研究課題
若手研究
ミトコンドリアは我々の体のエネルギーを生産する細胞内小器官であり、分裂と融合を繰り返す「ミトコンドリアダイナミクス」によって品質(機能)を保っている。ミトコンドリア心筋症患者細胞のミトコンドリア形状を調べたところ、複数の細胞株で共通する特殊なミトコンドリアダイナミクス異常を見つけた。本研究は、患者線維芽細胞-疾患iPSC成熟心筋細胞の研究から、ミトコンドリア心筋症の遺伝子変異に起因するミトコンドリアダイナミクス異常がミトコンドリア心筋症の病態基盤であることを証明する。また、この特殊なミトコンドリア形状異常を指標とした創薬探索がミトコンドリア心筋症に応用できるかを検討する。
ミトコンドリアの機能は様々な方法で制御されるが、そのひとつにミトコンドリアの形態調節がある。ミトコンドリア心筋症由来の線維芽細胞を観察した結果、ミトコンドリアの一部が膨れたような形態異常を発見しMito-Ballと名付けてその生理的意義を調査した。Mito-BallはATPやROSが多く存在し、マトリックスやミトコンドリアの内部構造が凝集しているような構造を取っていた。また構造体を減らす方法も見つけており、今後これらの技術を用いた実験によってMito-Ballを指標とした治療法の開発が期待される。
ミトコンドリアの機能異常はアルツハイマー病・肥満・糖尿病・ 不妊など多岐にわたる疾患の病態基盤であると考えられている。今回観察されたMito-Ballは遺伝子変異箇所などによらず広範な細胞で観察されるもので、Mito-Ballはミトコンドリア障害においてユビキタスな現象であると考えられる。このことから、Mito-Ballに着目した研究成果はミトコンドリアを原因とする多くの病気の病態解明・治療法確立に役立つ知見になることが期待される。
すべて 2024 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Cell
巻: 186 号: 22 ページ: 4920-4935
10.1016/j.cell.2023.08.031
Genes
巻: 14 号: 10 ページ: 1876-1876
10.3390/genes14101876
Mol Genet Metab Rep
巻: 34 ページ: 100951-100951
10.1016/j.ymgmr.2022.100951
Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences
巻: 377 号: 1864 ページ: 20210325-20210325
10.1098/rstb.2021.0325
https://www.jichi.ac.jp/saisei/publication.html