研究課題/領域番号 |
22K15436
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 藍子 北海道大学, 医学研究院, 博士研究員 (70831288)
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研究期間 (年度) |
2022-02-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | AFM / インフルエンザウイルス / ウイルスの拡散 / 膜動態 / 高速AFM / 高速原子間力顕微鏡 / 膜ナノ動態 / エンドサイトーシス |
研究開始時の研究の概要 |
細胞膜はウイルス粒子を取り込むために陥入する。しかし、生細胞でそのプロセスを実際に捉えた例は無い。研究代表者は、膜動態をxyz方向に10 nmの分解能と秒のスケールで観察可能なライブセル高速AFMを開発し、生細胞でのウイルス取り込み過程の可視化に成功した。結果、ウイルスのサイズや形、亜型、密度等の特性に応じて様々な膜動態が誘導されること、いわば取り込みに伴う膜動態には「個性」があることを見出した。本研究では、ウイルス感染時の膜動態を可視化、解析する。そして、ウイルスの特性に応じて誘導される膜動態の個性を規定するウイルス側と宿主細胞側の因子を同定し、膜動態を制御する分子メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、計画通り項目Ⅰ「様々な特性のウイルス粒子の取り込み様式」と項目II「膜動態を制御する分子メカメニズムの解明」に取り組み、下記の研究実績を得た。 ウイルス粒子の取り込み様式(ウイルスの拡散と内在化に伴う膜動態)に温度が大きく影響することが示唆されたため、温度制御系を導入した。これまでの27度の観察に加え、37度においてもAFMと共焦点顕微鏡レーザー顕微鏡のハイブリッドシステムを用いたイメージングによって、ウイルスの取り込みプロセスの可視化を行なった。その結果、球形のA型インフルエンザウイルス(IAV/WSN株)については、細胞への取り込みについて下記の新しい現象を見出した。①クラスリン依存性エンドサイトーシスによるウイルスの内在化プロセスにおいて、機能的受容体との結合によるシグナル伝達が一度誘発されると、ウイルスの取り込みが成功するまで、ウイルスの直下で、クラスリン集積と脱離が繰り返し生じた。②クラスリン集積と同時にウイルスに隣接して現れる膜隆起は、クラスリン集積が繰り返される度に、その体積を増やし、ウイルス粒子を追いかけた。最終的に、ウイルス粒子は膜隆起によって覆われ細胞内に侵入した。以上の内容についてBiophysics Society 68th Annual Meeting(2024年2月)で口頭発表を行った。 多様な形状の粒子からなるIAV/Udorn株については、初年度、球形ウイルスの蛍光ラベル法では粒子の回収効率が悪く、観察に着手できずにいたが、様々な蛍光色素と手法を試したところ、脂溶性カルボシアニン色素DiIで膜を染めた細胞でウイルスを増やすことで、蛍光標識できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は、温度調整およびUdornの蛍光染色の手法に関する技術的な課題をクリアすることができ、ウイルスによって誘発される膜動態の理解が飛躍的に進んだことから、「当初の計画以上に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
項目I:様々な特性のウイルス粒子の取り込み様式 大径粒子や紐状ウイルスの場合は、今回得られた取り込みの現象(①と②)が長時間継続し、その結果、クラスリン被覆ピットに収まらないサイズや形状のウイルスであっても増大した膜隆起によって取り込まれる可能性が考えられる。そこで、Udornを用いて紐状や大径粒子のウイルスでも同じような膜動態が生じるかを確認する。また、2022年度に確立したウイルスの拡散の定量手法を今回得られた取り込み現象(①と②)を合わせてメソドロジー論文としてまとめ、国際誌への出版を目指す。 項目II:膜動態を制御する分子メカメニズムの解明 ウイルス表面のスパイクタンパク質であるHAとNAのウイルス取り込みプロセス(拡散および内在化)への寄与を、HAの結合因子であるシアル酸の切断酵素、およびNAの阻害薬を用いて検証する。 項目Ⅲ:膜形態形成機構の解明 近年、ウイルスの宿主受容体が次々と報告され、膜形態形成機構を解明する上で足がかりとなる分子が明らかとなっている。受容体から発せられるシグナル伝達素過程、脂質成分を変換する酵素などを標的とした阻害実験により、受容体と膜動態制御因子の間をつなぐ分子機構を解明する。
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