研究課題/領域番号 |
22K15476
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
坂 直樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80867474)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ヒトパラインフルエンザウイルス2型 / V蛋白 / Bad / アポトーシス / ミトコンドリア / 14-3-3ε |
研究開始時の研究の概要 |
細胞はウイルスが侵入してきた際に、「生きる」為、「死ぬ」為に免疫システムもしくはアポトーシスを誘導し、ウイルスの排除をしていると考えられている。ウイルスはこれら宿主の応答に対して「生かさず殺さず」に自身の複製を計っていると考えられる。14-3-3ε蛋白は免疫システムやアポトーシスにまで広く関与する重要な蛋白である。これまでにヒトパラインフルエンザウイルス2型(hPIV2)のV蛋白は様々な免疫システムを構成する蛋白と結合し、機能を阻害していることが示されてきた。本研究では、hPIV2のV蛋白と14-3-3εとの関係を明らかにし、宿主の免疫応答にどのような影響を与えているのかを検討する。
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研究実績の概要 |
ヒトパラインフルエンザウイルス2型(hPIV2)のV蛋白は、免疫システムに関与している宿主蛋白と結合することで免疫応答を抑制していることが分かっている。昨年度は、V蛋白が14-3-3εと結合することによって14-3-3εの切断を抑制しており、結果としてアポトーシスを抑制していることを報告した。今年度は14-3-3εと結合する蛋白であるBadを含むミトコンドリア系のアポトーシス関連蛋白に研究対象を広げ、研究を進めた。ミトコンドリア系のアポトーシスは、アポトーシス促進蛋白Bad、抑制蛋白Bcl-XL、誘導蛋白Baxなどで構成されている。これら3つの蛋白とV蛋白との共免疫沈降(IP)を行った結果、V蛋白はBadのみと結合することが分かった。正常細胞内では、Bcl-XLはBaxと結合しアポトーシスを抑制しているが、BadがBcl-XLと結合するとBaxが遊離し、アポトーシスが誘導される。V蛋白とBadの結合がBadとBcl-XLの結合、およびBcl-XLからのBaxの遊離に与える影響を検討したところ、V蛋白が存在する場合には、V蛋白はBadとBcl-XLが結合することを抑制し、Baxの遊離を抑制していることが分かった。ミトコンドリア系のアポトーシスが誘導されると、ミトコンドリアから細胞質へシトクロムC(Cyt C)が放出される。リバースジェネティクス法により作製したhPIV2の野生型ウイルス(rPIV2/wt)とV蛋白の機能欠損変異体(Vmut)を持つウイルス(rPIV2/Vmut)を感染させ、細胞質とミトコンドリア画分に分離してCyt Cの量を定量したところ、rPIV2/wtはrPIV2/Vmutと比べて細胞質へのCyt Cの放出が抑制されていた。以上の結果から、V蛋白は14-3-3εとBadの二つの蛋白と結合することでミトコンドリア系のアポトーシスを阻害していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
hPIV2のV蛋白とアポトーシス関連蛋白であるBad、Bcl-XL、Baxとの結合を調べたところ、V蛋白はBadのみと結合することが分かった。V蛋白とBadの結合は、BadとBcl-XLの結合を抑制し、Bcl-XLに結合しているBaxの遊離を抑制することで、ミトコンドリア系のアポトーシスを阻害していることも明らかにした。14-3-3εはBadと結合することでミトコンドリア系のアポトーシスを抑制していることが知られており、昨年度に報告したV蛋白が14-3-3εと結合することは、14-3-3εが切断されBadを遊離することを抑制していると考えられる。従って、V蛋白は14-3-3εとBadの二つの蛋白と結合することでミトコンドリア系のアポトーシスを阻害していることを明らかにすることができた。これらの結果をまとめた論文は既に投稿済みであり、以上のことから実験計画書に沿った研究を進めることができており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
hPIV2のV蛋白が他のアポトーシス関連蛋白にも影響を与えているかをさらに検討していく。アポトーシス経路において代表的な蛋白であるcaspaseは、アポトーシスを実行する実行型のcaspase-3, 6, 7と、これらを活性化させる誘導型のcaspase-2, 8, 9, 10が存在している。今年度までの研究で、V蛋白がミトコンドリア系のアポトーシスを阻害した結果、caspase-3/7の活性が抑制されていた。そこで、V蛋白がcaspaseとも結合することで、アポトーシスをさらに抑制しているのではないかと考え、caspase-2, 3, 6, 7, 8, 9, 10 の発現プラスミドを作製し、V蛋白とのIPを行い、結合を検討する。また、PIV2/wtやrPIV2/Vmutを感染させ免疫染色を行い、caspaseの細胞内局在が感染によって変化するのかも検討する。さらに、PIV5やムンプスウイルス、センダイウイルスや麻疹ウイルスなどの他のパラミクソウイルス科のV蛋白も14-3-3εやBadと結合するかを調べ、共通点や相違点を明らかにし、ミトコンドリア系のアポトーシスのメカニズムを解明する。
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