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肺がん転移時の間葉上皮転換過程における薬剤耐性の変動とそのメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K15345
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分47060:医療薬学関連
研究機関東京理科大学 (2023)
高崎健康福祉大学 (2022)

研究代表者

張 協義  東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, プロジェクト研究員 (60878510)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード上皮間葉転換 / 間葉上皮転換 / 多剤耐性 / 足場タンパク質 / P-糖タンパク質 / 薬物排出系トランスポーター / 転写調節因子 / 足場タンパク
研究開始時の研究の概要

がん転移は原発巣の上皮系がん細胞が間葉系がん細胞へと形質転換する現象EMTと、その間葉系がん細胞が転移先の組織に定着して上皮系細胞に戻る現象METの2段階のプロセスにより成立する。我々はすでに、EMTを惹起した肺がん細胞においては薬物排出TPの活性が上昇し、がん細胞の薬剤耐性が亢進することを明らかにしている。本研究では、EMTの誘導に伴って亢進したがん細胞の排出系TPの機能が、METを誘導した時にも保持されているのか、あるいは変動するのかを明らかにすること、およびそのメカニズムを解明し、がん細胞転移時のEMT/METの一連の過程における薬剤耐性の変動を明らかにすることを目的とする。

研究実績の概要

がんの転移は、原発巣の上皮細胞が間葉細胞に形質転換する現象(EMT)と、転移先の組織に定着して上皮細胞に戻る現象(MET)の2段階のプロセスにより成立する。腫瘍の転移は多剤耐性(MDR)に関与することが知られている。MDRの原因の一つは、P-糖タンパク質(P-gp)などの薬物排出系トランスポーターの発現の増加である。一方、薬物排出系トランスポーターの発現にはそのトランスポーターを細胞膜上に固定する足場タンパク質が重要であり、肺がんではEzrin(Ezr)とMoesin(Msn)がP-gpの足場タンパク質であることが知られている。本研究では、EMT/MET誘導肺がん細胞においてP-gpの機能変化およびそのメカニズムを解明することを目的とした。
HCC827肺がん細胞をSnailまたはDexamethasone(DEX)で処理し、EMTおよびMETを誘導した。また、Snail処理後のDEX処理によって連続的にEMTとMETを誘導した。RT-PCRによるmRNA発現を定量し、膜タンパク質をWestern Blottingによって定量した。さらにRhodamine123を用いて活性を、Paclitaxelを用いて毒性を検討した。
EMTの場合、MsnのmRNAとタンパク質発現が増加し、P-gpの膜発現と活性が上昇した。METの場合、EzrとP-gpのmRNAおよび膜発現は増加し、P-gpの活性が上昇した。両方を誘導した場合、P-gpの膜発現はより顕著に上昇した。すなわち、EMTにおけるP-gpの活性はMsnによって制御され、METにおけるP-gpの活性はEzrによって制御されている可能性が示唆された。また、これらの制御は、EMT/METを連続的に誘導したとき相乗的であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は当初の計画通り、「あらかじめ転写調節因子のプラスミドDNAを導入してEMTを誘導したHCC82細胞を用いて、MET誘導因子をHCC827細胞に添加・導入して、P-gpのmRNAおよび細胞内総タンパク質発現量、活性を測定する。細胞内総タンパク質量が変動しないにも関わらず活性が上昇する場合は、P-gpの細胞膜画分におけるタンパク質量および足場タンパク質のmRNA量を測定する」した。我々は、EMTおよびMET両方を誘導した場合、P-gpの膜発現はより顕著に上昇した。すなわち、EMTにおけるP-gpの活性はMsnによって制御され、METにおけるP-gpの活性はEzrによって制御されている可能性が示唆された。また、これらの制御は、EMT/METを連続的に誘導したとき相乗的であることが示唆された。
DEXを処理したとき、EzrおよびP-gpのmRNA量はコントロールに比べて有意に増加した。RdxおよびMsnのmRNAの発現量には統計学的差異が認められなかった。WBの結果によると、EzrとP-gpのタンパク質膜発現量が有意に増加した。さらに、P-gpの機能を評価した。P-gpの蛍光基質Rho123のEfflux実験および基質Paclitaxel添加した細胞生存率実験を行った。METを誘導した肺がん細胞のRho123排出率がコントロールと比べて有意に増加した。また、Paclitaxelを加えた時、METを誘導した細胞の細胞生存率はコントロールと比べて有意に増加した。このことから、肺がん細胞におけるP-gpの機能はDEXによって増強された可能性が示唆された。以上の結果を踏まえて、論文を投稿し、発表された。

