配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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研究開始時の研究の概要 |
病原性糸状菌Aspergillus fumigatusにおいて、α-1,3-グルカンは主要細胞壁多糖の一つである。細胞壁は絶えず再構築が繰り返されているが、その機構は関与する酵素の活性の解析を通して予測するしかなかった。本研究では、申請者らが独自に確立してきたα-1,3-グルカン解析法を駆使し、α-1,3-グルカナーゼに着目してA. fumigatusにおける細胞壁再構築機構と病原性との関係性を微生物学的・酵素学的な手法で解析する。
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研究実績の概要 |
本研究は、病原性糸状菌Aspergillus fumigatusの細胞壁多糖α-1,3-グルカンをモデルとして、α-1,3-グルカン合成酵素およびα-1,3-グルカナーゼによる細胞壁再構築機構を明らかにしようとするものである。令和5年度には、ピキア酵母において異種発現させたA. fumigatusの3種のα-1,3-グルカナーゼ(Agn2, Agn4, Agn5)について、A. fumigatus細胞壁α-1,3-グルカンおよび細菌由来α-1,3-グルカンを基質として加水分解活性を評価した。その結果、Agn2, Agn4ではどちらの基質に対しても加水分解活性を示した一方、Agn5は顕著な活性を認めなかった。また、令和5年度にはA. fumigatus agn2, agn4, agn5の高発現株を作製した。令和6年度に、Ags2, Ags4, Agn5の酵素活性およびA. fumigatusにおける細胞壁α-1,3-グルカンの合成量および分子量の経時的に測定し、3種のα-1,3-グルカナーゼの細胞壁再構築における役割を明らかにしたい。 酵素活性評価の基質とする目的で作製したA. fumigatusの3種のα-1,3-グルカン合成酵素遺伝子(ags1, ags2, ags3)高発現株について細胞壁α-1,3-グルカンを分画・精製し、その構造を解析した。その結果、ags3高発現株では多糖中のα-1,4-結合の割合が野生型株よりも顕著に増加することを発見した。また、野生型株ではα-1,4-結合の重合数が数残基程度であるのに対し、ags3高発現株ではそれが数十残基連なっている可能性が示唆された。ags1遺伝子破壊株では培養条件によってはags3が高発現したことから、ags1の機能をags3が補償する機構が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度には異種発現したAgn2, Agn4, Agn5についてα-1,3-グルカンを基質とした反応を検討し、加水分解能を有することを明らかにした。一方、不溶状態の多糖を基質とした反応であったため、詳細な加水分解様式については令和5年度内に決定できなかった。また、ags3高発現株において多糖中のα-1,4-結合の割合が高いことを偶然発見した。本多糖の化学構造および生合成に関与すると報告されている遺伝子破壊株を用いた解析を通して、これまで不明であったα-1,3-グルカン鎖中にα-1,4-結合が導入される機構に迫れる可能性を見出した。以上のことから、本課題は概ね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
多糖を基質としたα-1,3-グルカナーゼの加水分解活性は、基質が水に不溶のため評価が難しかった。したがって、令和6年度にはピリジルアミノ化ニゲロオリゴ糖を調製して加水分解様式を評価する方針としたい。また、令和5年度に作製したA. fumigatus agn2, agn4, agn5の高発現株について、令和6年度には細胞壁α-1,3-グルカンの合成量および分子量の経時的に測定し、3種のα-1,3-グルカナーゼの機能の違いについて考察したい。さらに、令和6年度にはags3高発現株で見られたα-1,4-結合が多いα-1,3-グルカンについて、α-1,4-結合の生合成に関与すると推定される遺伝子の破壊株を作製して、Ags3による多糖生合成機構の一端を明らかにしたい。
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