研究課題/領域番号 |
22K15416
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岸川 さつき 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (10906598)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 浸潤性粘液性肺腺癌 / 肺癌 / 空間トランスクリプトーム解析 / NET-CAGE法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は難治性である浸潤性粘液性肺腺癌における、1)エンハンサー・ゲノム転写ネットワークの包括的解析、及び2) 空間トランスクリプトーム解析による遺伝子発現プロファイリングを確立し、それらの統合解析を基に浸潤性粘液性肺腺癌に特徴的な進展形式に関与する因子の解明と新規分子治療標的を同定し、その成果に基づいた個別化医療開発を推進することを目的とする。 以上の2つの検証を順次達成し、浸潤性粘液性肺腺癌の予後改善に向けた臨床医学の基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
浸潤性粘液性肺腺癌は杯細胞や高円柱状で豊富な細胞質内粘液を有する均一な組織像や、経気道的に進展し多発病巣を対側肺まで形成する特徴的な臨床経過、さらにはKRAS変異や NRG1融合遺伝子といった共通のドライバー遺伝子を多くの症例で有することから、比較的均質な腫瘍群と考えられてきた。しかしながら、申請者の先行研究を含めた複数施設の報告により、新規バイオマーカーによる患者層別化が可能であることが示唆され、近年、転写因子発現が肺癌治療予測マーカーになる可能性が相次いで示され、ゲノム全遺伝子の中から、特定の遺伝子をどの程度に発現、利用するかを決定する機構の解明が、ポストゲノム時代における真の個別化医療実現に向けて必須であることが浮き彫りとなった。そのため、大規模かつ高品質な症例試料の確保、革新的なトランスクリプトーム研究手法(NET-CAGE法、継時的空間トランスクリプトーム解析)を取り入れて研究を推進することが、浸潤性粘液性肺腺癌に対する新規治療標的発見への最速かつ最良の術であると着想し、これまで申請者が実施してきたゲノム・トランスクリプトーム研究を進展させた浸潤性粘液性肺腺癌の病態解明に基づいた治療手段の確立に挑む本研究の提案に至った。これまで複数のプロジェクトで実績のある確立された順天堂の肺癌バイオバンクから該当症例を選択し、現在まで数症例のNET-CAGE法によるエンハンサー・ゲノム転写ネットワークの包括的解析が終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順天堂大学医学部附属順天堂医院で手術された浸潤性粘液性腺癌症例において、細胞内のRNA分解を受ける前のRNAポリメラーゼにより新しく合成されている最中の新生鎖RNAを迅速かつ高純度に回収・精製し、従来のCAGE解析を組み合わせるNET-CAGE法を用いて、エンハンサーRNA等のノンコーディングRNAの転写開始点とそれら全転写開始点から真の転写量をゲノムワイドに計測する。今年度中に、得られた試料から数症例の解析が終了した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで数症例のNET-CAGE法によるエンハンサー・ゲノム転写ネットワークの包括的解析が終了しているが、浸潤性粘液性肺腺癌に特徴的な進展形式に関与する因子の解明と新規分子治療標的を同定に向け、今後、候補となる遺伝子を絞り込む方針である。さらに、トランスクリプトームデータベースの相互解析を基に導かれた進展予測バイオマーカー遺伝子候補に対して、同定遺伝子変化の臨床病理学的検証をドライバー変異情報の付記した独自の大規模コホートを用いて進めるとともに、治療標的としての可能性を細胞株とxenograftを用い、腫瘍発生・細胞増殖・阻害薬奏効性のin vitro, in vivoの機能解析を進め、臨床応用に向けた検証を行う。免疫関連バイオマーカーに対しては、先行研究で実績のある7種類の蛍光色素を用いた多重免疫染色による検証を行う。
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