研究課題/領域番号 |
22K15461
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
宮下 惇嗣 帝京大学, 付置研究所, 講師 (40818308)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | カイコ / 自然免疫 / 細菌学 / 炎症 / 感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫システムが何らかの理由で暴走すると「サイトカインストーム」とよばれる致死的病態に陥る。サイトカインストームに対する有効な治療方策の選択肢は限られている。免疫システムの暴走を制御するには、免疫システムの暴走に関する分子レベルでの理解が必須である。本研究ではカイコをモデル動物に用い、複合的ストレスを与えてサイトカインストームを発症させ、その治療方法を探索する。さらにサイトカインストーム発症の鍵となる分子応答を、遺伝子転写産物を対象とするトランスクリプトーム解析によって包括的に捉えることを目指す。
|
研究実績の概要 |
飢餓(Starvation)・有機溶媒(DMSO)の投与・病原体成分の接種(Pathogen)による複合ストレスによって、カイコはショック死した。複合ストレスによるショックを起こしたカイコでは、血液中への凝集体形成(debris formation)、血清タンパク質の分解と総タンパク濃度の低下、全身の麻痺、血液のアルカリ化に伴う外骨格直下の尿酸剥離を認めた。 プロテアーゼ阻害剤としてヒト臨床に用いられているナファモスタットは、上記のショックに対して治療効果を示した。また、抗凝固薬としてヒト臨床に用いられているヘパリンも、治療効果を示した。また、給餌はショック死に対する予防効果を示し、カイコ血中に存在する貯蔵糖であるトレハロースの血中投与も部分的な治療効果を示した。ショックに関連して発現変動する遺伝子群を、血球細胞のトランスクリプトーム解析をもとに探索したところ、炎症性サイトカインやタンパク質分解酵素を含む51の遺伝子がショック関連遺伝子として同定された。以上の結果は、病原体成分の接種を引き金とする敗血症性ショック反応は自然免疫システムの範疇でモデル化でき、その機序にはプロテアーゼ活性や血液凝固系の異常が寄与していることを示唆している。本モデルを治療薬候補化合物の探索に応用することが期待される。 病原体成分に対する生体応答は、広い意味では免疫反応の一端として捉えることができる。ヒトの免疫系は、獲得免疫系と自然免疫系が存在するが、そのうち自然免疫系の基本的な分子デザインはカイコの様な昆虫にも保存されている(ref: Hoffman)。カイコモデルにおいてヒトの敗血症性ショックと類似した病態が観察されたことは、敗血症性ショックの病態進行メカニズムの重要な部分は、自然免疫システムの破綻によるものであることを意味している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイトカインストームモデルの作出と、その分子メカニズムの一端を明らかにすることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、サイトカインストーム発症の鍵となる血中プロテアーゼの同定、並びにDMSOが果たす役割についての解明を進める。
|