研究課題/領域番号 |
22K15399
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
椎葉 一心 学習院大学, 理学部, 助教 (30884481)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | ミトコンドリア / パーキンソン病 / Parkin / MITOL/MARCHF5 / ユビキチンリガーゼ / ユビキチン / MITOL/MARCH5 |
研究開始時の研究の概要 |
パーキンソン病の分子病態について未解明な点が多い。申請者はこれまでに、パーキンソン病原因遺伝子産物Parkinが細胞死を誘導すること、その抑制系としてParkinを分解するミトコンドリア外膜局在性の酵素MITOLを同定し、分子病態の一端を明らかにしてきた。この研究過程において新たに、Parkinが高度に凝集、不溶化し細胞死を誘導することを見出した。本研究ではこの点をさらに追求し、Parkin誘導性細胞死の分子機構ならびにその抑制機構を分子・個体レベルで解明する。本研究の成果により、新たなパーキンソン病の分子病態が捉えられると共に、病態に準じた治療薬候補の同定が期待される。
|
研究実績の概要 |
本研究はパーキンソン病原因遺伝子産物Parkinが誘導する細胞死の実態を明らかにすることを目的としている。
パーキンソン病患者脳ではミトコンドリア呼吸鎖複合体の障害が観察されている。そこで、本研究では、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの阻害剤であるRotenoneを処理し実験を行った。
Parkin分解酵素であるMITOLを欠損させた細胞にミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの阻害剤であるRotenoneを処理すると、野生型細胞と比較し、顕著に細胞死が誘導されることが明らかとなった。また、Rotenone処理時にParkinは高度にニトロシル化を受け凝集し、MITOLはニトロシル化を受けた不溶性のParkinを選択的にユビキチン化し分解することを明らかとした。以前、MITOLは脱共役剤であるCCCP処理により、K48型のユビキチン鎖をParkinに付加し分解することを報告したが、Rotenone処理の際にはK63型のユビキチン鎖をParkinに付加し、分解していることを明らかにした。これらのユビキチン化付加選別機構をより詳細に解析するため、MITOL結合候補因子の一つOTUD4に着目し解析を行った。OTUD4は脱ユビキチン酵素であり、K48型、K63型ユビキチン鎖を選択的に切断することができる。解析の結果、CCCP処理の際、OTUD4はリン酸化されK63ユビキチン鎖を切断し、Rotenone処理の際にはリン酸化されず、K48型ユビキチン鎖を切断していることが明らかとなった。これらのことから、特にニトロシル化を受けたParkinの毒性が高いこと、さらにその抑制系としてMITOLがニトロシル化ParkinにK63型のユビキチン鎖を付加し分解誘導していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Parkinが誘導する細胞死はニトロシル化された不溶性Parkinによって誘導されることを明らかにした。また、それらの抑制系としてMITOLが不溶性ニトロシル化Parkinを特殊な分解機構を用いて分解し、毒性を抑えていることを明らかにした。よって、目的としていた、Parkin誘導性細胞死の実態の一部を明らかにできたため、順調に研究が進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞を用いた解析から詳細なParkin誘導性の細胞死の実態が明らかになってきた。一方、マウスを用いた解析、特にマウスの作出に時間がかかり、着手できていない。そのため、今後は、MITOLがパーキンソン病の病変部位において不溶性ニトロシル化Parkinの除去を行なっているのか否かを検討する。具体的には、Cre-loxPシステムを用いて黒質・線条体特異的MITOL欠損マウスを作出しMPTPの投与にてパーキンソン病を誘導し、野生型マウスと比較して、不溶化したニトロシル化Parkinが病変部位に蓄積しているか、病態の悪化がみられるかなどを検討する。
|