研究課題/領域番号 |
22K15421
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
児玉 真 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (60844529)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | クローン病 / 抗原提示細胞 / Crohn病 / リンパ管内抗原提示細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
Crohn病(CD)は原因不明の炎症性腸疾患である。リンパ管内類上皮細胞/肉芽腫はCDの病態形成に関連するとされており、また一方CDでは、自然免疫/獲得免疫の異常な活性化がみられる。そこで申請者は自然免疫/獲得免疫の活性化を促すパターン認識受容体(PRRs)に注目し、PRRsを介した免疫反応がCDにおける異常な自然免疫/獲得免疫の活性化に関連するとの仮説を立てた。本研究ではCD腸管手術検体を用い、リンパ管内肉芽腫における、各種PRRsの発現の解析およびそのリガンドの同定、さらにPRRsを介して誘導されるサイトカインをはじめとする分子の解析を行う。
|
研究実績の概要 |
Crohn病(CD)は原因不明の炎症性腸疾患である。CDの組織学的な特徴として類上皮細胞肉芽腫がある。またCDではリンパ管やリンパ流の異常が指摘されている。リンパ管内に類上皮細胞肉芽腫がしばしば認められ、リンパ管の異常にこのリンパ管内の類上皮細胞が関連していると報告されている。しかし、リンパ管内になぜ肉芽腫が存在するのか、リンパ管内肉芽腫がどのような性質を有するのかはよくわかっていない。申請者は、リンパ管内の類上皮細胞が抗原を認識し、抗原提示のためリンパ組織へと移動していく抗原提示細胞であることを確認した。またこれらの細胞はCD14陽性を示す単球由来の細胞であることもわかった。抗原提示細胞は、Damage-associated molecular pattern molecules(DAMPs)やPathogen-associated molecular pattern molecules(PAMPs)をPattern recognition receptor(PRR)により認識し活性化する。どのようなPRRを介して抗原提示細胞が活性化しているかがわかれば、どのようなDAMPsやPAMPsを認識しているか予想が可能となる。それゆえ申請者はCDにおけるリンパ管内の類上皮細胞(抗原提示細胞)においてどのようなPRRの発現が亢進しているかを確認することで、リンパ管内の類上皮細胞が(抗原提示細胞)がどのようなDAMPs/PAMPsの刺激を受けているか明らかにできると考えた。 同一検体上で複数の遺伝子発現解析が可能なXenium解析を用いて、CDのリンパ管内類上皮細胞と非CDのリンパ管内抗原提示細胞の発現分子の比較を行っている。これらの解析を通して、CDのリンパ管内類上皮細胞の活性化を促している分子/物質を同定する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、免疫組織化学的解析法やRNA in situ hybridizationを用いて、CDにおけるリンパ管内類上皮細胞に発現しているPRRの解析を行う予定であった。これらの解析を開始していたが、20種類以上の免疫染色やRNA in situ hybridizationを行う必要があり、その都度、染色条件の確認や適切な抗体の選定などに非常に時間が取られていた。しかし先進ゲノム支援で一度に400分子以上の分子の発現の解析が可能なXenium解析を支援していただいたおかげで、当初解析予定であったPRRや主なサイトカインなどの発現をまとめて解析することが可能となった。Xenium解析によるデータは現在解析中であるが、CDのリンパ管内類上皮細胞では、PRRに関しては少なくともTLR2, TLR4, TLR8などのPRR発現していることを確認した。しかし、コントロールの非CDのリンパ管内抗原提示細胞と明らかな発現の差はみられなかった。ただしPRRの発現とは別に核内受容体の一つであるVitamin D受容体を介したシグナルが亢進している可能性が示された。 当初は、免疫染色やRNA in situ hybridizationにより解析を進める予定であったがXenium解析により、予定よりも迅速に計画を遂行することが可能となった。またPRRに主に着目し研究を進める予定であったが、PRRやその関連分子だけでなくより多くの分子やサイトカインの解析を行うことができたため、リンパ管内類上皮細胞の活性化に関する可能性のある新たな分子の同定に繋がった。
|
今後の研究の推進方策 |
CDのリンパ管内類上皮細胞でTLR2,TLR4,TLR8などのPRRの発現がみられたが、非CDにおけるリンパ管内抗原提示細胞においてもこれらの分子の発現がみられ、CDのリンパ管内類上皮細胞で発現がコントロールと比較し明らかに亢進しているPRRは認められなかった。コントロールと発現の違いは明らかではなかったが、CDのリンパ管内類上皮細胞でTLR2, TLR4, TLR8発現がみられたため、TLR2, TLR4, TLR8のリガンドでCD患者の単球を刺激し、CD患者の探求が類上皮細胞様に変化するかを確認する。変化の確認には形態的な変化の確認に加え、BulkのRNA-seqにて網羅的発現分子の比較を行う。 さらにXenium解析では、Vitamin D受容体のシグナルがコントロールと比較し、CDのリンパ管内類上皮細胞で有意に亢進している可能性が示されたため、Vitamin D受容体のリガンドの刺激によるCD患者の単球の変化の有無も同時に解析を進める。Vitamin D受容体リガンドとしては、リトコール酸およびカルシトリオールを用いる。またVitamin D受容体の刺激によりCD患者の単球に類上皮細胞様の変化が見られた場合は、Vitamin D受容体がクロマチンと結合するVDREが、CDと健常人とでは異なる可能性が考えられるため、CDと健常人とでVDREの相違を比較するため、Chip-seqを行う。
|