研究課題/領域番号 |
22K15380
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茂谷 小百合 京都大学, 高等研究院, 特定研究員 (30792428)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | 減数分裂 / 卵母細胞 / カニクイザル / ES細胞 / 試験管内誘導 / 生殖細胞 / 再構成卵巣 |
研究開始時の研究の概要 |
生殖細胞は、PGCに由来する。PGCは、雌性生殖巣においてOG、OCに性分化した後、第一減数分裂期に移行し、出生直前までに細胞分裂前の状態で静止する。現在、カニクイザルPGCLCをOCLCまで試験管内で誘導することが可能であるが、染色体の凝集を伴った第一減数分裂期には至らない。そこで本研究では、サルES細胞由来生殖細胞における出生直前の第一減数分裂状態の再現を目標とする。本年度は、カニクイザルOCLCとE16.5以降のマウス胎児卵巣体細胞との再凝集培養系の確立を試みる。次年度は、マウス腎被膜下移植による分化誘導および、現在の試験管内培養系に不足している減数分裂誘導因子を網羅的に探索する。
|
研究実績の概要 |
生殖細胞系譜は始原生殖細胞に由来する。当研究室では、ヒトiPS細胞を起点として始原生殖細胞様細胞(Primordial germ cell-like cell, PGCLC)へ、さらにPGCLCを胎生期12日目のマウス胎児卵巣体細胞と凝集培養すること(以下、再構成卵巣法)により卵原細胞様細胞へ誘導することに成功しているが、ヒト再構成卵巣法の場合、減数分裂期へ移行した卵母細胞の分化誘導は実現していない。さらにヒトでは、誘導された卵子の受精能及び受精卵の個体発生能を検証することは倫理的に不可能であることから、ヒトに代わるモデル生物での生殖細胞発生過程の試験管内再構成系構築が必要不可欠である。そこで、本研究課題ではヒトと近縁な非霊長類モデルカニクイザルを用いて雌性生殖細胞を試験管内で誘導することを目的とし研究を行った。 本年度は、前年度に構築した「2ステップ再構成卵巣法(1段階目で卵原細胞様細胞へ、2段階目で卵母細胞様細胞へ誘導する方法)」により得られた卵母細胞様細胞の性状解析を行った。まず、1細胞トランスクリプトーム解析により、卵母細胞様細胞は減数分裂初期のカニクイザル胎児卵母細胞と類似の遺伝子発現プロファイルを有していた。また、EM-seq法により全ゲノムメチル化解析を実施したところ、卵原細胞様細胞、卵母細胞様細胞では顕著なDNA脱メチル化状態であることがわかった。さらに、本研究に用いたES細胞由来生殖細胞では、母方由来X染色体は父方由来に比して高いDNAメチル化状態にあること、母方X染色体における脱メチル化とX染色体再活性化の関連性を見出した。そして、ヒト再構成卵巣においても同様の傾向があることが分かった。 以上の成果を前年度の成果と併せて、本年度末国際学術誌に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に構築した「2ステップ再構成卵巣法(1段階目で卵原細胞様細胞へ、2段階目で卵母細胞様細胞へ誘導する方法)」により得られた卵母細胞様細胞の性状解析を行った。まず、卵母細胞様細胞とカニクイザル胎児卵母細胞のトランスクリプトームを1細胞レベルで比較した。その結果、減数分裂初期の卵母細胞と類似の遺伝子発現プロファイルを有していることが分かった。しかしながら、胎児卵巣での減数分裂期進行過程と比べると、再構成卵巣ではLeptotene期で発生が滞る細胞が多い傾向にあった。そこで、卵母細胞様細胞と胎児卵母細胞の発現変動遺伝子を抽出、比較した。その結果、細胞増殖やBMPシグナルに関する遺伝子が卵母細胞様細胞でより発現する傾向にあったことから、これらの遺伝子の発現異常がLeptotene期での停滞に関与する可能性が考えられた。 次に、EM-seq法により全ゲノムメチル化解析を実施したところ、再構成卵巣内のPGCLCでゲノムワイドなDNA脱メチル化が進行し、卵原細胞様細胞、卵母細胞様細胞では顕著なDNA脱メチル化状態であることがわかった。また、本研究に用いたES細胞由来生殖細胞では、母方由来X染色体は父方X染色体に比して高いメチル化傾向にあり、再構成卵巣で培養後も、母方X染色体のプロモーター領域、CGIは脱メチル化抵抗性を示すことがわかった。 さらに、減数分裂期の卵母細胞においては不活性化型X染色体の再活性化が生じ、X染色体の遺伝子発現量が一過的に増加する。本研究では再構成卵巣法で誘導された卵母細胞様細胞でも、X染色体での遺伝子発現量が増加傾向にあることをトランスクリプトームレベルで確認した。 そして、一連の解析結果をヒト再構成卵巣の生殖細胞と比較した結果、ヒトとカニクイザルでは類似の傾向を持つこと、カニクイザルではより顕著なDNA脱メチル化傾向が見られることがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の成果を基に、減数分裂期をさらに進行させるための培養系構築を目指す。まず、2段階目の再構成卵巣より卵母細胞様細胞を分取し、新たに3段階目の再構成卵巣を作製することで、さらなる減数分裂期の進行を促す。もし、減数分裂期が進行しない場合、再構成卵巣を腎被膜下移植し必要な栄養や刺激を与えることで卵母細胞様細胞の分化能を検証する。次に、本年度得られた卵母細胞様細胞と胎児卵母細胞の発現変動遺伝子の情報を基に、2段階目の再構成卵巣培養時の培養条件を検討する。もし不十分な場合は、再構成卵巣を構成する体細胞側の問題を念頭に、再構成卵巣および胎児卵巣体細胞のトランスクリプトームを比較し、発現変動遺伝子を抽出する。得られた遺伝子群の情報を基に、改めて再構成卵巣培養条件検討を試みる。
|