3細胞を処理した場合にはネクローシス様の形態変化が観察された。当該化合物は、腫瘍細胞によって細胞死メカニズムが異なることが示唆された。

今後の研究の推進方策

2024年度は、以下の項目を重点的に研究する予定である。
1)S. officinalis種子から単離された新規トリテルペン配糖体のアポトーシス誘導メカニズムを明らかにする。トランスクリプトーム解析において、発現が上昇した遺伝子に関連するタンパク質の発現をウエスタンブロット法やフローサイトメトリーを用いて検討する。また、新規トリテルペン配糖体で処理したSBC-3細胞についてメタボローム解析を実施し、アポトーシスが誘導された際の細胞内代謝物の変化についても検討する。
2)O. thyrsoides鱗茎から単離された新規ステロイド配糖体について、HL-60細胞に対するアポトーシス誘導活性の詳細を明らかにするとともに、SBC-3細胞に対する細胞死メカニズムを検討する。具体的には、アポトーシス阻害剤やネクローシス阻害剤などの各種阻害剤を用いて細胞死の様式を明らかにしたのち、その細胞死に関連する種々のシグナルの発現について検討することを予定している。
3)サポニンを含有することが推測される植物抽出エキスについてアポトーシス誘導活性を評価する。アポトーシス誘導活性が認められた植物について、各種カラムクロマトグラフィー等を用いて詳細に成分探索を実施するとともに、単離された化合物の構造を明らかにする。単離された化合物の腫瘍細胞毒性を評価し、非内因性経路でアポトーシスを誘導することが示唆された化合物については、より詳細にメカニズムを解明する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Steroidal glycosides from Ornithogalum thyrsoides bulbs and their cytotoxicity toward HL-60 human promyelocytic leukemia cells and SBC-3 human small-cell lung cancer cells2024

    • 著者名/発表者名
      Shimazaki Tamami、Iguchi Tomoki、Takahashi Naoki、Sano Yukako、Nakamura Kaito、Mimaki Yoshihiro
    • 雑誌名

      Phytochemistry

      巻: 219 ページ: 113985-113985

    • DOI

      10.1016/j.phytochem.2024.113985

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Six unprecedented steroidal glycosides from Allium atropurpureum bulbs and their cytotoxicities against SBC-3 human small-cell lung cancer cells2023

    • 著者名/発表者名
      Shimazaki Tamami、Iguchi Tomoki、Kanda Aki、Yamamoto Kie、Takahashi Naoki、Mimaki Yoshihiro
    • 雑誌名

      Phytochemistry Letters

      巻: 57 ページ: 200-209

    • DOI

      10.1016/j.phytol.2023.08.017

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Determination of Structure and Cytotoxicity of Ten Undescribed Steroidal Glycosides from Allium cristophii × A. macleanii ‘Globemaster’2023

    • 著者名/発表者名
      Shimazaki Tamami、Iguchi Tomoki、Takahashi Yuna、Yamamoto Kie、Takahashi Naoki、Mimaki Yoshihiro
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 28 号: 17 ページ: 6248-6248

    • DOI

      10.3390/molecules28176248

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structure elucidation of 16 undescribed steroidal glycosides from the underground parts of Agapanthus africanus and apoptosis-inducing activity in small-cell lung cancer cell2023

    • 著者名/発表者名
      Takahashi N., Iguchi T., Nagamine A., Shirai R., Nagata A., Yamauchi J., Mimaki Y.
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 8 号: 2 ページ: 2808-2830

    • DOI

      10.1021/acsomega.2c07766

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Novel Oleanane-Type Triterpene Glycosides from the Saponaria officinalis L. Seeds and Apoptosis-Inducing Activity via Mitochondria2022

    • 著者名/発表者名
      Takahashi N., Iguchi T., Kuroda M., Mishima M., Mimaki Y.
    • 雑誌名

      Int. J. Mol. Sci.

      巻: 23 号: 4 ページ: 2047-2047

    • DOI

      10.3390/ijms23042047

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Phenolic compounds from the underground parts of Eremurus robustus and their cytotoxicity2022

    • 著者名/発表者名
      Iguchi T., Kuroda M., Morita H., Mimaki Y.
    • 雑誌名

      Jpn. J. Pharmacog.

      巻: 76 ページ: 45-46

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] ユリ科 Allium atropurpureum 鱗茎から単離されたステロイド配糖体の化学構造 と腫瘍細胞毒性2023

    • 著者名/発表者名
      島﨑 珠美, 井口 巴樹, 神田 明紀, 山本 貴恵, 高橋 直煕, 三巻 祥浩
    • 学会等名
      日本生薬学会第69回年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ユリ科 Ornithogalum thyrsoides 鱗茎から単離された新規コレスタン型ステロイ ド配糖体の化学構造と腫瘍細胞毒性2023

    • 著者名/発表者名
      高橋 直熙, 井口 巴樹, 中村 凱士, 佐野 友佳子, 三巻 祥浩
    • 学会等名
      日本生薬学会第69回年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ナデシコ科サボンソウ Saponaria officinalis 種子から単離されたトリテルペン配糖体の構造とアポトーシス誘導活性2023

    • 著者名/発表者名
      第65回天然有機化合物討論会
    • 学会等名
      高橋直熙,井口巴樹,黒田明平,白井玲美奈,三島正規,山内淳司,三巻祥浩
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Ornithogalum thyrsoides鱗茎から単離された21種の新規ステロイド配糖体の構造と腫瘍細胞毒性2023

    • 著者名/発表者名
      井口巴樹,高橋直熙,島﨑珠美,中村凱士,佐野友佳子,三巻祥浩
    • 学会等名
      第24回天然薬物の開発と応用シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ユリ科 Agapanthus africanus 地 下 部 か ら 単 離 さ れ た 新 規 ステロイド配糖体 の構造と SBC-3 ヒ ト 小 細 胞 肺 が ん 細 胞 に対する ア ポ ト ー シ ス 誘 導 活 性2022

    • 著者名/発表者名
      高橋直熙,井口巴樹,永峯杏樹,横須賀章人,三巻祥浩
    • 学会等名
      日本生薬学会第68回年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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