研究課題/領域番号 |
22K15360
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
望月 信弥 自治医科大学, 医学部, 助教 (60844032)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 細胞内非小胞輸送 / 膜小器官接触部位 / 脂質輸送 / 小脳発達 / ER contact site / PI4P / 神経細胞 / 細胞分化 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内の膜小器官接触部位ではコレステロールやPI4Pなどの脂質がタンパク質によって輸送される。これら脂質の輸送異常は神経疾患を誘発することが知られているが、その輸送を担う分子機序は不明である。申請者はORP6が小脳に多く発現し、神経細胞内の小胞体と細胞膜との間で異なる脂質の輸送に働くこと、脳の発達に寄与することを発見した。しかしながら、ORP6の生体機能は不明である。そこで本研究では、ORP6による脂質輸送の分子機構およびその生体機能を解明することを目的に、①ORP6が運ぶ脂質を同定する。②神経細胞の生存、分化、移動におけるORP6の役割を解明する。③ORP6欠損マウスの行動を解析する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ORP6による非小胞性脂質輸送の分子機構および生体機能を解明することである。細胞内の膜小器官接触部位ではコレステロールやphosphatidylinositol 4-phosphate (PI4P), phosphatidylserine (PS)などの脂質がタンパク質や小胞によって輸送される。タンパク質での輸送は輸送速度が速く、異なる脂質を独立して輸送することが可能であるが、その輸送を担う分子機序は不明である。申請者は、Oxysterol binding protein-related protein (ORP) 6が小脳や脊髄に多く発現し、神経細胞内の小胞体と細胞膜との間でPI4PやPSの輸送に働くこと、培養神経細胞の生存に寄与すること、小脳顆粒細胞の分化や移動の時期に一致してORP6タンパクの発現量が増加することを発見したが、ORP6が小脳発達に及ぼす影響は不明である。 令和5年度では、培養神経細胞およびIn vivo electroporation法による遺伝子改変動物を用いて小脳発達におけるORP6の機能を、Harmony softwareを用いて自動解析した。分化誘導後の神経細胞において、ORP6発現阻害下では、神経突起の伸長に有意な変化がみられた。加えて、ORP6の細胞膜局在を阻害する変異型ORP6や脂質輸送ドメインを欠失した変異型ORP6の発現下においても同様の変化がみられた。一方で、ORP6全長の発現下では対極の結果が得られた。さらに、小脳顆粒細胞においてORP6発現阻害下では、神経突起伸長や成熟神経細胞の割合に有意な変化がみられ、加えて、神経突起伸長に関わる分子の発現変化を見出した。他方、in vivo electroporation法を用いて任意の遺伝子を小脳に導入することに成功し、ORP6が小脳顆粒細胞の分化に関与する可能性を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ORP6による非小胞性脂質輸送の分子機構および生体機能を解明することである。申請者は、Neuro2A細胞の分化に伴って、あるいは小脳顆粒細胞の分化と移動の時期に一致してORP6の発現量が増加することを発見した。さらに、Harmony softwareを用いた定量的自動解析により、ORP6発現阻害下もしくはORP6の細胞膜局在を阻害する変異型ORP6や脂質輸送ドメインを欠失した変異型ORP6の発現下において、分化誘導後のNeuro2A細胞の突起の長さが変化することを明らかにした。さらに、初代培養小脳顆粒細胞において、ORP6発現阻害下では突起伸長や成熟神経細胞の割合に有意な変化がみられた。これらに加えて、ORP6発現阻害下では、神経突起伸長や分化に関わる分子の発現量が変化することを見出し、ORP6が小脳顆粒細胞の分化に関与する可能性を発見した。他方、In vivo electroporation法を用いて任意の遺伝子を小脳に導入することに成功し、生体内におけるORP6の機能の解明に進展がみられた。令和6年度では、この遺伝子改変動物あるいはコンディショナルノックアウトマウスを用いて小脳発達におけるORP6の役割および脂質代謝との関連を明らかにしていく。
|
今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変動物を用いて以下の実験を行う。 1)小脳神経細胞を分散培養後、transwell migration assayによる移動能の解析を行う。あるいは、切片作製後、免疫染色を用いて顆粒細胞を可視化し、移動や層構造を解析する。 2)プロテオーム解析を用いて、分化や移動に関わる分子の候補を同定する。 3)ORP6の輸送脂質と分化・移動との関連を明らかにするために、輸送脂質の合成阻害剤存在下における小脳顆粒細胞の突起の長さ、成熟神経細胞の割合、transwell migration assayによる移動能を解析する。 4)Beam walking testやRotarodなどを用いて行動を評価する。
|