研究課題/領域番号 |
22K15453
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49040:寄生虫学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
福田 直到 順天堂大学, 医学部, 助教 (10913048)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 熱帯熱マラリア / 重症化 / 薬剤耐性 / 血管内皮 / 接着 / マラリア |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトのマラリアは感染する寄生虫の種類により5つ存在するが、中でも最も問題なのは熱帯熱マラリアである。その理由は熱帯熱マラリアが重症化しやすいこと、さらに薬の効きにくい寄生虫が容易に出現することである。マラリア原虫はヒトの赤血球の中に感染するが、熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球は血管壁に接着して閉塞させてしまう性質がある。これにより臓器への血流が悪くなることが重症マラリアの主な原因である。我々はヒトでの研究成果から、接着がこの寄生虫のもう一つの特徴、「薬剤耐性」にも関係するのではないかと考えている。本研究では培養実験や動物実験によってそれを解明し、新たな治療に繋げることを目指している。
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研究実績の概要 |
熱帯熱マラリアはヒトマラリアのなかでも薬剤耐性と重症化という憂慮すべき2つの特性を持ち、国際保健上の大きな問題となっている。代表者はこれらの特性が他のヒトマラリアでは比較的まれであることに注目し、薬剤耐性の獲得と重症化に共通のメカニズムがあるという仮説のもと、本研究でそれを検証している。現在、熱帯熱マラリアに対する第一選択薬はアルテミシニンであるが、東南アジアで最初に出現したアルテミシニン耐性は近年アフリカでも報告されている。ウガンダ共和国北部ではまさに薬剤耐性マラリアが出現・拡散する過程が観察されており、代表者は当地の症例を対象とした研究で、原虫感染赤血球が多く血管内皮に接着している症例ほどアルテミシニンへの感受性が低下していることを示した(Fukuda N, et al. Clin Infect Dis. 2022)。熱帯熱マラリアが重症化する主な原因は、このような接着によって微小循環が閉塞することであり、重症化と薬剤耐性の関連が示唆される結果であった。 血管内皮細胞と熱帯熱マラリア原虫の共培養系による薬剤感受性試験を構築してそのメカニズムを探索することとしたが、当初想定していたような共培養による薬剤感受性への直接的な影響を見出すことができなかった。しかし一方で、培養条件による薬剤感受性の変化や原虫遺伝子発現の変化が発見された。このことは体内における環境変化が原虫の薬剤感受性に影響することを示しており、上記の重症化-薬剤耐性関連仮説を説明する一要素と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「血管内皮細胞とマラリア原虫の相互作用による薬剤感受性の変化」という当初の仮説に関して、共培養系を用いたin vitro実験では明確な差を示すことはできなかった。一方で培養条件がマラリア原虫の薬剤感受性を変化させることが見いだされたため、研究計画を変更して体内の環境と薬剤感受性の関係を詳細に検討することとした。重症マラリアの病態および体内における原虫の分布を模した培養条件設定を行い、増殖能、薬剤感受性、遺伝子発現などの解析を行っており、新たな知見が順調に蓄積されている。その成果を原著論文として発表すべく準備しているところである。 また、本研究における薬剤感受性試験を効率化するため検体の可搬性・保存性を改良する必要が生じたため、自ら新たな手法を開発した。その成果は原著論文として発表ずみである(Fukuda N, et al. J Antimicrob Chemother. 2024)。
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今後の研究の推進方策 |
当初想定していた仮説とは異なる実験結果が得られたが、培養条件に注目することで体内環境と薬剤感受性の関連を説明しうる結果が得られている。こちらの知見が蓄積されてきているため、共培養系を中心とした当初の研究計画から内容を一部変更し、重症マラリアの病態に伴う体内環境の変化や、体内における原虫の分布がどのように薬剤感受性に影響するかというテーマを中心に据えることとした。増殖能・薬剤感受性といったphenotypeは概ね信頼性のある結果が得られており、今後は遺伝子発現解析を追加して成果発表につなげる計画である。
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