研究課題/領域番号 |
22K15411
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
丸川 活司 北海道医療大学, 医療技術学部, 教授 (20835508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | FFPE組織における核酸品質管理 |
研究開始時の研究の概要 |
がんゲノム医療の実用化が急速に進み,検査対象となる病理組織検体のホルマリン固定パラフィンブロック包埋(FFPE)組織における核酸の品質管理が診療上重要となっている.病理組織検体の取り扱いに関しては,切除・採取直後の検体保存方法や固定液の種類,温度,時間等が定義されている.しかし,固定化プロセス以外となる組織プロセッサー(密閉式自動固定包埋装置)で行なわれる脱水剤や脱アルコール・パラフィン置換,パラフィン浸透等,プロセッサー内の薬液管理の影響に関して報告はされていない.そこで本研究では,固定化プロセス以外の薬液管理から分子病理学的検索に用いるFFPE組織の作製方法の標準化を目指す.
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研究実績の概要 |
北海道内の55施設を対象とし、FFPE組織作製工程時に用いられる組織プロセッサー機器の運用方法について実態調査を行った結果、組織プロセッサー機器内で脱水剤として使用されている薬液は、エタノールが32施設(89%)で、メタノールを使用している施設が4施設(11%)であった。組織プロセッサー機器内の薬液槽の中でも汚染度が肉眼的に顕著である脱水剤のエタノールに着目し、検討を進めている。 検討にはヒト大腸癌細胞株(CACO-2)を用いていたが、安定した細胞ペレットの作製が困難であったため、舌癌低分化型扁平上皮癌細胞株(SAS)を用いることにより、安定した細胞ペレット作製が可能となった。この材料を用い、北海道大学病院病理部で日常業務に使用している組織プロセッサー(Tissue-Tek VIP5Jr)内の脱水剤であるエタノール槽の中でも最も混濁した第1槽目(強汚染)薬液と混濁の少ない最終エタノール槽(弱汚染)の薬液と未使用エタノールを用いFFPE組織ブロックを作製し、核酸品質について検討を行った。各種薬液で脱水操作を行い、作製されたFFPE組織のDIN値、RIN値、DV200を用い核酸品質解析を行った結果、RIN値では未使用エタノールと強汚染エタノール、未使用エタノールと弱汚染エタノールとの間に有意差が認められ(p<0.05)、RNA品質はエタノールの汚染により低下することが証明された。組織プロセッサーに用いる脱水剤は、薬液使用量が多いため、ランニングコストからも、使用後毎回薬液を全交換している施設は殆どなく、薬液の交換頻度やタイミングに関しても明確な基準がない。脱水剤の汚染がFFPE組織の核酸品質低下に影響する可能性を考えると、日常業務で用いる組織プロセッサー内の薬液の種類や浸漬時間、交換頻度等に関する精度管理方法について標準化を進めていかなければならないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北海道内の病理検査実施施設である55施設を対象とし、FFPE組織作製工程時に用いられる組織プロセッサー機器の運用方法についてGoogle formを用いて実態調査を行った結果、脱水剤、脱アルコール・パラフィン置換剤の交換頻度において標準化されていないことが明らかとなった。この結果から、薬液の汚染状況が核酸品質にどれくらい影響があるのかを検討し、脱水剤に未使用エタノールと弱汚染・強汚染エタノールを使用したFFPE組織のDIN値、RIN値、DV200とそれぞれの関連性について解析を行った。前回よりも解析を行ったFFPE組織を増やした結果、DIN値の平均値は未使用エタノールで6.0、弱汚染エタノールで5.9、強汚染エタノールで5.6と前回同様に減少傾向を確認することができた。さらにRNAの分解を示しているRIN値について解析した結果、未使用エタノールと強汚染エタノール、未使用エタノールと弱汚染エタノールとの間に有意差が認められ(p<0.05)、RNA品質はエタノール汚染の影響があることを証明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
SAS細胞(ヒト舌癌低分化型扁平上皮癌細胞株)を用いた遠心管法でセルブロックを作製することにより、安定して十分量の細胞ペレットを作製できるようになり、FFPE組織ブロックにおける核酸品質の検討がスムーズに行えるようになった。昨年よりも多くのFFPE組織ブロックを北海道大学病院病理部で日常業務に使用している組織プロセッサー(Tissue-TekVIP5Jr)内の脱水剤である各エタノール槽中の薬液を用いて作製することにより、核酸品質の中でもRIN値で未使用エタノールと強汚染エタノール、未使用エタノールと弱汚染エタノールとの間に明らかな有意差が認められ(p<0.05)た。今後、汚染エタノール内に混濁している成分の中でも、皮下脂肪内の成分に着目し、各種脂肪酸(パルミチン酸、リノール酸、オレイン酸など)におけるFFPE組織ブロック核酸品質の影響について検討していく。
安定した細胞ペレットの作製法の準備が遅れたことから、日本病理学会報告できなかったが、今年度は日本病理学会、臨床細胞学会、日本医学検査学会等で積極的に成果発表を行う予定である。
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