今後の研究の推進方策

すでに、SnailによるEMT肺がん細胞におけるP-gpが活性化され、それはMsnによって制御されている可能性が示唆された。本研究では、DEXがMETを誘導することができるを確認されて、肺がんにおけるDEX→Ezr→P-gp連関系の存在を明らかにした。DEXによるMET肺がん細胞におけるP-gp発現量と活性が上昇し、それはEzrによって制御されている可能性も示唆された。これまでの結果を踏まえて論文を発表された。
さらに、EMT→MET両方を誘導した場合、P-gpの膜発現はより顕著に上昇した。すなわち、EMTにおけるP-gpの活性はMsnによって制御され、METにおけるP-gpの活性はEzrによって制御されている可能性が示唆された。また、これらの制御は、EMT/METを連続的に誘導したとき相乗的であることが示唆された。
今後、「In vivoの検討においては、マウスの右腋窩線上の横隔膜・腋窩間胸壁に肺がん細胞を注入後、体重の減少を指標に最大10週間飼育観察し、リンパ節転移マウスモデルを作製する(研究計画調書記載)」を進める。さらに、この動物から採取した原発巣および転移巣の細胞を必要に応じて培養し、EMTおよびMETに関わるマーカーの発現差を確認するとともに、排出系TPのmRNA発現量、タンパク質の発現量および活性を測定する。
In VitroとIn Vivoの実験結果を合わせて考察し、論文を作成して投稿する予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Clinical Analysis and <i>in Vitro</i> Correlation of BCRP-Mediated Drug–Drug Interaction in the Gastrointestinal Tract2024

    • 著者名/発表者名
      Perera Liyanage Manosika Buddhini、Okazaki Kenzo、Woo Yunje、Takahashi Saori、Zhang Xieyi、Mizoi Kenta、Takahashi Toshinari、Ogihara Takuo
    • 雑誌名

      Biological & Pharmaceutical Bulletin

      巻: 47 号: 4 ページ: 750-757

    • DOI

      10.1248/bpb.b23-00786

    • ISSN
      0918-6158, 1347-5215
    • 年月日
      2024-04-01
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanism of Induction of P-gp Activity During MET Induced by DEX in Lung Cancer Cell Line2024

    • 著者名/発表者名
      Liu Wangyang、Zhang Xieyi、Sunakawa Hiroki、Perera Liyanage Manosika Buddhini、Martha Larasati、Mizoi Kenta、Ogihara Takuo
    • 雑誌名

      Journal of Pharmaceutical Sciences

      巻: in press 号: 6 ページ: 1674-1681

    • DOI

      10.1016/j.xphs.2024.02.027

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transporter and metabolic enzyme-mediated intra-enteric circulation of SN-38, an active metabolite of irinotecan: A new concept2023

    • 著者名/発表者名
      Martha Larasati、Nakata Akane、Furuya Shinnosuke、Liu Wangyang、Zhang Xieyi、Mizoi Kenta、Ogihara Takuo
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 665 ページ: 19-25

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2023.04.109

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] P-糖タンパク質を介した血液脳関門における薬物-内因性基質相互作用の評価2023

    • 著者名/発表者名
      砂川大樹、髙橋玲子、張協義、塚正彦、古宮淳一、崔吉道、溝井健太、荻原琢男
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 消化管におけるBCRPを介した薬物相互作用の臨床解析とin vitro相関の検討2023

    • 著者名/発表者名
      劉汪洋、岡﨑賢三、髙橋紗織、張協義、溝井健太、荻原琢男
    • 学会等名
      第17回トランスポーター研究会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] The expression of scaffold proteins and efflux transporters in HCC827 lung cancer cells after EMT/MET inducement2023

    • 著者名/発表者名
      Wangyang Liu, Liyanage Manosika Buddhini Perera, Larasati Martha, Xieyi Zhang, Takuo Ogihara
    • 学会等名
      日本薬物動態学会第38回年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] HCC827肺がん細胞の転移におけるP-糖タンパク質および足場タンパク質の変動2023

    • 著者名/発表者名
      劉汪洋、上岡宏規、伴野拓巳、張協義、リヤナゲペレーラマノシカブッディニ、荻原琢男
    • 学会等名
      日本薬剤学会第38年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] EMT/METを誘導したHCC827肺がん細胞におけるP-糖タンパク質の活性変動2022

    • 著者名/発表者名
      劉汪洋、上岡宏規、伴野拓巳、中澤佑太、張協義、リヤナゲペレーラマノシカブッディニ、溝井健太、荻原琢男
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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